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特攻列島  作者: みやこのじょう
第四幕 死闘
39/102

第三十八話・小休止

挿絵(By みてみん)

 当初の予定では役場跡地で合流するはずだった。しかし危険を感じたため、そこから少し離れた住宅街の空き地へと落ち合う場所が変更となった。


堂山(どうやま)さん、さとる君、ご無事で何よりです!」


 三人の顔を見るなり、真栄島(まえじま)は笑顔で出迎えてくれた。


 この空き地には廃材が高く積み上げられており、道路側からは奥が見え辛い。周辺の家の窓は全て雨戸が閉められ、何者かが潜んだり狙撃してくる可能性は非常に低い。

 元からそうだったのではない。ここを安全地帯のひとつにすべく、真栄島が事前に家々に侵入して雨戸を閉めて回ったのだ。


「……そうですか、安賀田(あがた)さんが」


 三ノ瀬(みのせ)から報告を受けて見上げると、山頂からはまだ黒煙が立ち上っていた。


 先ほどの爆発には気付いていた。

 今回の作戦の目的である地対艦ミサイルの破壊が成されたと分かり、あとは全員が戻ってくるのを待つばかりと思っていた。協力者の中から犠牲者を出してしまったことに責任を感じ、真栄島は唇を噛んで辛い気持ちを堪えた。


「彼のおかげで我々のチームは無事任務を完了することが出来ました。後は帰るだけなんですが、そうもいかなくなってしまって……」

「港に船が増えてたんですけど、あれってやっぱ敵が乗ってたやつですか」

「ああ、間違いない。あの船が着いた後、武装した兵士が何人か島に上陸した……私は早めに気付いたから身を隠せたんですよ」


 さとるの問いに、真栄島は険しい表情で頷いた。


「右江田君や多奈辺さんとも合流したいが、迂闊に動くと危ない。連絡を入れて、ここまで来てもらう方がいいでしょう」

「でもぉ、さっきからずーっと掛けてるのに全然出ないんですけど〜」


 三ノ瀬は真栄島と話しながら、衛星電話で右江田に連絡を試みていた。呼び出し音は鳴るから電話機が故障しているわけではない。運転中か、それとも。


 ゆきえとさとるの不安そうな様子を見て、真栄島はニコッと笑ってみせた。


「さあ、疲れたでしょう。水と携帯食くらいしかありませんが、少し食べて休んでください。見張りは私がやりますから」


 そう言って、ペットボトルと小さな包みを手渡す。

 二人はそれを受け取ると、僅かに表情を緩めた。ずっと緊張状態が続いていて気が休まる時がなかった。今も決して安全とは言えないが、任務は完了している。少なくとも義務や責任感からは解放された。


 真栄島は空き地の出入り口付近の物陰に隠れ、見張りを始めた。


 三ノ瀬は右江田に連絡を試みながら非常食のショートブレッドをかじり、空いた手で手持ちの銃に弾を補充している。


「あ、そうだ、武器」


 無反動砲(ロケットランチャー)も手榴弾も、もう無い。

 自分が丸腰であることに気付き、さとるは焦ったように声を上げた。三ノ瀬がニッと笑う。


「あるわよ〜武器。真栄島さんが持ってきてくれたからね〜」

「えっ」

「真栄島さんは私達と別行動してる間に敵の拠点から物資を回収してくれてたのよ〜。もちろん武器もねっ」


 軽トラックの荷台には幾つかの銃火器と弾薬入れが積まれていた。

 三ノ瀬達が見張りを撃退して山道を登った後、真栄島は見張りの潜んでいた場所を見つけ、運び出せないものは壊し、使えそうな物資を奪った。武器や予備の弾薬さえ押さえておけば敵はそれほど脅威ではない。


 その後、出来るだけ分かりやすい場所で落ち合おうと役場跡地を指定したが別の見張りの拠点だったため、慌てて合流地点を変更した、ということらしい。


「さあ、どれがいい〜?」


 まるで露店の売り子のように、三ノ瀬は二人に銃を勧めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 三ノ瀬の最初から微妙に漂っている壊れている感が、何とも言えず良い
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