Act.1 超越火力 Part.1
鈴菜「ようやく始まりました、女子高傭兵ハートメイル・ヴァルキリー」
マリア「なによそれ」
白夜「読んでみないと分からない!」
可憐「そこをどうにか…」
佐織「SF、ハードボイルド、ワビサビ、アクション!」
船坂「自称パルプ小説、女子高傭兵ハートメイル・ヴァルキリー、只今スタート」
7月上旬、深夜。
中部地方、Y県の山中に向け、1台のヘリコプターが推進していた。
ヘリコプターを運転する白人男性の隣に座った女が後ろを向き、声を荒げて叫ぶ。
「てめえら!覚悟は出来ているな!」
女の名前は船坂美智子。日本人で始めて海兵隊式の傭兵スクールに入学し、そして女性で始めて首席で卒業した。彼女はレイバンのサングラスをかけているが、レンズの奥では冷徹な光が光っていた。
「イエス、マム!」
船坂の呼びかけに対し、後ろの搭乗席に向かい合わせで座っている女達が答える。声が船坂より僅かに高い。女子高生である。
しかしその服装は普通のそれとは全く異なっていた。
オプスコアのFastヘルメットを被り、マウントベースにはNVS-14暗視装置。手袋にメカニクス・オリジナルを付け、レンジャーグリーンのタクティカルシャツの上にLBX-4020A3プレートキャリアを装着し、それには各人の役割にあったポーチや無線機が取り付けてあった。
しかし、装備こそ警察、いや自衛隊以上だとしても所詮は女子高生である。冷や汗をかく者、緊張して震える者もいた。これが彼女達の初陣だから尚更だ。
それを察して船坂が声を掛ける。まずはイサカM37散弾銃を抱きしめたように掴む女子からだ。
「おい鈴菜!なに緊張してんだ!お前何の為に白鉢巻巻いたんだ!」
突然の叱責に鈴菜は一瞬身震いし、ヘルメットの下の白鉢巻をきつく結び直す。白鉢巻は決死、即ち特攻精神を自ら誓ったもの。そして叫ぶように返答する。
「イエス、マム!」
船坂はそれを聞いて静かに頷き、鈴菜の隣に声を掛けようとする。
その瞬間、ヘリコプターが一気に高度を落とした。目的地周辺に着いたのだ。
そこは山中、人目を避けるように建てられた倉庫群の様な集落。窓から漏れた光が、無機質な建物を照らす。
船坂は舌を噛んだため僅かに顔を顰めたが、直ぐに気を取り直して隣の操縦手に命じる。
「スピーカーを起動。最大音量でいけ。流すのは勿論…。『ワルキューレの騎行』」
操縦手が頷き、パネルに手を伸ばした所で船坂は自らを鼓舞するように口角を上げ、後ろを振り向き再び叫んだ。
「お前らは私の地獄の特訓に耐え抜いた!今やお前らに勝る敵は存在しない!私が保証する!お前らの部隊名は何だ!?『ハートメイル・ヴァルキリー』!!私の名前を冠した戦乙女共だ!」
「マム!イエス!マム!!」
船坂の檄に部員達が更に大きな叫びで応える。自らを律すように。
爆音のヘリコプターの下、不気味なコンクリートの建造物から数十人が外に出る。それを見計らったかの如く操縦手はハイドラ70ロケットを発射。ジェットの様な音が出たかと思う間にロケットは集団に着弾し、一撃で20人程吹き飛ばした。
ヘリコプターは徐々に降下し、「ロープ投げます!」伊勢鈴菜が座席を立ち、クライミングロープを開けた扉から建物の屋上に向け垂らす。準備は完了した。
女達が立ち上がった。鈴菜からロープを掴み、中腰姿勢に。鈴菜が爆音に負けないよう、叫ぶ。
「出撃準備完了!降下します!」
船坂は静かに頷き、次は本心からゆっくりと笑みを浮かべた。
そして、命令を下す。
「ヴァルハラに送ってやれ!出撃!!」
作者遅漏、そして優柔不断の為前回から5ヶ月もたっています
次回はもっと早くします
専門用語は別途解説