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結婚式直前 #皇女編

 





 「………………ねえ、エンダー」




 アミィールの部屋にて。

 アミィールは厳しい顔をしながら髪を梳かす侍女・エンダーに声を掛けた。



 ____あ、また面倒くさい話をし始める。



 そう感じたエンダーはできるだけ素っ気なく聞く。




 「なんでしょうか」



 「…………………セオドア様は、他の女を抱いたことがあるのでしょうか?」



 「…………………」




 ______ほらね、やっぱり面倒くさい事だった。



 エンダーは心でそう思う。

 このずぼら皇女は信じられないかもしれないが頭脳明晰、文武両道、才色兼備なのだ。おまけに龍神でユートピアで一番力を持つサクリファイス大帝国の皇女なのだ。冷静だとかなんだとか巷で言われている。




 実際はずぼらで適当で女っ気のない男が胸を生やし一物を切り落としたような女である。



 小さい頃にアルティア皇妃からこの女の世話を任され、早15年。共に過ごしていたが、男を愛でるよりも男を物理的に殺す事に長けている可愛げのない女。



 そんな女は一生男の味など知らずに生きていくんだろうなぁと思っていたが奇跡が起きた。



 三日後に結婚する男に関してはとことん女々しくなり、独占欲が強くなるのだ。



 で、こんな馬鹿みたいなことを私に聞いてくる。呆れてものも言えない。あの男_かなりの美男子だけど_はどう見たって童貞でしょうに。そもそも、他の女を抱いていたとしても、自分の方がいい女だから大丈夫!という思考にならないのかが不思議だ。



 サキュバスだってこの女の美しさは敵わないというのに。



 エンダーはそんなことを思いながらも口を開く。




 「…………………別にそんなことはいいではありませんか」



 「よくないわ」



 「何故ですか」



 「わたくし以外にセオドア様の蕩けたお顔を見た女など存在すら許しません、草の根を分けてでも探し出して殺してやりたいわ」




 「…………………」




 性格はこのとおり、頭のネジがぶっ飛んでらっしゃる女です。恋は盲目と言いますが、この女は恋をしたら自分の獲物に触った者すら許しません。




 可愛くないでしょう?私も可愛くないと思います。




 「…………そんなことをしてしまってはセオドア様は悲しみますよ」



 「わかっているわ。だから秘密裏に殺すの」



 「そういう問題ではないかと」




 「じゃあどういう問題よ」





 ………………この女は本当にもう………………






 エンダーは深く溜息をつきながら、諭すように言う。



 「セオドア様はアミィール様に人殺しをして欲しくないとお思いでしょう。それが自分絡みだったら、セオドア様は泣きますよ」




 「う………………じゃあ、記憶を消す方向で。記憶消去の魔法をお母様に聞こうかしら…………」




 そう本気で悩み出すアミィールに、エンダーは思う。



 この人って本当は1周回って馬鹿なのではないでしょうか?何故そこまで考えて童貞という結論に至らないのでしょう。不思議すぎる。



 そして、腹が立つ事に人殺しも魔法取得もこの女には容易いことなのです。恋愛に関してはからきしだけれど、それ以外はできるというのも問題だと思います。




 「ね、だからエンダーはその女を探してくれない?」




 「嫌です」




 「…………………給料10倍でどうかしら?」




 「引き受けましょう」





 私は即座に答える。

 適当な女を捕まえて差し出しましょう。



 ……………本当は、サキュバスの私にはお金は不要で。ただ、この女が嫌いじゃないから居るんだけれど。




 まあ、認めてやりたくないから貰うものを貰って利害関係で動いていると思うようにしているのだ。





 「梳かし終わりました。そのまま寝ますか?」



 「いいえ、結婚の儀について再確認するわ。…………素敵な結婚の儀にしたいですもの」





 そう言って本当に幸せそうに笑うアミィール様。

 ………………セオドア様と出会って頂けてよかったわね、クソ女。




 エンダーはそこまで思ってから『お供します』と言ったのだった。



















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