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主人公は憧れる

 



 「すごく楽しかったです!みんな可愛くて………鬼ごっこの時もみんな……」




 孤児院の帰り、セオドアは嬉々として語っている。アルティアは肘をつけながらそんな可愛い娘婿を見ていた。



 ……………………本当に楽しそうね。連れてきて正解だったわ。にしても、本当にこの子は凄い。



 あの孤児院は、虐待や徴兵、放棄………ありとあらゆる辛い思いをした子供達ばかりだ。私は普段から行ってるから好かれているけど、この子は違う。初めて来た人には警戒する子供達がセオドアくんの笑顔や言葉で皆が懐いた。これは、とっても凄いことなのだ。



 やっぱり私とラフェエルの判断は正しかったわね。アミィールもいい夫を持ったじゃない。………最も、全部この子の人柄故の結果なんだけど。



 「……………やっぱり、アルティア皇妃様は凄いです!」



 「へ?」




 突然褒められて、変な声が出た。セオドアくんはこれでもか、という満面の笑みを浮かべて目を輝かせていた。




 「子供達、アルティア皇妃様が話しかけると笑顔になるんです、嬉しそうに笑って…………子供は大人よりも人を見ていますし、トラウマ等がある子供でしたら尚更ですよね?


 けれど、あんなにアルティア皇妃様に懐いている。



 それは___アルティア皇妃様が今まで、それだけの愛情を持って接してきた賜物です」



 アルティアはその穢れなき笑顔にほんのり顔を赤くする。



 こういう風に褒められると………………なんというか、むず痒くなる。純粋で裏表なくこういうことをサラリと言うのはすごくないか………?




 「わ、私は___そんなんじゃないわ。


 私は……………自分勝手に偽善者ぶってるだけよ」



 「そんなことないです。…………偽善者だとしても、子供達が喜んでいました。


 それが全てじゃありません?子供達が楽しい、嬉しい………そう感じたのなら、偽善者でもなんでも、その子達にとっては"大好きな人"じゃないですか」




 セオドアは胸に手を当て、目を閉じながらそういった。アルティアはそれを聞いて忙しなく瞬きをする。



 ____なんというか、前々から気づいていたけど、この子綺麗すぎない?

 誰かを否定したり、誰かを貶したり、………そんな人間が沢山居る中で、こんなに綺麗な心でいれるものなのだろうか。



 本当に、………凄い子だな。




 アルティアはふ、と笑って未だに目を瞑るセオドアの頭をクシャクシャ、と乱暴に撫でる。




 「…………………ははっ、娘婿はお上手だね~!流石私の息子!」


 「わっ、そ、それほどでも………?」



 「否定せんかい!……ふふ、これからは貴方も孤児院に来るんだからね。


 よろしくね、セオドアくん」



 「はい!私もアルティア皇妃様のように好かれるように頑張ります!」




 そう言ってガッツポーズを取るセオドアを見て、アルティアは『この国の将来も安泰だな』と思ったのだった。









 * * *





 「……………ふふ」






 夜、セオドアとアミィールはベッドで裸のまま抱き合っていると、不意にアミィールは笑みを零した。セオドアは首を傾げる。



 「?どうしたんだ、アミィ」




 「_____セオ様、今日凄くご機嫌ですから、嬉しくて。


 そんなに孤児院は楽しかったですか?」




 ……………どうやら、アミィール様にはなんでもバレてしまうらしい。俺、そんなに分かりやすかったかな?



 でも、それは事実で。

 ものすごく楽しかった。そりゃあ、辛い思いをしてきた子、というだけあって、繊細で危うい子は何人も居た。けれど、それは育った環境が悪いだけで、根本的には優しくて明るい子ばかりだったから。



 それに、アルティア皇妃様の明るい、身分や立場など感じさせないフレンドリーさも相まって、みんな終始笑顔だった。




 俺の役目だ!と張り切っていたけれど、なんというか、それだけじゃないというか。…………俺も。




 「………………俺も、アルティア皇妃様のように子供達に好かれたいって思ったよ」



 「……………!」











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