表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過去作品(更新停止)   作者: 遊観吟詠
ここから最新の改稿(9/20~9/21改稿分)
39/105

2-(19) ポイント・アッツ

 ――ポイント・アッツ

 名もなき交戦ポイントは、こう名付けられた。

 李飛龍りひりゅうが死守し、廉武忠れんぶちゅうが退けられた宙域の名は、天儀てんぎ総司令の一言で決定した。

 

 そう。李飛龍とその艦隊は生きていた。むしろ勝った。いや、勝ったのか? 艦隊損耗率45%。軍隊は3割の戦力を失えば全滅判定だ。なぜなら組織的な抵抗を継続することが難しくなるからだ。部隊として機能しないのでは、戦力にカウントできない。

 だが、李飛龍は、大言壮語たいげんそうごを実現した。二倍の敵を押し留め敗北することがなかった。

 

 そんな奇跡の大勝利あとに開かれたのが、報告会と題した祝勝会。だが、いま、俺の目前で展開されている光景は、勝利を祝うなんて雰囲気は少しもない。

 ここは国軍旗艦瑞鶴こくぐんきかんずいかくのなかでも絨毯張りの部屋で一番広い部屋。

 一通りの戦闘後の処理が終わると天儀総司令は、ここに李飛龍と、その艦隊の幹部達を招いたのだが……。

 

「遅いぞ。たわけ者が――!」


 部屋に姿を現した李飛龍艦隊の幹部達から発生られたのは、敵意に満ちたこの一声だった。

 それからが凄まじい。十二人ほどの李飛龍艦隊ご一行。全員が、天儀総司令と同じ旧グランダ軍で、全員が皇統派こうどうは。そんな十二人が、一気に奥の席に座する天儀総司令に詰めより囲んで、罵詈雑言を浴びせ始めたのだ。十二人の中でも四人が中核で、さらにその中でも老将という形容詞がピッタリな二人が急先鋒だ。


 俺を含め総司令部側の面々は、予想外の事態に驚くことしかできなかった。なお、六川軍官房長は相変わらずの冷淡とすら思える無表情で、星守副官房は苦い顔で黙り込んで、この異常な状況を静観。


 天儀総司令といえば、目をつぶって、ただ状況に耐えていた。

 俺は、取り囲んだ彼らが天儀総司令を小突いたりしないか気が気じゃなかった。それほどに彼らの怒りは凄まじい。

 李飛龍艦隊一行は、十分程だろうか、ひたすらわめき散らすと気がすんだのか、やっと各々の席についた。

 六川軍官房長が、起立と敬礼の号令をかけ会は始まったのだが……。


「総司令官に置かれては、いまさらなにをしにきたのか」

 と、乱暴な挙手から勝手に発言したのは、天儀総司令を糾弾していた急先鋒の老人二人のうちの一人で六十代中頃の坂龍一さかりゅういち提督。

 

 ヌナニア星系軍では、大佐クラス以上の退役軍人が、再招集されたときに〝提督〟の称号を与えている。星系軍大なりといえどもヌナニア軍はとにかく兵力が少ない。もちろん太聖銀河帝国軍よりだ。士官クラスも下士官クラスもすべての人数が太聖側を下回っている。

 軍の人事局は、旧軍の退役軍人に片っ端から声をかけ、士官クラスには七十代まで声をかけたらしい。こうなると最早人を選ばずだな……。


「なにしにといわれても、そちらから敵の大攻勢の予兆のしらせをうけ直ちに兵を率いて――」

 という言葉を天儀総司令が終える前に、坂提督は遮って発言を開始した。


「我らは単独で勝てた。この援軍は時宜じぎを逸したどころか、むしろ我が艦隊の邪魔をなした。総司令官におかれては、完璧な勝利を霧散させた責任をどうとるおつもりか?」


 ――単独で勝てた。

 とは意味がわからないだろう。説明すると、ときは少しさかのぼって、総司令部機動部隊サクシオンに、先行していた偵察部隊から送られてきた映像が送られてきた。

 

