小魚は空を見る おはなし①
海のソコ
太陽もたどり着けない、深い深い闇の中を泳ぐ小さな魚。
けれどまた、小魚の住むその闇も太陽にたどり着けない。
ある日、小魚は太陽を見たくなりました。光を浴びたくなりました。
けれど、
『太陽でさえたどり着けないのだから、僕が空へ向けていくら泳いでも辿りつけないかもしれない』
そう思いました。
小魚は太陽がいるはずの場所を見つめながら、光にあこがれます。
ある日、小魚よりも小さな小さなお魚が言いました。
「君は太陽にいけることは無いのさ」
小魚は小さな小さなお魚に言います。
「なぜそう思うの?」
小さな小さなお魚は、言うのを躊躇いましたが、真実を伝えることにしました。
「俺たちには目がないのさ。」
「なぜなの?」
小さな小さなお魚はいいます。
「本当はあるのかもしれないけれど、何も見ることのできない場所じゃそれもわからないのさ。」
「それなら見えるかもしれないし、やっぱり僕は行ってみることにするよ」
やめた方がいい…と小さな小さなお魚に言われたけれど、小魚は空へ旅立ちました。