表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

乙女ゲーでのハーレム計画

「エリス、婚約破棄させてもらう」


あれ?そんなはずは…

私ことシアン=レインジアは驚愕して目の前の金髪の男を見上げた

普段どうり甘い微笑みを携えた顔だが、目には怒気が宿っているように見える

それは先ほどまでお喋りしていた相手のエリスことエリザベス=ローズ公爵令嬢も同じようだった


「御説明を。クリスロウ第二王子殿下」


「君は、シアン嬢に酷い事をしたようだね。王太子の婚約者として相応しくない」


「そうだ。証拠もある」


「人気のない所で虫を投げたり、高い所から落としたり、鞄を捨てたりもしたようだな」


心当たりは沢山ある。だけれどそれらは特殊な事情があっての事だ

クリスの後ろから批難しに現れた王太子の側近の二人は、知っている筈ではなかったのか


悪役令嬢エリザベスは、転生者であると


恋愛シミュレーションゲーム『花園のプリンス』

この世界はそのゲームの世界と酷似していた

この三人も、攻略可能なキャラクターである

この国の王子様、宰相の養子、貧乏貴族からの叩き上げ騎士

実はこの三人、ゲームではあまり仲良くはない

その事を知っていたエリザベスが、仲違いを解消したからこう連れたっている。そのはずなのに

何故こんなふうに事を荒げるのだろうか?

だがここは、前から言いたかったあの台詞を言えるシチュエーションでは?


「わ、私のために争わないで!」


私はエリスの前に回り力強く叫んだ

周りの人達も興味深そうにこちらに視線を向ける

それはそうだろう。劇場でしか聞かない台詞が聞こえたのだから

場をもっと盛り上げようと口を開いたが、私が言葉を紡ぐより先にエリスが話す


「シアンさん、少し黙っていてもらえるかしら?」

「シアン嬢、少し黙っていてくれないか?」


ほぼ同時にクリス様にも言われてしまい、私は両手で口を塞ぎ大きくうなずいた

端正な顔の二人に冷たい目で同時に見つめられ、怖いはずなのに頬が高揚する

先ほどの特殊な事情というのがこれだ

私は、この世界の常識からずれている

理解はしているのだか、剣呑な空気や極度な緊張感などを感知すると、やってしまう

そして間延びした空気や、相手の呆れ顔に喜びを感じてしまう

エリスが虫を投げたのだって、私が手渡ししたからだし

登って降りられなくなった私を、受け止めると言ってくれたのも高い所から落としたと広義には言える

教室に忘れた鞄を上から投げてもらったりもした

うん。イベントがだいたい二階にある教室前の廊下でしか起こらないのが悪い

内容は知らないが、緊張感のある空気ばかりでていたので、吸い寄せられるように木に登ってお邪魔したりする私も少しだけ悪い気もするけど

そんなことを考えながら、黙って成り行きを見ていたら、また人物が増えていた


「エリザベス様が悪意を持ってその様なことをするはずがございませんわ!」


「私も同感だ。元婚約者殿」


「それに、この様な所で醜聞を晒すなど恥がありませんの?妹として恥ずかしいですわ!」


この取り巻きムーブをしている三人は、なんと宰相の姪で養子ルートのライバル役、騎士団長の娘で貧乏ルートのライバル役、王弟の娘で王太子を兄と慕っている王太子ルートのキーパーソン、重要キャラの集まりだ

ゲームでは勿論取り巻きなんてしていない。それどころかシアンと一緒になって悪役令嬢エリザベスを追及したりする

どうでもいい事なので誰にも言っていないが、花園のプリンスの主人公は私ことシアン=レインジアである。ついでに言うと私も転生者なのだ

ただ私は、ゲーム内容をほぼ知らない。そんな私が何故主人公なのかわからない。だから黙っていた。変に邪魔してしまうかもしれないし。そのくらいの常識くらいはあるのだ

いつの日だったか、エリスは私に転生者だと打ち明けた。皆がどうなるか、自分がどうなるか、どうなりたくないか

自分を死なせる相手に伝えるなんて、勇気がいっただろうに、震えながら、それでも友人の私に隠し事は出来ない、と

そのタイミングで私も明かしても良かったけれど、次の言葉で凍りついた私はなにも言えなくなった

私の行動は、ほぼゲーム内と同じだったらしい

木に登ったり等は違うらしいと聞いて安心したが、意識して攻略対象に近付かないようにしていたのにである

私は一も二もなく協力を申し入れた。私もエリスが大好きになっていたのだ

さて、回想している間に養子と貧乏騎士は婚約解消されたようだ。クリス様も王位継承権の剥奪をされるかもしれないと聞いて顔色が悪い

このタイミングを見計らっていたのだろう。満を持して現れたるはこのお方



エドワード=フォン=リリアン王太子殿下

エリス様の婚約者であり、メインヒーローを飾るこの国の王子様である



「クリス、フラン、カトル。悪あがきはもういいだろう?いい加減諦めろ」


そう言うと、エドワード様はクリス様の頭を優しく撫でる

その優しい微笑みに、私以外の、男女問わずが、魅了される

そして、穏やかな声にのせてフィナーレを語った


「私は皆を愛する。生まれや性別や血の繋がりなど、些細なことに過ぎない。観念して私の後宮に入れ」


エドワード様は、賭けをしていたらしい。エリスが婚約を辞退するか、もしくはエドワード様以外を愛するか…だと推察できる

雰囲気がほんわかしてきた。エリスも取り巻きも攻略対象も、全員がエドワード様に熱い視線を投げているからだ

ふいに、エドワード様の視線が此方に向いた


「後は君だけだよ、シアン。それでコンプリートだ」


エドワード様も転生者なのはわかっていた。しかも中身は恐らくヘビープレイヤーのお姉様。エリス様のサポートを違和感がない程度にずっとしていた

まさか、乙女ゲームで登場人物ハーレムを作ろうとしていたとは今知ったけれど

だが、私は喋らず目を背けた

正しくは、エリスとクリスを交互に見た

エドワード様とクリス様は首を傾げたが、エリスだけは呆れたように溜め息をついた


「………シアン、もう喋ってもいいわよ」


私の悪い癖がまた、でてしまったようだ

ただ、エドワード様に支配されていた空気が霧散し、皆が苦笑を始めたことで胸が暖かくなる

こうして、主人公であるシアンと、メインヒーローであるエドワード様の、ハーレム総取り合戦が始まったのだった

どっちに転んでもハッピーエンド

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