 天儀総司令は、この映像を見て、

「トラス陣形は成功した。これより世間は、李飛龍を知ることになろうだろう」

 と宣言した。予定では、このまま俺達の総司令部機動部隊サクシオンは、交戦中の李飛龍の艦隊と廉武忠の艦隊に間髪入れずに突っ込むはずだ。

 ――このまま戦闘か。

 と誰もが思った。だが、そうはならなかった。敵の軍団司令長官である廉武忠は優秀だった。総司令部機動部隊サクシオンが、ポイント・アッツにその影を見せた瞬間に、李飛龍艦隊への攻撃を切り上げ撤収開始。廉武忠の李飛龍艦隊への攻撃は、一方的だったのにだ。廉武忠は、李飛龍艦隊を叩き潰してからとか、李飛龍艦隊と援軍もろとも叩くとか、そんな都合のいいことは考えず、すぐさまポイント・アッツを去ってしまったのだ。

 

 天儀総司令の目論見は完全に外れたといっていい。天儀総司令が望み、俺達が恐れた大戦闘は起きなかったのだ。


「李飛龍艦隊と交戦中の敵に突っ込めば必ず勝てる」

 というのが天儀総司令持論であり勝算だったと思えば、天儀総司令は戦う前に廉武忠に……。

 

「あしらわれた。とお考えになりませんか」

 と発言したのは、七三分けの若い士官。坂本負滅さかもとふめつ、本名は鏡也きょうや。二等少将。黒縁メガネのしたに切れ長の目。落ち着いた雰囲気は見るからに参謀といった風格。俺も彼についてはよくしっている。ヌナニア軍において空母運用のスペシャリストといわれている有名な男だ。


「総司令閣下が、余計なことをしなければ廉武忠は自滅した。廉武忠の計画が、短期決戦にあったのは、戦端が開かれたときの勢いから見て明白です。二時間から三時間で勝つ気だった。だが、その目論見は外れた。総司令官閣下が、遅れて戦場に登場した時点で、すでに五時間以上経過していた。貴方が現れても現れなくても廉武忠の攻撃は、すでに失敗していたのです」

 

 坂本少将が、ここで一旦言葉を切り室内を見渡してから言葉を継いだ。


「あのまま廉武忠が、攻撃を継続していたらどうだったか? 戦闘に深入りしすぎた廉武忠は、我々の逆襲をうけ壊滅していたでしょう。あのまま戦っていれば我々の勝利だった。それを、あなたは余計なことをして台無しにした」


 ――そんなわけはない!

 と俺は心がカッとなった。李飛龍艦隊の損耗率は45%だぞ。しかも敵の廉武忠は二倍。しかも廉武忠側の損失は、まだ正確なところはわからないが、10%を上回ることはないはずだ。あのまま単独で戦い続ければ間違いなく勝てたというのが皇統派の言い分らしいが、ありえないことだ。総司令部機動部隊サクシオンの登場がなければ、李飛龍艦隊はあと数時間もせずに壊滅状態になり、降伏か死かの究極の選択になっただけだ。

 

 俺は立ちあがって発言しようとしたが、横に座っている天儀総司令が俺のベルトを掴んでそれを許さなかった。凄まじい力だ。腰が椅子に縫い付けられようになって立てなかった。


 天儀総司令は、言葉もなく俺を見もしなかったが、

 ――バカ野郎よせ!

 という強烈な感情は何故かつたわってきた。仕方ない。俺は、不満がなるべく表情にでないように注意して自重した。

 

 坂本少将が発言を終えて着席すると、それと入れ替わるように室内には、

「廉武忠の乗る旗艦を撃破して勝てたのに……。俺達は、この戦争で守勢一方。いや、負けっぱなしに近い状態だった。そう思えば、この勝利の意味は大きかったはずです……。残念です」

 という悔しさをにじませた声が響いた。坂本少将と同期の山本・M・リフレッドだ。四等少将。金髪で整った顔立ちだが、身にまとうのは異様な空気。残念な二枚目という感じだな。


