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主人公は清らか

 



 先日、正式に皇族になった小僧…………セオドア。食事中に泣こうとしたから少し注意したら泣き始めた。



 けれど、悲しみではこのように幸せそうに笑いながら泣かない。



 セオドアは涙を流しながらも、たどたどしく言葉を紡ぐ。




 「私は、…………とても、とても幸せです………他国の公爵家の子供が、このサクリファイス大帝国で様々なことを学び、こうして愛する人と、愛する新しい家族に囲まれ食事をする……………私は恵まれすぎてます…………ありがとうございます」




 「……………セオ様」




 そうポロポロ泣きながら言う男は____女々しい。我が娘・アミィールなどは男勝りでこんなことを言わないし、新鮮である。アミィールよりも女らしいではないか。



 そう思うラフェエルは、戸惑う。

 アミィールのように男勝りなら叱ればいいが、こういう時はどうすればいいのだ…………?




 そんなことを考えるラフェエルの顔を見て、隣に座るアルティアはくすくすと笑う。



 ラフェエルが戸惑うなんてよっぽどね。……まあ、気持ちはわからんでもないけれど。この子すごくいい子過ぎない?私、アミィールの育て方確実に間違えているよね?こんな可愛らしい事を言うこの子を育てたガーネットさん、凄すぎるわ……




 アルティアはそんなことを思いながら、未だにグズグズと泣くセオドアに優しく笑いかける。





 「本当に、セオドアくんはいい子。私達こそ、アミィを選んでくれてありがとう、って言いたいほどよ?


 だからつまり、えっと、お互い様!だね!」



 「お母様……………貴方はどうしてそういい雰囲気を壊すのですか。


 セオ様、泣かないでくださいまし。悪い涙でないと分かっていても、貴方には笑っていて欲しいのです」





 「____ッ」




 アミィールは軽く母親の言葉をいなしてから、親の前だと言うのにぺろ、とセオドアの涙を舐める。



 それだけでセオドアは顔を真っ赤にした。




 ___本当にこの家族、このユートピアで一番凄い皇族なのか……?ぜ、全員優しくて厳しくて、甘すぎる……!



 セオドアはすっかり引っ込んでしまった涙を放って、口をぱくぱくと動かしながら固まった。





 そんなセオドアを他所に、アルティアはラフェエルに話しかけた。




 「ね、ラフェー、あの件、やっぱりこの子に任せない?」



 「…………あれか。しかし…………」




 「私達じゃ無理よ、それに、こんなにいい子ならみんな喜ぶわ」




 「……………?」




 なんの話をしているのだろう?

 赤い顔のまま、セオドアはキョトンとする。そんな可愛らしい娘婿をラフェエルは見てから少し考える。



 確かに、…………この男ならやれそうだな。



 そう思ったラフェエルは持っていたフォークを置いて、住まいを質した。




 「……………セオドア」



 「は、はい!」




 ラフェエル皇帝様がいつになく真剣な顔をしていらっしゃる。思わず背筋が伸びてしまう。怯えている気持ちを正して、ラフェエル皇帝様のお言葉を聞いた。





 「____お前に、任せたい仕事がある」




 「………?仕事?」



 「…………お父様、セオドア様に危ない事をさせるのはわたくしが許しません」



 「わっ」



 アミィールは立ち上がってセオドアを抱き締め睨む。しかし、ラフェエルは『そうではない』と言ってから続けた。



 「セオドアは、サクリファイス皇族の一員だ。仕事は請け負ってもらう。………それは当然だろう?


 だが、この女々しい男に頼みたいのは戦場ではない。


 _____孤児院の件だ」




 「…………?孤児院?」















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