4-(3) 第二回トートゥゾネ戦(1/2)
*あけましておめでとうございます。本年もよろしくおねがいします
「なにとびきりの美人が瑞鶴に現れた?」
「ええ、義成さん。とっても綺麗なホワイトブロンドのツインテールさん。それだけでも目を引くのにすごくボインだそうです」
「ボインって……」
「そのホワイトブロンドさんは、派手ーな秘書官の制服着て、肩で風を切って歩いてたそうです。艦内でちょっとした噂になってますよ」
いま、特命係の参月義成と、その部下の王仕火水風は、艦内のカフェで休憩中。火水風の前には、白い丸餅が浮かぶぜんざいが、ゆらゆらと湯気を立てている。なお、義成の前にはショートケーキだ。
「ああ、秘書官か。天儀総司令が、トートゥゾネの戦いで瑞鶴の秘書官たちを全員クビにしたからな。その後任だろう。六川官房長が手配するといっていた」
「義成さん?」
「なんだ火水風。そんな怖い顔して餅を頬張って、いつもみたい笑顔で食べたらいいじゃないか」
「なんだじゃありません。秘書官ですよ秘書官? つまり、そのホワイトブロンドの美人秘書官は、天儀総司令の横について仕事するってことで、義成さんとも近くで仕事するってことです。美人が近くにいるからって、鼻の下とか伸ばさないでくださいよ。なんでもその人ちょっと変らしいですし」
「変?」
「ええ、会う人会う人に、〝一緒の船ですね。戦友として連絡先を交換しましょう〟ってニコニコしながらいってくるらしいんです」
「それは変わっているな」
「義成さんたら、とぼけちゃって。私、義成さんが喜んで連絡先交換しちゃう姿が目に浮かびますよ。浮かれて食事とかに誘っちゃダメですからね」
「なんて想像たくましい……。だが、懇親は必要だろ。秘書官といえば総司令官の側近だ。同じく側近の俺は、新任の秘書官と良好な関係が必要だ。だが、そうか。食事に誘うか。ありかもしれないな」
「ちょっと義成さん!」
それから一時間後、たっぷり火水風からお小言をくらった俺の目前には、
「主計部秘書課の鹿島容子です。階級は、ウフフ。これでも中佐なんですよ」
といって噂のホワイトブロンドが握手の手を差し出してきていた。
総司令官室で、差し出された手を握り返す俺は緊張気味。自己紹介する俺の声は少し固いものだったろう。なぜなら鹿島秘書官は、可愛いと美人を兼ね備えた花のような女性。しかも、とても人なつっこいときている。俺は握手をしつつ思わずほおけてしまった。
「あら、どうしたんですか義成特命?」
「いえ、すみません。こんな綺麗な女性がくるとは思わなくて」
「あらそうなですか。主計部は計算ばかりのジミーな裏方担当。根暗のガリ勉メガネくるとでも思ってましたか」
「いえ、そんな!」
「うふふ、今どきの主計部。とくに秘書課は華やかなんですよ」
鹿島秘書官は、笑みをたやさず物腰は柔らか。そんな彼女の装いは、大きな真っ赤なリボンタイプのネクタイが栄える秘書課専用の白い軍服。有名デザイナーに発注したこの制服は、軍内の可愛いい制服ラキングではつねに上位。この制服のおかげで、主計部秘書課への応募はグンと増えたという。
「鹿島には主計部長をやってもらうことになっている」
この天儀総司令の言葉に、
「主計部長!?」
と俺は驚いた。国軍旗艦の主計部長ともなれば、イコールで麾下の艦艇のすべての主計の責任者だ。こんなに若くて可愛い人が信じられない。というか俺より年下に見える。
「なにを驚いている義成。鹿島はこう見えても中佐だぞ。お前は本当に女性の外見だけしか見ないな」
「そんな事はありませんが」
「鹿島はな。ヌナニア軍内では2人といない優秀な主計能力の持ち主だ。義成お前も学ぶことが多いだろう」
驚く俺に、鹿島秘書官は、そうなんですよ、と微笑みかけてきた。嫌味じゃないし、やはり可愛い。そして鹿島秘書官は、天儀総司令へ向き直って言葉を継いだ。
「うふふ、天儀総司令。いつこの鹿島をお呼びになるか、いまかいまかと待っていました。ぜーんぜん呼んでくれないんで、もう勝手にきちゃおうかと思ってたぐらいなんですから」
