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特攻列島  作者: みやこのじょう
第四幕 死闘
37/102

第三十六話・単独行動

挿絵(By みてみん)

 三台の車は港を通り過ぎた先にある交差点を左折し、なおも走り続けた。


 ここが島のメインストリートだろうか。やや広い道路の左右には等間隔に街路樹が植えられ、小さな店らしき建物が幾つか並んでいた。しかし、どの店もシャッターが下されている。この島は現在誰も住んでいないのだから当然だ。


 この道の突き当たりが役場跡地。別行動を取っていた真栄島(まえじま)との合流地点である。


 もうすぐ見える、といったところで右江田(うえだ)のオフロード車の後部に何発かの銃弾が命中した。幸いスペアタイヤがバックドアに固定されており、それに当たって車内への貫通は免れた。

 小銃(ライフル)目当てでトランク部分にいた多奈辺(たなべ)も、これには流石にひやりとした。



「やっべぇ、まだ狙われてる!」



 何者かが車でオフロード車の後ろを追い掛けてきているわけではない。恐らく交差点付近から狙撃しているのだろう。走行中、しかもバックミラー越しでは狙撃手の姿は確認出来ない。


 ガラスに命中すれば弾が貫通してしまう。右江田は少し迷った後、ハンドルを切って狭い路地に入った。


 さとると三ノ瀬(みのせ)の車は既に先に進んでいる。ここは最後尾にいる自分がしんがりを務めるべき。そう思ってはいるが、狙撃銃に対抗する手段がない。

 引き返して真正面から敵に突っ込むか。

 しかし、フロントガラスを撃ち抜かれたら命に関わる。多奈辺を乗せている以上、運転手である自分が先に斃れるわけにはいかない。



「ああ〜……どーしよっかなぁ……」



 路地を進み、角の度に何度か同じ方向に曲がり、再びメインストリートに出る直前、建物の陰に車体を隠したまま、右江田は弱音を吐いた。


 多奈辺には右江田の気持ちが何となく分かった。

 次の指示がない状況が彼を追い詰めている、と。早く真栄島と合流して明確な指示を出してもらいたい。そうすれば、それに従って動くだけで済む。



「私はここで降ります。右江田さんは皆さんの後を追って合流を」

「は? なに言ってんすか多奈辺さん」

「その代わり、この銃は借りていきます」



 振り向くと、多奈辺はいつの間にかトランクから後部座席に戻っていた。手にした小銃(ライフル)を軽く掲げ、ニッと笑って見せる。


 敵がいる中での単独行動は危険だ。それに、これまでは車に乗っていたからこそ銃弾から守られていた。車は謂わば鋼鉄の鎧。身を守る術も無いまま外に出ようとするほうがおかしい。



「いやいやいや、早まらないでくださいよ。外は危ないんすよ! そもそも、ソレの使い方分かるんすか?」

「やったことはないけど、多分コレが安全装置ですよね? まあ、なんとかなると思いますよ」



 そう言って多奈辺は小銃の右側面、引鉄(ひきがね)の上部にある小さなレバーを見せてきた。右江田も実際に撃ったことはないが、三ノ瀬(みのせ)から武器の説明を受けた時のことを思い出し、小さく頷いた。



「……絶っっ対無理しないでくださいね!」

「分かってますよ。私も死にたくないので」



 多奈辺は車を降りると、身を隠すように民家と民家の間に入り込んでいった。それを呆然と見送った後、右江田は車を後退させ、違う道から目的地を目指すことにした。



「……車に乗ったままじゃ撃てないもんなあ」



 オフロード車のエンジン音が遠ざかるのを聞きながら、多奈辺は手にした小銃の銃身をそっと撫でた。ひんやりとした金属の質感と重みが彼の心を支配していく。


 車から降りたのは(おとり)役をするためではない。

 銃を撃ちたい、その一心からだ。



「やれるだけのことをやろう。私は一番弱いんだから」



 多奈辺は目星をつけた空き家の朽ちた雨戸を外し、屋内へと潜り込んだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 斃れる 初めて知った漢字です。かっこいい! [気になる点]  銃を撃ちたい、その一心からだ。 やっぱりか! でもこの戦争ならではのマッドおじさん! という感じが最高たまらんです
[良い点] 息詰まる描写が続きますね。 多奈辺さんが… [気になる点] なし [一言] 面白いです!
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