 場は異常な空間となった。総司令部側の面々は、李飛龍艦隊側、いや、トートゥゾネ戦線総監部せんせんそうかんぶ側といったほうがより正確か。彼らの態度に困惑するばかりだし、トートゥゾネ戦線総監部側は、怒り心頭といった態度を崩さない。


 六川軍官房長もなにもいわない。星守副官房も同じく。俺は二人にもいきどおりを感じるが、なにより天儀総司令が、なにもいわないのが悪い。トートゥゾネの救援を決めたときの天儀総司令はどこへいってしまったのか。救援するか見捨てるか、戦線を下げるかで激論していた総司令部の作戦会議を登場するだけで鎮めてしまったあの威厳は、いまはどこにあるんだ。

 

 そしてここで、

「諸将の無念は最もであるが、こやつの粗相は、いまに始まったことではない。出世のためには手段を選ばず恥も外聞もなくみかどに取り入った。天儀。お主は、戦いは上手かろう。じゃがな。何でもかんでも自分でやらんとおさまらないその気性は、総司令官のうつわではない」

 と、この部屋で一番重い雰囲気を放っている老人が口を開いた。

 発言したのは、大東渚だいとうなぎさ提督。なんと七十代。カイゼル髭に真っ白な総髪。見るからに保守派軍人。そう提督。このご老人も再招集組だ。

 

 ――皇統派こうどうはのドン。

 俺はゴクリと生唾を飲んだ。天儀総司令いわく、パーティー感覚でクーデタを計画しかねないヌナニア星系軍内で最も危険なグループの首魁だ。

 

 入れ替わるように坂提督が、

「それだ。何故ヌナニア星系軍の総司令官ともあろうものが、最前線にやってきた。戦いにはいろいろな手法がある。だが、総司令官から戦士の気質が抜けんのでは話にならん。そんなに前線で戦いたければ、降格を願いでて適当な戦艦の艦長あたりになったらどうか。それなら自由に戦ってかまわん。戦艦一隻。自分勝手な総司令官には、お似合いの戦力だ」

 と糾弾の声をあげると、トートゥゾネ戦線総監部側から嘲笑が漏れた。そして嘲笑とともに、侮蔑の言葉が吐かれた。

 

 ――成り上がりが。

 ――もとは雑兵だろ。

 ――平民風情が身分をわきまえろ。

 ――恩知らず。

 ――裏切り者め。


 ……どういうことだ。旧グランダ軍のトップまでの登った天儀総司令が、雑兵や成り上がり? 天儀総司令は、士官学校は卒業したが、俺みたいに出世の主流からは、完全に外れていたということだろうか。そういえば皇帝になろうと計画していた皇族を殺したという暗い噂があるぐらいだからな。天儀総司令は、かなり手荒な手法で、出世の糸口を掴んだのかもしれない。それに恩知らず。裏切り者とはどういうことだ?


「そう。忘恩の徒。機会主義者。天儀。わしがお主を許せんのは、帝の思いを裏切ったからじゃ。何故、お主はヌナニア連合の君主に陛下を推さなかった。グランダ、セレニスの連合国家の君主となることは陛下悲願。それをお主は、自分の出世と引き換えなにをした――!」

 

 大東提督の糾弾に、天儀総司令は黙ったままだ。この人らしくないと思う。何故だ。


「天儀お主は、セレニス側と取引して、陛下のヌナニア皇帝への即位の妨害に協力した。背信とはまさにこのこと。陛下に旧グランダ軍を与えられ、陛下の御威光を以て軍を率い、兵は陛下のご命令だからお主の下で戦った。すべては陛下おかげではないか! それをお主は、よくもぬけぬけと裏切れたものじゃなッ!」


 なるほど。おおよそのことは把握できたぞ。天儀総司令は、いまのヌナニア連合が成立するきっかけになった星間戦争の勝利者。この戦争に天儀総司令率いるグランダ帝国が、勝ったことでヌナニア連合が誕生した。そのときにグランダ皇帝が、ヌナニア皇帝に昇格できるように天儀総司令は協力しなかったのだろう。理由は不明だが、とにかく、

 ――グランダ皇帝をヌナニア皇帝にしよう!