「こっちも着任早々に、トートゥゾネで戦いが始まってドタバタしていたし、鹿島お前は、軍経理局の主計室の室長になってしまっていたからな。引き抜くのが難しかったんだよ。無駄に出世しやがって。お前をここに呼ぶために、六川軍官房長にかなり骨を折ってもらった」
「え、鹿島秘書官は、経理局の主計室長だったんですか!?」
「義成なにを驚いている。彼女はそれほどに優秀なんだ。いい加減外見で判断するな」
「いえ、自分が驚いているのはそこでなく、これは実質降格では……」
そう。主計室長は、経理局の実質ナンバーツーだ。ゆくゆくは主計総監間違いなしのポスト。とても国軍旗艦の主計部長では釣り合わない。国軍旗艦の主計部長自体は現場の要職だが、経理局本部の主計室長のほうが圧倒的に格上だ。
「大丈夫ですよ義成特命。私断然こっちのほうがいいですから!」
鹿島秘書官は、俺に勢い込んでいってきた。この瞬間俺はわかった。この人は、かなりの変わり者だと。
「本人がこういっている問題ない」
この天儀総司令の言葉に、鹿島秘書官は、
「へっちゃらですよ!」
と遊園地に到着したばかりの子供のようなはしゃぎようでいった。
――めちゃくちゃ浮かれているじゃないか。
大丈夫なのだろうか。いま、俺の目に映る鹿島秘書官は、まさに戦場の英雄譚に憧れる新兵。現場の過酷な現実など夢にも思わず、ひたすら戦場に立てば英雄になれると思っているような。というかむしろこの人とても楽しそうだぞ……。
「義成、浮かれているように見えるが問題ない。これが鹿島の平常運転だ」
「そ、そうですか。でも少し不安が。実戦をしらなければ現場では面食らうことも多いでしょうし」
俺の引き気味の言葉に、鹿島秘書官が、
「いえ! そんなことはありません!」
そう詰め寄っていってきた。あまりの迫力に、俺は思わず後退った。
「私ってこうみてもバトルサポーターなんて呼ばれて現場の軍人さんたち間でもちょっとした有名人なんですよ」
思わず俺は、
――本当ですか?
というように天儀総司令を見てしまった。
「本当だ。鹿島は、本格的な実戦を経験ずみだ。以前俺の部隊で秘書官やってもらっていたんだ。こう見えて彼女は、義成お前より戦場での経験は多い」
「信じられない」
「信じられないが、そうだ。そして優秀だ」
まだ半信半疑の俺に、鹿島秘書官は悪い気を覚えたでもなく、
「うふふ、わからないことがあったら何でも頼ってくださいね義成特命」
俺にそう残して総司令官室をでていった。なんでも今日着任した主計・秘書官系の兵員は鹿島秘書官だけではなく、その部下も着任してきているとかで、鹿島秘書官は彼らと瑞鶴主計室で顔合わせやら打ち合わせやらがあるらしい。天儀総司令も、あとで主計室に自ら赴いて彼らの挨拶をうけることになった。
鹿島秘書官、いや、心のなかで呼ぶときぐらい鹿島さんでいいか。鹿島さんが、でていってすぐに天儀総司令が俺に話しかけてきた。
「義成。これでお前は俺の秘書官まがいの仕事から開放されるわけだが」
そうだった。俺は秘書官がいなくなってしまった瑞鶴で、ずっと秘書官の役割をこなしていた。とにかく秘書官の仕事は、書類の手続きとか事務系の雑務が多くて非常に忙しい。場合によっては弾丸一発撃つのにも許可申請が必要だ。教派で俺は、特命係と秘書官の両立で大変だったのだが、これで開放されるわけか。
「義成。作戦関連書類の取り扱いや、手続きやらなんやらは、引き続きお前がやれ」
「はい。ですが俺は問題ありませんが、俺が秘書官の領分を侵すことになりますので、鹿島秘書官は不満に思いませんかね」
「大丈夫だ。鹿島には俺から伝える」
「そうですか」
「いいか義成。作戦関連の書類は、絶対に鹿島に指一本触れさせるなよ」
くどく念押ししてくる天儀総司令。俺はこのとき、鹿島さんは実戦経験ありといってもやはり裏方。作戦書などの取り扱いは不安があるとか。天儀総司令は作戦関連の書類にかぎってはエリート士官教育をうけた俺に任せたいのかもしれないとか、そんな事を考えただけだった。
