"自由"にこだわる血筋
アミィールは、話を聞きながら考えた。
……………各国の重要人の言いたいことも、両親の言いたいこともわかる。
セオドア様の力がとてつもない物だと言うのも、わかる。
けれど。
アミィールはそこまで考えて、真っ直ぐ前を見据えた。
「_____わたくしは、セオドア様の行動を制限させたく、ありません」
「……………アミィール、お前、何を言っているかわかっているのか?」
お父様が怖い顔で聞いてくる。
……………いくらお父様達が決めても、セオドア様が不自由に感じてしまう環境にしたくない。
「____わたくしが、守ります。
セオドア様を傷つくことのないよう、わたくしが守り抜きます。
だから___お願いします、セオドア様の自由を奪わないで」
「………………アミィ」
アミィール様は、頭を下げられた。
俺の為に、頭を下げてくれているんだ。
……………俺のことを考えて、大人の意見に抗ってくれているんだ。
なのに、俺は…………何も言わずに受け入れようとしていた。
情けない、自分の事なのに。
俺は自分より小さな、愛おしい御方の手を握って全員を見た。
「_____私も、アミィール様をお守りしたい。アミィール様を支えたい。
だから………………私は、自分の身を守れるように、強くなります。
私の自由、それはアミィール様と共にこの国を守ること。守られているだけではだめです。
その自由の為に____必ず、強くなってみせます」
「……………セオ様……………」
少し内向的なセオドア様が、各国の重要人達にそう言い切った。…………人って、ここまで変われるの?と思うくらい、力強く、億さずそう言い切る心のお優しい御方………………
どれだけ、わたくしを虜にするのだろう。
アミィールとセオドアの言葉を聞いて…………全員は顔を合わせ、そして。
「…………ふふっ」
「ははは!」
「………っくく」
「…………?」
ラフェエル皇帝様とアルティア皇妃様以外の面々が笑い出す。アミィールとセオドアは首を傾げた。
戸惑うセオドアの代わりにアミィールが口を開いた。
「………………何がおかしいのですか?」
アミィール様は少し不機嫌な低い声で聞く。すると、笑っていたクリスティド国王様が言葉を紡いだ。
「いや…………あまりにも、あの時に似ていてな」
「あの時…………?」
セオドアが問うと、エリアスが答える。
「____わたくし達が"龍神に支配される事を拒んで運命と戦った時"、ですわ」
「ですね」
「…………懐かしいです」
「???」
セオドアもアミィールもやっぱり首を傾げる。何を言っているのかアミィールでさえわからない。そんな2人の頭をダーインスレイヴとフランが撫でた。
「____お前の父親と母親が同じ事を言ったんだ。"自由"を手に入れる為に、2人で戦うとな」
「そうそうそう!で、お互いを守り合った結果、世界の常識をぶっ壊しちゃったの!
ふふふ~、私達の守った世界で、自由を手に入れた2人の子供が、ギャルゲーのチート主人公と結ばれて、同じ事を言うなんて…………やっぱりこれは続編ですよね~!
そう思いません?ラフェエル様、アルティア先輩!」
フランはそう言って、一番奥に座っているラフェエルとアルティアを見る。ラフェエルは目を閉じ腕を組んで大きく溜息をついた。
「………………アミィールはお前に似たな」
「いや、あんたでしょ。……………まったく。皆馬鹿なんだから。相変わらずなんでも出来ちゃう世界だわね。___素敵な程に。
アミィール、セオドアくん」
アルティア皇妃様は向かいに座る俺達2人を見た。そして、いつもの意地悪な顔で笑った。
「………………そう思うなら、それ相応の覚悟が必要よ~?泣いても、苦しんでも、それを貫く覚悟、ある?」
アルティア皇妃様の言葉に、俺とアミィール様は顔を合わせる。アミィール様は、真剣な顔をして頷いた。
お母様の言葉に、セオドア様はわたくしを見た。少し不安そうなお顔をしているけれど、それでも男の顔で、頷いた。
2人は改めて全員を見て、口を開いた。
「「勿論です」」
揃った声に_____ラフェエル以外の全員が笑みを零した。
ラフェエルは……………ただ1人、頭を抱えたのだった。
※ご案内
過去のことについても前作をお読みください。
次回からは通常通り甘い展開になっていきます。