 という運動に天儀総司令は参加しなかった。これを皇統派は根に持っている。だが、これはおそく完全な皇統派の逆恨みだ。だって俺達ヌナニアの若者が、

『皇帝』

 と聞いてなにをイメージするか。

 

『古臭い、カビ臭い、時代遅れ、中世か、いや古代かよ、税金の無駄』

 

 いまの若者は、こんな感想しか持たないだろう。この人達が聞いたら卒倒するに違いない。いうまでもないだろうが俺も同じだ。

 

 ――皇帝の親政なんて正気じゃない。

 

 いまのヌナニア連合では、生理的にそう考える者が多いはずだ。いや、事実として多いだろう。現実にグランダ皇帝は、ヌナニア皇帝になれなかったのがなによりの証拠だ。

 

 それに旧セレニス側は、旧グランダの皇帝親政を嫌悪していた。独裁国家でしかないからな。二つの国が一つとなったといってもその実、経済力は圧倒的にセレニス星間連合のほうが上回っていたのだ。いくらグランダが勝ったからといって、国家統合が進む際に旧グランダ側の意見が無条件で通るなんて状況ではとてもなかったのだろう。大体いまのヌナニア連合の首都は、旧セレニスの首都にあたる……。経済の基盤も旧セレニス圏内。

 現状だけ見るとどちらが勝ったのかわからない。旧グランダが、旧セレニスに吸収合併されたのが実態だ。

 

 ……となると、天儀総司令はすごいな。経済力も軍事力も上だった旧セレニス連合を撃破したんだ。どんなミラクルをかましたんだ……。この人がうけた経歴抹殺刑ダムナティオ・メモリアで、まだまだわからなくなってることは多いのだろう。

 

 俺は、そんな凄い人。天儀総司令を見た。

 ――凄いんだからなんとかしてくだい。

 あなたが威厳を発揮すれば、こんな小物共こうどうはなんて一発で黙るでしょ。俺にはそう思える。いや、そのはずだ。どうして天儀総司令は、あなたはだんまりで、いわれるがままなんだ。情けないとしか思えない。

 

 だが、それでも俺は、天儀総司令を期待の目で見ないではいられなかった。この人なら居丈だけな皇統派に、一発ガツンとかましてくれる気がする。瑞鶴で開かれた勉強会で、黒耀中尉を救い。トートゥゾネ行きに反対する総司令部を力強くだがたくみに説得した。それこそあなたが、旧セレニス連合軍の大艦隊を撃破したときに見せた十分の一。いや、百分の一の力でもここで発現させれば、皇統派こいつらはきっと黙る。

 

 俺のそんな願いが通じたのか、これまで黙っていた天儀総司令がついに口を開いた。


「そう、すべては陛下のおかげです。それなのに悲願を成就させる事態に直面してわたくしは至らなかった。それ故に経歴抹殺刑ダムナティオ・メモリアでした。この身は一度業却(ぎょうきゃく)(生前の行いが焼き払われること)したと思います。悪辣な者は、天譴てんけんをうけるべき、いや、うけた。諸将方の仰るとおりです。恥じて言葉もありません」


 残念だった。はっきりいって幻滅した。だって大東渚などの皇統派が、いうことは荒唐無稽で無茶苦茶だ。天儀総司令一人の力で、グランダ皇帝が、ヌナニア皇帝になれるかどうかなんてわからない。いや、無理だ。いくら戦勝国の総軍司令官だからって、力押しで無理強いすることは不可能。国家統合の話は流れて、また戦争なんて事態になりかねない。

 ――あなたはそれを少し言えばいいだけなのに。

 そうすれば大東渚ら皇統派を黙らせられるはずだ。威厳を持って言葉を吐いて、一喝する。それだけで、この場を抑え込めるのに!