それに鹿島さんはああいった可愛らしい感じの人だ。悪いがちょっとおっちょこちょいな面もありそうだ。作戦関連の書類は、兵員たちの生死にダイレクトに影響するので、天儀総司令は、鹿島さんにその手の書類を触らせるには不安があるのかもしれない。
翌日――。
俺は久しぶりに瑞鶴ブリッジの総司令部区画に入っていた。もちろん理由は天儀総司令に呼びだされたから。内々のしらせでは、
――どうも戦うらしい。
いまの状況は、天儀総司令が直率する機動艦隊サクシオンの編成があらかた終わり、艦の集結も終了。もちろん兵員たちは休暇を終え各艦に戻ってきている。先行で集結していた艦艇では、サクシオンとしての訓練もとっくに開始されている。そんななか鹿島さんたち秘書官も着任してきた。ここで一つサクシオンで、作戦をやろうということになったらしい。
そして天儀総司令は、俺が敬礼し挨拶すると、俺の予想通りの言葉を開始した。
「新生サクシオンは、ほぼ集結を完了した。しかも一昨日、大東提督から、またもトートゥゾネ方面の敵の動きの活発化がつたえられてきた。総参謀部で、対応の作戦が早急に組まれたが、それをどの艦隊がやるかというのが問題になった」
早急に作戦が組まれ、と天儀総司令はいったが、今回の場合はすでに、敵がこうしてきたら――、という作戦書が作られていて、それを状況に合わせて落とし込みをかけただけだ。つまりは事前準備していた作戦に修正をかけただけ。それでも数日で作戦書を書き上げる総参謀部はすごいが、とにかく毎回こういったやり方をするわけじゃないが、ベターな戦い方の一つだ。
「攻撃のために動いている敵は、太聖銀河帝国軍の特別戦力だ。いま、ヌナニア軍で状況的にすぐに動けるのは、俺の率いるサクシオンだけ。出来たばかりだが、サクシオンが、このトートゥゾネ方面の作戦を受け持つこととなった。チームワークの醸成にもいいだろう」
「迎撃作戦ですね」
と俺は天儀総司令が、俺に特別に見せてくれた。作戦書に目をとおしながら口にした。
「ああ、だが、俺はこれをただの迎撃作戦で終わらせるつもりはない。この作戦を足がかりに、次々と新たな作戦を展開していきたいと俺は考えている。これは重要な戦いだ。くれぐれも奮起してくれよ義成」
「はい!」
「じゃあ、30分後に作戦会議だ。お前もよく作戦に目を通しておけ」
会議はつつがなく終了。サクシオンは3日後に出発となった。なお、3日間で何度も作戦会議をおこない調整と作戦のつめがおこなわれる。
俺が忙しいのは、これからだ。総参謀部から送られてきた作戦書を、現場で落とし込み、その落とし込みがかけられた作戦書の最終チェックは俺。そして作戦実行の許可願いも俺が作る。作戦許可願いは、データのものと紙のもの二種類。紙のものは、艦隊控えと提出するもの、そして許可印が押されて返ってくるものの三つだ。
――ここから2日間は、まともに寝られないかもな。
本来こういった書類の作成と申請は、瑞鶴主計部の秘書官たちがやるのだが、サクシオンでは天儀総司令が、俺にやってくれと特別に命令しているので俺の仕事だ。
特命係室では、俺の孤独な戦いが始まった。部下の火水風や鬼美笑は、それぞれ電子戦科と情報部の仕事が忙しく、ほとんど手伝ってもらえないのだ。ひたすら書類との格闘。以前提出した書類と照らし合わせ様式があっているか確認したりと、俺も若干この手の作業には不慣れなところがあるので時間がかかる。
出発日に申請はできないので、書類作りの期限は2日。
1日目は全体会議の結果が出ないととりかかれないので、1日目の会議が全部終了してから。2日目の午後15時には提出しなければならないので、俺に与えられた実質の24時間程度。
だが、なんとか14時間でほぼ形になり、3時間の仮眠を取って再び作業を開始。
仮眠後に仕事を開始してしばらくしてから、
――あのー?
