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Talio Umwelt ―聯邦の鈍― 【完全版】  作者: 無機になってる光合成ロボ
プロローグ
1/3

第0話 男

【更新遅れてしまい、申し訳ありませんでした!】

今作品は本編を元に、より完成度を高める為に改稿を重ね。世界観の諺解を目指したものになります。


故に、内容が多少変化され、ボリュームアップされていますが、今後とも宜しくお願いします!


【前書き】

作者は同名で主に「カクヨム」で活動しています。

「小説家になろう」では自信作をピックアップし、投稿しています。


なので、他作品も閲覧したい方は「カクヨム」にて。

 2062年――栄華と狂乱の時代。


世界の中心的存在である聯邦(アメリカ)は、宇宙産業と謂う名の巨大科学を新たに計画(プロジェクト)・実施した。


その計画の源流は、2019年には既に存在し、実現可能でもあった「スカイフック」或いは「テザー推進」と呼ばれる方法。


宇宙空間に巨大な振り子を作り、宇宙船を投げ飛ばすと考えてもらえば判り易いだろう。


聯邦はその方法を利用し、貴金属や未知の資源を含めた、太陽系の資源を驚異的な早さで集め始めた。


先ずは火星(Mars)、次に水星(Mercury)金星(Venus)という順に、徐々にその範囲を広げ、近々火星に人が送られるという話もある。


人々はそれをアポロ計画の続きだと賞賛し、その未来に夢を見た。


然し、他国からすれば面白い話ではない。


 当然。諸外国共々、(こぞ)って手を出し始め、再び科学競争が始まったと思われた――が、然し。この計画にはテザーを利用する為に専用のシャトルを造る必要があったのだ。


加えて、テザーを利用する際にも多少の難点があり、それを解決するには時間も費用もかかった。故に、聯邦(アメリカ)政府・NASAはそれを踏まえて事前に設計、建造、実行し、一時的な独走状態へと持ち込んだ。


その計画は大成した――


そして、この事変は聯邦を大きく変えた。


高度成長期の訪れと、第二次冷戦(ColdWarⅡ)――新たな技術戦争の幕開けだ。



 当然、社会環境も変わり。適正技術とされるものは日々進歩し、人口の増加率も上昇に傾向している。


そして、聯邦の経済は世界に影響する為、今回は世界経済が潤い。発展途上国が増加、世界の平均“ 国内総生産(GDP)“は高まり、人類は新たな世界を迎えようとしていた。


然し、栄華ばかりで済むほど世界は甘くない――新たな問題が擡頭(たいとう)するまで、そう時間はかからなかった。



 時代が動く時、活気付くのは犯罪者も然り――と謂うように。犯罪のレパートリーに科学技術を用いた多様性が生まれ、政府はその対応に追われるようになった。


だが今は、人も技術も発展に発展を重ねる時代。数のある変質的犯罪に、対応策を講じる時間すら惜しまれた。


そこで政府は()()に還った――つまり、罪刑法定主義の起源とされるハンムラビ法典の、同害刑に基づく法を施行したのだ。


ソレの名は『即時(Immediate)死刑(Execution)執行権(Penalty)』――通称『I.Ex.P』


然しソレも、刑罰の限界を定めるという元来の同害報復とは違い。重犯罪者には死を(もっ)(つぐな)わせるという曲解の下、歪な姿形になって発現してしまったのだ――或いは、意図的にそう書き換えたのだろう。



 即時死刑執行権(I.Ex.P)は当時、高度成長期に乗じて警察国家を目指そうとした聯邦にとっては、大きな賭けであった筈だ。


然し、それでも施行されたのは実験的な意味合いも兼ねていたのだろう。


即時死刑執行権は始めからその姿で完成していた。そして聯邦政府は、州に権限を与え、実験的に幾つかの州に施行させたのだ――それも、州に多額の報酬を与え、都市開発に協力するという形で。



 執行権限は警察と、法施行と同時に独立される特捜部に与えられ。対象の重犯罪者を「その場で死刑執行する権利(ちから)」を与えた――人の手に余る“同害報復(Talio)“だ。



 無論、それが悪法かどうかは人によって違うだろう。事実、例外を除けば施行した殆どの州の犯罪率は低下している。「傷付けなければ、傷付けられない」ある意味では、新たな相互監視社会とも謂えるだろう。


――だが、事実はそれだけで終わらない。


『人殺し』が法によって正当化されるという異常――それに反対する無法者と市民に、もはや境界など無く。度重なる報復の波が、犯罪者を尚も生み出し続けている“事実“。


人々には贖罪(しょくざい)する猶予も、死者を(いた)む猶予も与えられていない。


未だに皆、進化(世界)に追いつくのに必死で、他人の気持ちを理解する為に時間を割けないでいる。


人類は進化することで孤独になったのだ。



 進化と堕落が混ざり合い、下水の様に(よど)む世界――冷雨降る夜中に男が独り。傘もささずに、特捜署の前で小さく、佇んでいた。


靴に付着した暗赤色の液体が、冷雨によって洗い流され、男の視線はそれを待つかのように下へと垂れ落ちている。


終夜灯(ネオンランプ)の冷光を反射する瞳に力は無く。表情筋による(しわ)も少ない。


色褪(いろあ)せたガンベルトを付け、人工革で造られた長い外套(コート)(まと)い、黒茶色の無精髭(ぶしょうひげ)と髪を濡らす――時代遅れな体裁(ていさい)の男。


その男の名は『ゲライン・A・シェダー』


職業は特捜――犯罪率を下げる為に、即時死刑執行権(I.Ex.P)を施行した州。その“例外“であるKinkCityに住み、当然殺した犯罪者は数知れず。


その中に市民が居たかどうかにも、既に興味を示さなくなっている、恒常性を保った男。


大それた目標や、多額の資金・借金がある訳でもなく。時折、奇人が起こす奇事を、銃を用いて終わらせる、()()()()()()人種。


人殺しに慣れてしまった男は、飛行車のテールランプ、キャバレーの終夜灯(ネオン)、ビルのガラスに反射する朝日までもが、全て色褪(いろあ)せ、淡く視えるようになってしまっていた。


(もや)の様な幻――若しくは、テレビの中の映像の様に、現実味のない三人称で描かれる世界。それも、ブラウン管テレビの様な、淡々とした、つまらないものに。


『“生きているだけの人間“』


いつしか男はそうなってしまい、外道に逸れた事もあった。


男自身、生きる意味を失いかけていたのだ。

死生の波に晒されすぎた人間の末路は、何時(いつ)の時代も変わらない。



 然し、未来を見ない男には予想以上の因果(未来)が待ち受けていた。誰も予想し得なかったような、不自然・不条理極まりない怪事。


――世界と人の在り方を改変する怪事。


同害報復(Talio)環世界(Umwelt)の本質が、(そら)の裏から待ち構えていたのだ。

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