 

 ただ、天儀総司令が、あっさり頭をさげてしまったことで室内には微妙な空気が流れた。

 

 皇統派は、天儀総司令が強く反論してくると思っていたようで、いきなり謝られてしまい次の責の言葉がでなかった。天儀総司令を糾弾してやろうという姿勢こそ崩れていないがな。

 

 ここで、コホンと咳払いが響いた。六川軍官房長だ。六川軍官房長は、室内の一同を見渡しながら、

「ところで肝心の李飛龍戦線総監がいらっしゃらないようですが?」

 と、つぶやくように、だがはっきりと聞こえる声でいった。室内が少しざわついた。

 

 そう。この部屋には肝心な人物が、李飛龍が不在だった。

 

 理由は、不明だ。俺が最後に李飛龍の姿を確認したのは、瑞鶴に乗り込んでくるときで、この部屋にいる皇統派の連中と一緒だった。それが何故かここにはいない。まさか迷子? いやありえない。携帯端末を取りだして、地図や案内系のアプリを起動するだけだ。あとは画面の誘導にしたがってこの部屋にたどりつく。大昔は大軍艦のなかで迷うと半ば遭難気分。半日や一日迷子なんて冗談じゃなかったらしいが、軍用宇宙船で迷子は基本的にはありえない。

 

「俺達探してきます」

 とリフレッド少将が、坂本少将を誘うように立ち上がったが、

「いや、待たれよ。私の書生にいかせる」

 と天儀総司令が、これまでになく強い調子で掣肘せいちゅうした。そして俺へ向け、

「義成さっさと李飛龍将軍をさがしてこい。もたもたするな」

 と命じてきた。

 

 書生って俺のことか……。……まあ、側近って意味を洒落ていっただろうな。しかも〝いや、待たれよ〟って時代劇かな? だが、わかる。天儀総司令は、旧グランダ軍のしきたりを、いまだに引きずる皇統派に合わせたんだ。俺を幻滅させただけの発言のときも、この人に、こんなかしこまった殊勝な態度ができるのか、と驚くぐらいまさに昔の皇軍の軍人といった喋り方だった。そもそも天儀総司令は、相手によって一人称も変えるしな。今更か。


 俺は、不信感の色をたっぷりとにじませた目で、天儀総司令を見てから探しにいくことにした。目は口ほどに物を言うだ。皇統派の目の前で天儀総司令に、言葉で助言することは難しい。この人は、基本的に他人の気持ちに鈍感なタイプだと俺は分析しているが、確実に敵意には過剰に反応する性質を持っている。俺の不満たらたらの視線の意味を十分理解するだろう。

 そんな俺に、天儀総司令が耳打ちしてきた。


『いいか義成。可及的速やかに見つけてこい。こいつらをぎょせるのは、いまは飛龍だけだ。好き勝手わめきちらされて、俺は猿の檻の中にいる気分だ。もういい加減かなわん。それに、このままだと総司令部内で、俺の威信が地に落ちる。見てみろ星守が俺を見る目。今まで以上に完全に白けてる』

『よかった。情けないというご自覚はあったんですね。なお、白けた視線を天儀総司令に向けているのは、ここにいる全員だとご忠告しておきます』

『ちくしょうめ。痛いことをいってくれるぜ。だが、いい。そういうのが欲しいから俺はお前を側近にしたんだ。とにかく義成。早く飛龍を見つけてこい。こいつらは飼い主じゃないということをきかん』


 俺が部屋をでようとすると、リフレッド少将が態々部屋の扉を開けてくれた。そして、

「女性と遊んでると思います」

 と耳打ちしてきた。……この人は、皇統派のなかでも少し違うようだ。天儀総司令寄りというか、皇統派にどっぷり浸かってない感じがある。


 部屋をでた俺の背後で、扉が音もなく閉まった。

 ――さてどうしたものか。

 李飛龍の携帯端末の番号を調べて連絡を取る。それが一番いいが、調べるには総司令部に行く必要がある。ここからは少し遠いな。……火水風ひみか鬼美笑きみえ姉に調べさせるのもいいかもしれない。火水風は電子戦科の設備をつかえるし、情報部の鬼美笑きみえ姉なら総司令部内に入れるから俺の代わりに調べてもらうことが可能だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