表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/470

"選ばれし者達の密会場"

 










 「セオドア様、呼吸をしてくださいまし」



 「……………………ッ」





 結婚の儀三日前。セオドアはアミィールの横でガチガチに緊張していた。理由は…………各国の王族達との会食のせいである。





 ……………って!王族と!会食って!

 凡人の俺には荷が重すぎると思うんだが!?



 普通、結婚をする主役は何もやらなくていい。だがしかし、"普通"ではない大帝国の皇女様の結婚となると話は別である。外交も兼ねて、皇帝に代わり子供が挨拶をするのは当然で。それだけではなく、当のラフェエル皇帝から『お前達も参加しろ』という命令が下っている。逃げ場は残念ながらない。





 「では、行きましょう。御手を」



 「う、り、リードは私がす、する………」



 セオドアはビクビクと怯えながらカタコトでそう言う。アミィールはそれを見てくす、と笑った。



 こんなに緊張しているのに、あくまで男であろうするお姿は立派だわ。………でも、無理はさせてはならない。




 そう思ったアミィールは優しく、安心させるように微笑む。




 「____セオ様、今回はわたくしに王族を紹介させてくださいまし。


 そのかわり、次は必ずエスコートしてください」



 「……………う」




 アミィール様の優しい気遣いが心にじんわり染み渡る。男としては失格だけれど、乙女としても凡人としてもありがたい申し出に、複雑な気持ちになりつつ、その手を取った。




 アミィール様の手を取ると、会食場の前にいたラフェエル皇帝様の側近・リーブ様とガロが扉を開いてくれた。




「____?」




 扉のむこうは、真っ暗だった。

 長い机1つと椅子が9つあるだけ。…………可笑しい、サクリファイス大帝国皇城はどこも金と赤が散りばめられてて、豪華だ。でも、この部屋だけ____以前、卒業パーティにて攻略対象キャラであるターニャが使った特殊能力『監禁』を彷彿させた。




 「アミィ、ここは?」



 「ここは____サクリファイス大帝国皇族と、各国の王や妖精神、神、精霊、聖女、そして外にいる側近しか入れない聖域ですわ」



 「?」




 セオドアは首を傾げる。アミィールは『わからないですよね』と困ったように笑った。




 「セオドア様、このユートピアで大きな国を言ってみてください」



 「え?えっと…………サクリファイス大帝国、シースクウェア大国、ヴァリアース大国、グレンズス魔法公国、セイレーン皇国、アイスバーン………かな?」




 突然の問いだったけど、スラスラ出た。最北端にあるアイスバーンを除く4つの国がサクリファイス大帝国を囲むように集まっている。ヴァリアース学園に通っていた時に得た知識だ。



 アミィール様はそれを聞いて笑顔で頷く。



 「そうです。その国々は、20年前から本格的に友好関係を結んでおります。それは、今から来る王族達と、わたくしの両親がこのユートピアを救ったという浅からぬ縁の上で成り立っております。


 とはいえ、王族が馬車に乗り、何ヶ月もかけてサクリファイス大帝国に集まると……………国は統制を失ってしまう。また、集まるということは重要な事柄があって、他の方々に話せないような話もします。



 なので、この部屋は王族が行き来できるよう転移魔法を含んだ防音完備の、完全な密室なのでございます」




 「…………そうなのか…………」




 一年近く居たけれど、そんな部屋があるとは知らなかった。それに、王族や妖精神、精霊がこのような部屋を作るほど深い関係だということも。



 大国同士が常に集まれる、話し合えるということは………この世界は意外と平和なのかな。



 そんなことを考えながら、ふと疑問が浮かんだ。




 「…………そんな所に、私がはいってもいいのだろうか。私は公爵家の人間だが」



 「ふふっ」




 アミィール様は俺の言葉に囀るように笑った。そして、目を細めながら笑みを浮かべて優しく言った。



 「…………わたくしたちは夫婦になりますでしょう?立派な皇族ですよ、セオ様は」



 「ッ………」





 夫婦という言葉に、顔が熱くなる。

 今凄く、本当に結婚するんだなって実感した。やばい、……………にやけそう。




 「………?」


 「!セオ様!」




 そう思った時、足がかくん、と揺れた。









*作者から読者様へ~100話記念~


中途半端ではありますが、無事100話を迎えました。

読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価を頂きとても嬉しいです。


100話を迎えましたが、未だに終わりが見えません。

最初からトントンと決めていた前作と違い、作者も四苦八苦しながら書いてます。

未だに"龍神"に縛られている一族はこれからどうなっていくのか。

溺愛しながらどう"龍神"を乗り越えていくのか。

楽しんで頂けたら幸いです。



ご愛読のほどよろしくお願い致します。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