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特攻列島  作者: みやこのじょう
第二幕 招集
17/102

第十七話・武器講習

挿絵(By みてみん)

 次に、実際に車の内部を見て説明を聞く。

 案内役は強面(こわもて)の職員、右江田(うえだ)だ。この中では最も背が高く体格が良い。彼は手前にある軽自動車の運転席のドアを全開にし、協力者達によく見えるようにしながら解説を始めた。親しみを感じてもらえるよう心掛けているが、元々の顔立ちが厳ついせいで笑顔も怖い。



「運転自体は普通の車と変わらないんで、大事なのは爆弾の発射方法っすね。操作方法は簡単で、真ん中、左手側のシフトレバーのすぐ横に設置されてる赤いボタンを押すだけっす。あ、いま押しても弾は出ないんで試しに押してみます?」

「え、いや、いいです」

「だーいじょーぶですって! ホラ、ここんとこの安全装置解除されてないんで! いざって時に押せないとヤバいから」



 説明通り、シフトレバーのすぐ横には赤いボタンが取り付けられていた。誤操作防止のため、スライド式のプラスチックカバーが付いている。何本かの配線が助手席にある鋼鉄製のボックスに繋がっている。


 遠慮するさとるに対し、右江田は執拗にボタンを押すように迫った。興味の方が勝ったか、右江田の迫力に圧されたのか。何度か断った後で、さとるは意を決して運転席に座って赤いボタンに手を掛けた。

 全員の視線が集まる中プラスチックカバーをずらし、さとるはグッと指に力をこめた。カチッとボタンが沈み込む音がしたが、発射されることはなかった。



「ね、意外と簡単っしょ?」

「……はあ、確かに」

「ちなみに照準は固定なんで。フロントガラスの印のある辺りに飛んでくと思って。射程距離は三百メートルくらいだけど、確実なのは百以内かな。より近くから放てば外れる確率減るんで、出来るだけ標的に接近してからボタン押してください」



 右江田が指差した場所には透明シートにプリントされた的のようなものが貼り付けられていた。要は車の前方百メートル以内ということだ。的は大きくはないらしいので、確実に当てるためにはかなり接近しなくてはならない。



「あとコレ、手榴弾は知ってます?」



 次に、三ノ瀬(みのせ)が何処からか段ボールを引きずってきた。中には数個の手榴弾が入っている。その中の一つを取り出し、全員に見えるように差し出し、ピンに指を引っ掛けて抜く真似をした。



「使い方は簡単です。このレバーを押しながら安全ピンを引き抜いて投げる、これだけ!」



 笑顔でレクチャーするには物騒な内容だ、と四人の協力者は思った。三ノ瀬は構わず使い方の説明を続ける。



「みなさん、ボール投げって最近やりました?」

「いや、大人になってからは全く」

「私も」

「学生の時にやったきりですね」

「あ、俺はたまに投げてるけど」

井和屋(いわや)さん以外はブランクありますね〜。出撃前に肩を回しておいた方がいいかも」



 言いながら、三ノ瀬はその辺にあったゴムボールを投げた。ボールは目の前に落下。その数メートル先にある壁にすら到達しなかった。



「……とまあ、私は全然飛ばせないんで手榴弾(コレ)は使わないです! もし実戦でこの距離で落ちたら投げた方が死にますからね!」



 清々しいほどの開き直りっぷりだが、自分の身体能力を正しく把握していないと命を無駄にしてしまう。本来ならば、ロケットランチャーも手榴弾も訓練された兵士が使うべき兵器なのだから。


 協力者達もゴムボールを投げ、自分がどれくらい投げられるのかを確認した。結果、五十九才の多奈辺(たなべ)は思うように肩が動かず手榴弾の使用は中止。代わりに拳銃が支給されることとなった。こちらは警察官が使う回転式拳銃で弾数は五発。建物を破壊するには向かないが、ガラスを割ったり鍵を壊すくらいは出来る。



「実際の手榴弾はペットボトル一本ぶんの重さがあります。安全ピンを引き抜いてから約四秒後に爆発するので、必ず体を隠せる場所を確保してから投げてくださいね〜!」



 四秒は意外と短い。もし誤ってすぐ側に落下した場合を考えても、遮蔽物がある場所から投げるのが望ましい。


 二人から手取り足取り教わり、四人は戸惑いながらも順調に使い方を習得していった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これから死に向かっていくのに、二人のノリが妙に軽いのが、逆に恐怖感を煽る
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