おにぎり一つしか持たない悪役令嬢の懺悔
天におはす神々よ。どうか私の懺悔をお聞き届けください。
私は、とある男爵令嬢を虐めてしまいました。その娘が婚約者である王太子殿下と密かに浮気をしていると、私達が通う学園の噂で聞いたからです。
噂通り、二人はとても仲睦まじく、まるで私が邪魔者のようにすら感じました。学園内はその娘のシンデレラストーリーで持ちきり。そして、私が近いうちに捨てられるだろうとの噂も。
今までなら、王太子殿下のお側にいるのはこの私。でも、今はいつ何時もあの娘が側にいるせいで、近寄りがたい。あんな娘、消えてしまえばいい。大体、たかが男爵令嬢が王太子妃になんてなれっこない。なれても側妃よ。大して美人でもない、ちょっと可愛い程度のくせに。鶏ガラのように細過ぎる身体つきのくせに。運動だってからっきしのくせに。あんな娘、ただ物珍しさで可愛がられているだけよ!大体あんなに男を侍らせて恥ずかしくないのかしら!
私は本気でそう思って、取り巻きを使って虐めを開始しました。
しかし、すぐに王太子殿下の耳に入って、私は注意を受けたのです。これ以上過激なことはしないように、虐めなんて今すぐやめるようにと。
私はそれを受け入れませんでした。たかが男爵令嬢を虐めたくらいで、と王太子殿下に落胆しました。もうそこまで虜になっているのかと。
そして日に日に嫌がらせは加速していきました。そんな中で、学園のイベントでダンスパーティーがありました。
そこで、私は断罪されたのです。
王太子殿下を含めあの娘を取り囲んでいた男全員から、私が取り巻きにやらせた虐めの数々を暴露されます。しかし私は公爵令嬢。あちらは男爵令嬢。痛くも痒くもない。そのはずでした。実際、断罪劇の間他の皆も失笑していましたし。
ですが、最後まで私の罪を読み上げると、王太子殿下は言いました。この方は、隣国の国王の隠し子である、と。
瞬間皆がざわつき、私は信じられない思いでいっぱいでした。ですが、彼女は普段は隠していた隣国の王家の証である首筋の痣を皆に見せました。つまり、本当ということ。
そうして私は、何もかもを失っておにぎり一つだけを持って国を追われたのです。
どうか愚かな私をお許しください、天におはす神々よ。
「許してあげるから、早く天界へ戻っておいで。天の愛し子」
はい、今参ります。
私はとある国の大聖堂の中で、首を掻き切りました。