表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特攻列島  作者: みやこのじょう
第四幕 死闘
40/102

第三十九話・唯一の武器

挿絵(By みてみん)

 右江田(うえだ)は焦っていた。


 スーツのポケットに入れたままの衛星電話がずっとブルブルと震えている。真栄島(まえじま)からの連絡だと分かっているのに出ることができない。

 それは、彼が現在運転中だからだ。


「うう〜、早く出たいのにぃ〜!」


 多奈辺を車から降ろした後、予定通り役場跡地を目指して進んでいたのだが、場所が分からなくなってしまったのだ。


 場所はゆきえが知っている。

 だから、さとるが運転する軽自動車が先頭、次に三ノ瀬、最後尾は右江田のオフロード車という順に走っていた。

 しかし途中後方から狙撃され、一旦脇道にそれてやり過ごしている間に先導車を見失ってしまった。


 合流地点ならみんなの車が固まって止まっているはず。そう思って辺りを探すが、さとると三ノ瀬の軽自動車も真栄島の軽トラックも見当たらず、右江田はずっと近辺を走り続けていた。突き当たりの交差点を左に曲がり、その後は狭い道をぐるぐると回っている。


 運転中は電話に出られない。

 これは彼が道路交通法を遵守しているからではなく、話すことに意識が向き過ぎると前方確認やハンドル操作が疎かになってしまうからだ。


 新しい指示を貰いたいが、迂闊に止まったらまた狙撃されてしまう。それを恐れ、出来るだけ安全そうな場所を求めて走り回った。


 そして、ようやく良さげなガレージを発見し、そこに頭から車を突っ込んだ。入り口以外の三方向はしっかりとした壁で囲まれている。車体を全部隠してしまえば見つかりにくい。


 右江田はすぐさま胸ポケットから震える衛星電話を取り出し、通話ボタンを連打した。


「真栄島さんッ!?」

『ざんねーん、私でしたぁ〜!』

「み、三ノ瀬(みのせ)センパイ……」


 先ほどからの着信は三ノ瀬からだった。


『ちょっと、どこに居るの』

「えーと、住宅街のどっか」

『どっかってドコよぉ〜!』

「わかんないっすよー!!」


 右江田は自分が今どこにいるのか把握していなかった。狙撃されないよう闇雲に走り回ったからだ。


 ようやく仲間の声が聞けたことで気が緩んだのか、声が震えてうまく話せない。それを察して、電話の向こうで話す相手が交替した。


『──右江田君、無事かい?』

「真栄島さぁん!」

『合流したいところだけど、口頭では説明しづらい場所だし、また変更があるかもしれないからやめておこう。()()は合流はせず、邪魔者を排除しながら港に向かってくれ』

「は、はいっ。でも、あの、」

『集合場所は港だからね。必ず来るんだよ』


 そこで通話は切れた。


 敵を倒して港を目指す。

 簡単なことではない。

 銃火器もない。

 それに、同乗していた多奈辺(たなべ)が自分と今一緒にいないことを報告しそびれてしまった。


 だが、明確な目標が出来たことで先ほどまでの不安な気持ちが全て消し飛んだ。新たな指示を脳内で何度も反芻し、自分の頬を両手のひらでパァン!と叩いて気合いを入れ直す。


 腰のホルスターにはアルミ合金製の特殊警棒。

 これが右江田の持つ唯一の武器。


「よーっし、やるか!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。 書いてくれてありがとうございます! [気になる点] なし [一言] なし
[一言] 右江田さんがちょっとだけ持ち直したぞ!やったー!ヾ(≧▽≦)ノ 右江田さんが頼りなのだ、なんとか踏ん張ってがんばれー!(´▽`*)
2021/05/05 20:48 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