と鹿島さんがホワイトブロンドのツインテールを揺らしながら、ひょっこり現れた。
「大変ですね」
そういって俺に、お茶を汲んでくれる彼女はまさに天使。癒やしだ。可愛い美人。人当たりもいい。最高だ。俺は天儀総司令が、彼女を得に秘書官にと望んだ理由がわかったきがした。悪いが天儀総司令だって男。美人のほうがやる気もでて仕事も捗るのは当たり前だ。もちろん能力も重要だがな。そっちのほうも問題ないときてる。なにせこの若さで経理局本部の主計室長だ。
「ええ、ですがなんとか時間までに終わりますよ」
「そうですかよかった。本来私たちの仕事なのにごめんなさいです」
「いえ、いいんです。勉強になりますし、天儀総司令もそのつもりで俺に命じてくれてるみたいです」
俺は適当にはぐらかした。俺は鹿島さんの仕事をとってしまっている形だし、天儀総司令が、鹿島さんがミスすると不安だから俺に任している可能性があるだなんてさすがにいえない。
「手伝いましょうか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうですか……」
露骨にしょんぼりしていう鹿島さんに、
「いえ、俺は頑ななところがあるんです。ここまできたら一人でやり抜きたい。わがままですみません」
といって応じた。俺は、もちろん天儀総司令の、
――鹿島に作戦書類を触らせるな
という念押しを忘れてはいない。本来ならめちゃくちゃ手伝って欲しいがな。だって、これって本来は秘書官の仕事だろ。しかも鹿島さんは、若くして主計部で室長になるまでの人。絶対にこの手の手続きとか慣れているはずだ。
「いえいえ、そうことなら。ここで応援してますね。お茶とか欲しかったら遠慮なくいってください」
「はい。助かります」
だが、鹿島さんは俺の横に座って、
――チラ、チラ。
とめちゃくちゃ見てくる。鹿島さんは、ソワソワして、体全体から私もやりたいオーラ全開。くそ、すごく気になって仕事がはかどらない。なんだこれは!
