集う古き英雄たちよ #2
「お、お初にお目にかかります。クリスティド国王陛下。私はアミィール様の婚約者のセオドア・ライド・オーファンでございます」
「ああ。頭をあげておくれ。………初めまして、私はクリスティド・スフレ・アド・シースクウェアと言う。
この度は結婚おめでとう」
頭を上げると、後光が差しているようにさえ見える爽やかな笑みを浮かべた国王陛下。ぐぁぁ……!ストーリーやったけど、この人は裏表が無いんだ、そして、ヒロインの父親と友達で、ヒロインの母親が元々好きで!未だに結婚してない設定な一途……って、ヒロインのお母さんってアルティア皇妃様じゃないか!?
ちょ、ええ、なんか、……現実世界として考えると、少し残酷にも思えるなこのゲーム……アルティア皇妃様はラフェエル皇帝様になんだかんだゾッコンだし、ラフェエル皇帝もそうだし……
そう考えると、ちょっとアミィールとの仲よりもその境遇の悲しさに切なくなったセオドア。
そんな『理想郷の宝石』の主人公を放って、アミィールとクリスティドは親しげに会話する。
「私が一番か」
「ええ、そうでございます」
「フラン嬢もラフェエルもアルティア様もルーズだからな」
「とはいえクリスティド国王陛下は早すぎです。また予定より20分も早くいらっしゃったのですよね?」
「まあ、時間は厳守しなきゃな。………それにしても、アミィール嬢が結婚とはな。月日が経つのは早いものだ。
これだけ美しくなられたのなら、私が娶ればよかったかな?」
「は!?」
「きゃっ」
クリスティドの言葉を聞いたセオドアはその場から立ち上がってアミィールを抱き締めた。そして、恨めしそうに睨む。
気を抜いたらだめだ………!相手は攻略対象キャラ、アミィール様を奪われるなんて絶対嫌だ!
「……………セオドア様?お顔が……………」
アミィールは初めて、セオドアが誰かに敵意を向けるのを見た。いつもの温和な顔はどこへやら、凄く男の人の顔になっている。何故……………あ。
アミィールはクリスティドの放った言葉を思い出す。小さな頃から「私の嫁に来ないか?」という冗談をよく言うのだ。………お母様のことが未だに好きな癖によくもまあ、と思って聞き流していたけれど……………
愛おしい人に嫉妬されるのは、こんなに嬉しいのですね。
アミィールはわざと自分を抱き締めるセオドアに身を任せる。その顔はとても幸せそうだ。
クリスティドは小さい頃からアミィールのことを知っている。親友の子供で、……昔愛した御方の子供だ。可愛くないわけがない。けれど、この状況で『冗談はやめてくださいまし』なんて軽く流すのではなくこの群青色の髪、緑色の瞳の男__セオドアに身を委ねる、というのはよっぽどだ。
そのセオドアも取られまいとアミィールを抱き締めて自分を睨みつけているのだから……あまりにも可愛い関係にふ、と気持ちが和む。
「すまなかった、悪い冗談だった」
「!あ、頭をあげてください!」
誠心誠意謝るクリスティドに、セオドアは我に返り慌てる。……………す、凄くいい人だ…………!
若干の感動を抱いている時____黒い部屋に、白い光が灯った。
「……………?」
「っとーう!」
「うわ、っ!?」
不思議に思っていると、白と黒のごまプリン頭のツインテールの美女が現れた。こ、今度は誰………!?




