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ずぼら皇女

 

 「これは、雑草?」





 「ええ、そうです。抜く時はこのスコップを使えば楽ですよ」




 「わかったわ、使ってみる」




 そう言って慎重に雑草を抜くアミィール様。口調も崩れてきてて、可愛い…………って、何を考えているんだ俺は…………!邪念よ収まれ…………!




 そんなことを思いながら、アミィール様を見る。アミィール様の制服のボタンが取れかかっているのを発見した。





 「アミィール様、ボタンが解れてますよ」



 「え?…………あ、本当だ。ぶらぶらしていてみっともないわ。引き抜いてしまいましょう」




 「だ、ダメです!」




 そう言ってすぐボタンを引き抜こうとするアミィール様の手首を掴んだ。すごく細くて、俺の手にすっぽり………じゃない!




 「す、すみません!」




 「?」




 慌ててセオドアは手を離すが、アミィールは首を傾げた。どうやら、彼女にとって触れられることはダメなことではないようだ。



 セオドアはこほん、と1つ咳払いしてから言う。




 「あの、ソーイングセットがあるので、宜しければ上着を貸していただけますか?」



 「まあ!そのようなこともできるのですか!?」



 「あ、えっと……一応、嗜む程度には……」




 そうごにょごにょと喋るセオドアに、嬉嬉として上着を手渡すアミィール。2人は近くのベンチに座った。




 セオドアは顔を赤くしながらも、手際よくボタンをつけ直す。それを横で見ていたアミィールは目を輝かせた。






 「わぁ………すごいわ、セオドア様、みるみるボタンがくっついていく………これはどんな魔法ですか?」




 「これは魔法ではありませんよ、………できました。どうですか?」



 「すごい………!わたくし、この上着を一生大事にしますわ、ありがとう!」




 そう言ってぎゅう、と制服の上着を抱き締めて溌剌と笑うアミィール様。




 アミィール様って、もしかして家事とかはできない………?ずぼら、というか、おおらか、というか………いやでも、普通に考えてアミィール様の周りにはこういうことをする専属の者が居るだろうし、なんなら新しい物を買えてしまう。





 ……………なんにせよ、こうして喜んでもらえるのは…………嬉しいな。




 「…………どういたしまして」




 「………………ッ!」




 「?どうなさいました?」



 「な、なんでもありません…………」





 なんでもありません、と言って背けられた顔。耳がほんのり赤くなっていることを、セオドアは気づかなかった。





 * * *










 「……………ま、まいりました」





 そう言う男の前には____木刀を持ったアミィール。それを外野から見ていたセオドアは目を見開いていた。



 この学園_国立ヴァリアース学園_では、沢山の貴族が通っている。でも、日本版のゲームだからか、体育の時間のようなものがあって、今日は剣技の日だ。



 本来、女子は参加しないのだが、アミィール様は"特例"として参加している。なんでも、サクリファイス大帝国は今こそ昔のような争いを起こすことはなくなったが、ユートピア全土で起こる内乱や紛争を鎮圧しているのだ。軍事国家、とも言われている。



 そして、アミィール様はその大帝国の皇女なのだ。国民を指揮する人間が椅子にふんぞり返って悠々としているわけではなく、寧ろ率先して国民を守らなければならない。




 なので、サクリファイス大帝国の皇女に生まれたアミィール様は必然的に武術、剣術を鍛えなければならない。




 ………で、今、剣技を教えているヴァリアースの兵士がやられたのだ。生徒内で歓声が起こる。剣技を教えている兵士はパワハラモラハラ常習犯だからいい気味だと思われているのだろう。




 しかし、アミィール様はにこりとも笑わない。人を何人も殺したと言わんばかりの冷たい瞳に、いつも話しているアミィール様だとは思えなかった。












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