というか天儀総司令は、なんで鹿島さんに、作戦書類を触らせたくないんだ? ……記入ミスされたら困るぐらいしか思い当たらないが、それならあとからしっかりとチェックすれば問題ないわけだ……。
「鹿島さんは、作戦許可申請って作ったことありますよね」
と俺は書類から目を離さずに質問した。
「ええ、もちろんです! 艦上勤務したんですから。しかも私って、これでもミリオタで歴史オタクで、自分で作戦とか書いて提出したりもしてるんですよ!」
俺はちょっと牽制のつもりで質問しただけなのに、ものすごい勢いで返事されて驚いた。ミリオタとか歴史オタクでとか必要ない情報だろ。なぜか知らないが、この人はどうも、とても作戦許可申請作りという地味な仕事を手伝いたいらしい。
――やる気はやはりある。
そして経験もある。やはり、懸念されるのはミスか。判子の押し間違え、記入漏れ、誤字脱字。だが、ミスならやなり俺があとからしっかりとチェックすればいい。俺は試しに、鹿島さんへ一枚書類を差し出した。
「やっていんですか!」
と鹿島さんの表情はパアっと明るなった。あまりに喜ぶものだから俺は少し引いたが、とにかく物は試しだ。差しだした一枚は、ある程度知識がないと完成できないものだ。
――どの程度の腕前なのか。ミスだらけだったりしたら笑えないな。
そんなことを思いながら、俺が仕事をこなしていると、
「はい。できましたよ」
と書類が返ってきた。ありえないぐらい早い。ものの10分だ。手書きとうのもあって俺なら30分以上かかる。
「間違っていませんかねぇ」
「いや、これは完璧だ。字も綺麗だし俺なんかよりよほど出来てる」
「えへへ、これでも歴戦の秘書官ですからね」
「失礼しました」
「で、あのー……」
と鹿島さんが残っている手を付けていない書類をチラチラ見てきた。それもやっていいかってことか……。俺は、どうぞ、といって簡単だが記入量の多いものを差しだした。
――できたものをすぐに俺がチェックすればいい。
そう思った。
だが、鹿島さんの仕事のペースが早く。
「ハイ、ハイ、ハイこれも出来ました」
と次々と手渡してくるので、俺はほぼチェック専門に……。しかも出来たものはノーミス。完璧。書き損じを直した形跡もない。
――なぜ天儀総司令は……
と俺のなかの疑問はますます深まった。どう考えても鹿島さんに、やらせたらいい。天儀総司令は、義成お前の勉強になるからしっかり申請書を作れ、だなんて一言もいわなかったし、におわせてもいなかった。正確な理由は不明だが間違いなく、
――鹿島にやらせたくないからお前がやれ。
というのが、俺がこの作戦許可申請を作っている理由だ。だが、いま、俺が鹿島さんに、申請書を作ってもらった感じだと、鹿島さんに作戦許可申請を作らせたくない理由がまったくわからない。彼女は完璧で、俺より上手で、しかも可愛い美人ときている。天儀総司令は、この人のなにが不満なんだろうか、とすら俺は思う。
そんなときに俺の携帯端末が鳴った。呼び出しは火水風だ。通話にでると、
『義成さん大変です!』
から始まったのは、艦内トラブル。ようは喧嘩だ。火水風が食堂で食事していると横で喧嘩が始まったらしい。ちょうど軍警が訓練で出払っていて、誰も対応できる人間がいないらしく、困った火水風は俺にかけてきたというわけだ。……喧嘩の仲裁。そう。特命係は、悲しいかな中半雑用係。こういった仕事もままあった。
「すみません。鹿島さん。あ、いえ、鹿島秘書官」
「鹿島さんでいいですよ。私も義成さんって呼んじゃいますから。ところでどうしたんですか血相変えて。着信って緊急対応的な大変なことだったですか?」
「ええ、喧嘩です。しかも乱闘になりかけてるとかで」
「大変じゃないですか」
「ええ、ですが……」
「大丈夫。作戦許可申請は私が作っといちゃいますから」
――大丈夫だろう。
と俺は思った。あとから俺がチェックすればいいしなとも考えた。
「すみません。お願いします。多分時間がかかる。ここで抜けると15時までの申請に間に合わない」
「任せてください。完璧に終わらせておきますから」
「すみません助かります」
「あ、申請までしといちゃいましょうか?」
「え、できるんですか!?」
「ええ、秘書官ですよ。なんどもやりましたしね」
「では、それもお願いします!」
「はーい。任せてください」
俺は駆けだした。喧嘩が起きている食堂に向かう最中、俺は、
――あ、申請されたら間違いのチェックができない。
と気づいたが、鹿島さんなら大丈夫だろうと思い。食堂に到着するころにはすっかりその事は忘れてしまっていた。




