プロローグ
転生したらヒロインでも悪役令嬢でもなく世界征服してる龍神の後継者だったのでこの世界の常識をぶっ壊してみようと思います!~私が愛する人と"自由"を手にするまでの物語~
の、続編です。
しかし、この作品だけでも楽しめるように心がけて書いています。
楽しんでいただけたら幸いです。
それはまるで、少女漫画の一コマだった。
紅銀の長い髪、大きな黄金色の瞳を持つ美しい御方。
他の誰よりも美しく、気高いその御方が膝を着いて私の手をガラス細工に触れるように優しく持ち上げながら、顔を上げている。
その表情はとても柔らかく、優しい顔。
その御方は、もう片手を自分の胸に置き、静かに言った。
____配偶者になっていただけませんか?
そう言って、私の手の甲にキスをする。
まるで王子が姫にするようなそれを私にした。
これだけ聞けば、ロマンチックな光景だと思うだろう。女なら1度は憧れるシチュエーションだ。
けれど、問題がひとつ。
求婚をしたのは王子ではなく_____大帝国の皇女で。
求婚をされたのは姫ではなく_____公爵家の次男坊の私………いや、俺だった。
………………………………………神よ、何故このようなあべこべな事が起きているのか、説明させてください。
* * *
俺は元々、日本生まれ日本育ちの日本男児だった。顔は中から下…………いや、普通だったと信じたい。それはともかく、何事も器用に出来ていた方だ。友達も普通に居たし、町に居るモブのような男だったとは思う。
ただ、一つだけ、誰にも言えない事があった。
それは_____自分が"乙女男子"だということ。
リボンやフリルなど可愛い物が好き。少女漫画や乙女ゲームを好み、花の世話やお菓子作り等も好きだった。
いや、リボンやフリルのついた服を着たことはない。着たいと思っていたのは小学生くらいで、身体が男になっていくにつれてそれは無くなったけど、見たり触れたりするのは大好きだった。
少女漫画を読めば胸をときめかせ、乙女ゲームのキラキラとした男子を見れば『男として生きるならこうなりたい、ヒロインの着ている服すごく可愛い』などと思ってやっていた。
お菓子作りや花の世話をしていると心が和んだ。
でも、それは『異常』だと歳を追うごとに気づいていった。今の世の中はそういう偏見が減ったけど、俺の家はとても考え方が古く、男は男らしくあれ!という風に何かある事に言われ、俺自身その気持ちがあった。
だから俺は、乙女ゲームや少女漫画も読みつつ、少年漫画を読んだり、RPGゲームやギャルゲーをやってみた。少しでも男らしく、周りの友達との話を合わせる為に。
そんな気持ちでやったからもちろん楽しいはずは無く。だらだらとやっていたのだが……………1つのギャルゲーだけは、違った。
そのギャルゲーの名は『理想郷の宝石』と言った。
魔法の使える中世的な世界観に、可愛い服を着た可愛い女の子が沢山出てきた。展開も殆ど乙女ゲームに似ていて、これだけは面白かった。
…………………だからだろうか。
そんな俺がまさか、その『理想郷の宝石』の主人公として生まれ変わったのは______
俺は、自分の顔を鏡で見る。
群青色の髪、緑の瞳。本来、ギャルゲーでも乙女ゲームでも主人公の顔は出ないのだが、『理想郷の宝石』は少し違っていた。女性ファンを取りたいが為の製作者の思惑がどうのとネットで叩かれていた。
そして、運営がサイトに上げた固定主人公の見た目のイメージ画は____今の俺の顔と、同じなのだ。
それだけじゃない。
名前を変えられるけれど、デフォルトの名前は『セオドア・ライド・オーファン』と言う。
これもまた、俺の名前なのだ。
舞台であるヴァリアース大国の公爵の息子で、貴族の通う学校で婚約者、幼馴染、後輩、ヴァリアースにいる森の妖精神、転校生…………計5人を学校に通いつつ攻略するという内容である。
その主人公が____転生後の俺なのだ。
※お詫び
誤字報告ありがとうございました。