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主人公の初公務

 






 「………………すぅ」




 セオドア様が、隣で寝ている。勿論裸だ。わたくしたちはあのまま、今の今までずっと愛し合った。



 この穢い身体を、セオドア様は愛してくださった。こびり付いた血の匂いを、セオドア様の甘い体液で上書きしてくれた。




 ______わたくしは、この人に言えないような事をしている。



 _____お優しい御心の持ち主であるこの人には、口が裂けても言えないような事を。



 言ってしまっては、きっと嫌われてしまうから。……………受け入れてくれたとしても、セオドア様の綺麗な御心をわたくしの穢い心で汚したくないから。




 わたくしは贖罪のため、この穢れた血を持つ者として、生きてまた沢山の死体に、沢山の血に塗れる。




 ____地獄に落ちてもいい。



 でも。



 今世だけ、今世だけはこの御方を愛することをお許しください_____





 アミィールはそう願いながら、隣に眠る愛おしい男の唇に自分の唇を落とした。



 月だけが、罪深い女の願いを見守っていた。






 * * *







 「おお……………!」




 セオドアは、目の前にある建物に圧倒されていた。



 目の前には____大きなドーム状の真新しい建物。サクリファイス皇城ほど大きい訳では無いけど、『孤児院』と考えると…………大きい方だと思う。



 セオドアは大きい孤児院に圧倒されながらも、共に来ているアルティアに声をかけた。






 「こ、ここ…………孤児院、ですよね?」



 「ええ。まあ、見えないわよね。孤児が多くて…………この施設には500人居るわ」



 「ご、500人!?」



 またまた圧倒される。子供が500人………500人!?


 もう混乱状態のセオドアに、アルティアはクスクスと笑った。



 「驚きすぎよ。それより、此処に入る前に注意!」



 「わっ」




 アルティア皇妃様はいきなり距離を詰めてきた。美しい、アミィール様にそっくりな顔が近すぎる………!も、勿論アミィール様の方がお美しいけれども!



 それでも顔を真っ赤にするセオドアに気にせず、アルティアは続ける。



 「いい?私達が皇族だ、というのは先生達しか知らないから。子供には言っちゃダメよ」



 「え?」



 予想外の言葉に首を傾げる。いや、別に言いふらす気はそもそも無かったのだが。


 「……………私たちはあくまで、手助けなの。手助けするのに名前も身分も立場も関係ない。



 ただ、この国、このユートピアをこれからも生きて支えていく未来の希望への投資の為にしてることなんだから、さ」




 アルティア様はそう言って歯を見せて笑った。それを見ては、と気付かされた。


 俺達がしようとしていることは、"貴族の義務"ではなく"未来を育てる"ことなのだ。改めて、素敵な考え方だと思った。俺達が守るだけじゃない、俺達が育てて、そして国やユートピアが平和になる。



 夢物語のような事を、俺達は率先してやろうとしているんだ。



 そう思うと、ゾクゾクした。不安もあるけど、それでも………この素敵な国をもっと素敵にしたいから。




 「はい!」




 俺は大きな声で返事をした。

 アルティアはそんな気合十分な顔をしたセオドアに『行きましょう』と笑いかけて、中に入った。





 * * *




 「やあやあやあ!元気だったかいガキ共よ!」



 「「「アルおばちゃんだ~!」」」




 「おばちゃん言うな!まだ20代でも通るんだよ私ゃ!」



 建物の中に入った瞬間、沢山の子供達がアルティア皇妃様に駆け寄ってきた。よく漫画やアニメでは孤児院というのは劣悪な環境でボロボロの服を着ていたりするものが多いイメージだったが、この孤児院はとても綺麗で、子供たちの服も高級ではないけれど、清潔な物だ。




 それはともかく…………アルティア皇妃様が吠えている。けど、子供たちもアルティア皇妃様も、笑顔だ。すごく絵になる光景に、思わず息を飲んだ。














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