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特攻列島  作者: みやこのじょう
第五幕 帰還
53/102

第五十二話・シェルター内部

挿絵(By みてみん)

 見慣れぬ天井に、さとるの意識が一気に覚醒した。勢い良く上体を起こし、周りの状況を確認する。


 シングルベッドのみの何もない狭い室内。出入り用の扉があるだけで窓はない。壁にあるのは室内灯と空調の換気口だけ。時計もなく、今が何時かすら分からない。


 ベッドから降り、ドアノブに手を掛ける。鍵は掛かっておらず、扉はすんなり開いた。


「…………どこ?」


 無機質な白い壁と廊下が左右に広がっている。同じような扉が向かいにも等間隔に並んでおり、部屋の中は同じ造りなのだろうと想像がついた。下手に動いたら自分のいた部屋を見失いそうで、さとるはわざと扉を開けっ放しにしておいた。


 しん、と静まり返る廊下を歩く。


 無数に並ぶ扉と違う場所を視界の端に見つけ、とりあえずそこに行ってみたが、ただのシャワールームとトイレだった。


 昨夜、案内係から簡単な説明を受けていたことを思い出し、ここはシェルターの中なのだと再確認する。


 まだ夜明け前の時間帯なのだろうか。他の人の姿は見当たらない。気配もない。静か過ぎる空間に、好奇心より不安が大きくなる。

 さとるは探索を切り上げ、すぐに先ほどの部屋へと戻った。再びベッドに転がり、今までのことを振り返る。


 ある日突然真栄島(まえじま)達が訪ねてきて、戦争回避のために協力してくれと持ちかけられた。見返りは弟の保護。自分の命の保証はないと知りながら参加した。知らない大人たちと組まされ、無人島に兵器を破壊しに行った。そこで、自分を庇ったゆきえが怪我を負い、安賀田(あがた)多奈辺(たなべ)を犠牲にして任務は達成した。


「そうだ、みつる……」


 もう二度と会えないと思っていた。でも、こうして生きて戻ってこられた。別れてから丸二日。早く無事な姿を見せて安心させたいと気持ちばかりが(はや)るが、疲労が抜けきっていないさとるはまた眠りについた。







 数時間後に案内係が呼びにくるまで、さとるは眠った。車に積んだままだったカバンがいつのまにか運び込まれている。シャワーを浴びてから着替えて身支度を整えた。


 それから別のフロアへと案内された。

 先ほどまでのフロアと違い、こちらには人の気配がある。シェルターのスタッフらしき人達がすれ違いざまに「おはようございます」と声を掛けてくる。その度に、さとるは曖昧な笑みを浮かべて軽く頭を下げた。


 通された部屋は小さな会議室だった。窓はないが、中央に大きなテーブルがあり、それを囲むように椅子が置かれている。

 中では真栄島と三ノ瀬(みのせ)が待っていた。昨日とは違うスーツだ。二人は並んで椅子に座り、テーブルを挟んだ向かいの席をさとるに勧めてきた。


「さとる君おはよう。よく眠れましたか」

「あっハイ、おはようございます……」


 指定された椅子に腰を下ろしながら、さとるは出入り口をちらりと見た。


 他には誰も来ないのだろうか。

 ゆきえは、右江田(うえだ)はいないのか。


 そう考えているのが伝わったのか、真栄島から「あと二人来るまでお待ち下さい」と声を掛けられた。


 しかし、やってきたのは知らない人物だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新しい展開になってきましたわーーー!! ここでミッションを終えて終了!! だと思ったら…… 戻ってこられないと私も思っていました。 [一言] 私、続きが気になります!!
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