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斑鳩の柩 - イカルガのクルス -  作者: Code-Alice/コードアリス
第壱話: 亡霊 - Ghost -
2/8

シーン1

 月の裏側。ダイダロスと名付けられた巨大クレーターにて。

『湾内ハッチを閉鎖、ナサーティアのドック入りを確認。――各員は損傷個所の修復を優先し、改装プランに基づいた作業を実地せよ』

 宇宙服に身を包んだ工兵が地下軍港内を行き交い、岩肌から伸びた連絡通路がナサーティアへと接続されるさなか……軍の制服へと着替え終えたクルスは、ショートボブの黒髪を肩先に更衣室から足を踏み出す。

「クルス少尉」

 されど艦内通路で待ち受けていた長身の、同年代の少女の姿に瞠目し、

「キャシー・アイズマン少尉……」

「いったい、どういうつもりだい?」

 ブロンドのポニーを揺らしたキャシーは、クルスの胸倉を掴み壁へと叩き付ける。

「なにを……」

「あんたの母艦はあの海で沈んだ。しんがりを務めたダリル大尉の連隊も全滅した。……なのに、どうしてあんただけが戻ってこれた?」

「……」

「あたしは知っている。あんたがずっと逃げ回っていたことを。――デブリの陰に隠れ震えていたことを!」

 顏をうつむけたクルスに、だがキャシーは青い瞳を燃やし、

「あんたは仲間を見殺しにした臆病者――」

 エメラルド色の瞳に怯えが浮かぶ中、なおも責めたてようとするが、

「ヒルデリカ……」

 いつのまにか通路にいた十四歳の少女の姿に言葉を失う。

(ヒルデリカ・レオンハート……)

 戦女神(ヴァルキュリア)とも称えられる、地球連合軍最強のパイロット。

 感情の読めぬ赤の瞳が二人をじっと見つめ……キャシーは「行けよ」と舌打ちし、肩を落としたクルスは出口へと向かう。

 そんなクルスの後ろ姿を見つめながら、

「気になるの? 貴方のライバルのことが」

 ヒルデリカは腰元まである銀髪を揺らめかせ、

「ライバル? あんな臆病者の嬢ちゃんをライバルだって? ――はん、サイボーグにもつまらないジョークが言えたなんてね」

 鼻を鳴らしたキャシーは、小柄な少女へと矛先を向けるが……。

「彼女は旧式のレイヴンに乗り、三体の異星体に追われながらも生き延びた」

「……」

「貴方に、同じことができるの?」

 緋色の義眼にしずかに問われ……感情を乗せた拳を壁にその場を後にした。


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