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過去作品(更新停止)   作者: 遊観吟詠
第二章 トートゥゾネ
28/105

2-(11) ストラテジスト(下)

「ハハハー! こりゃあいい。どんな総司令官かと呆れてたが、こいつは物分りがよすぎてぶっ飛んでる。いいぜ戦いだ。オレの戦いだ。まったくもってオレの能力の本領は、指揮だってのに、来る日も来る日もクソッタレの勉強会。ほとほと軍首脳部には呆れはててたが、天儀てめえは違うようだな!」


 このとき殆どものがしらなかったが、天儀総司令と軍官房部には、軍政本部という造艦や兵器・戦闘技術の開発が役割の機関から、アクセルを実戦投入するようにきめて強い圧力がかかっていたらしい。あとから考えれば、六川軍官房長や星守副官房が、天儀総司令の決定に、とくに異論を唱えなかったことを考えると、これは事実だろう。

 

 だが、このときの俺は、そんなことは知る由もない。大反対の大反対だ。それでも天儀総司令は、作戦会議を終えようとしたが、俺は立ちはだかった。

 

「……まだ議題は残っています。アクセルには星系軍に一番大切なものが欠けています。良心と正義というね」


 アクセルの友軍撃ちを公然と認めるのは、倫理を重んずる星系軍としては絶対に無視できない。この点を盾に取れば、天儀総司令も作戦会議を終わらせられない。……はずだ。

 

 頑なな俺に、天儀総司令は、

「そうだな。まだ議題が残っていた」

 といって理解を示してくれた。よかった。やっぱりこの人は、話せばわかる人だ。自分が無茶を思想になったら止めてくれってお願いしてくるような人だしな。助言する時間さえあれば、話を聞いてくれるんだ。


「諸君。私は、戦いに臨んで戦略参謀ストラテジストを任命し忘れていた。私としては、この役目を将来有望な参月義成特命にその任を授けたいが、諸君はどう思う?」


 天儀総司令からでた言葉は、俺の思っていたものと大きく違ったが、俺の願っていたものそのものだった。

 

 ――こ、これは!?

 

 わかりやすく露骨な懐柔だ。だが、俺の心は揺れに揺れていた。

 

 戦略参謀ストラテジスト。それは誰もが憧れるポジション。古代でいえば軍師。二十世紀頃でいえば作戦参謀。戦闘中に司令官に、戦術を助言し、適切な戦闘法を伝授する。場合によっては、最大の勝利の立役者にして、司令官を操って勝つという真の司令官……! こうもわかりやすく輝かしい役割はない。が、繰り返しになるが、これはやっぱり露骨な懐柔だ。


「わかったよ義成。しょうがない。お前は戦略参謀ストラテジストだ。これでアクセルの先遣部隊トップユニット司令を認めろ」

 という天儀総司令の下心が透けて見えすぎてる。


 なお、戦略参謀ストラテジストといっても幅広い。戦争全体の趨勢に関わることへの助言をおこなうこともありうるが、今回の俺の役割は戦術的なレベルの助言にとどまるだろう。ミニマムな規模の戦闘での助言者だ。だが、戦術レベル(ミニマム)だがミニマムじゃない。なにせ艦隊決戦。戦闘の単位で、これ以上大きな規模の戦いはない。

 

 なお、任命しないこともある役割だが、慣例的に統合参謀本部からの人員が任命されるものだ。

 

 ヌナニア統合参謀本部。議長は、星系軍トップで、つまり天儀総司令だが、これはお飾りだ。実質この組織のトップは、三人の副議長から選出される議長代理だ。議長代理は、首相にも戦争についての助言をおこなうことのあるきわめて高い立場であり、統合参謀本部は、軍官房部、ヌナニア軍中央電子戦司令局と並ぶ軍三部の一角で、軍内で大きな権力を有している。

 

 そう。戦略参謀ストラテジストは、そんな統合参謀本部の人員が任命されるのが慣例。そして繰り返すが、このポジションはきわめておいしい! 務めたものは大出世間違いなし。そして、ここには統合参謀本部が幾人かいて、そのなかでもうるさい三人がいる。アクセル、そして花ノ美(かのえ)・タイガーベルとアバノア・S・ジャサクというな!

 

 さっそく花ノ美(かのえ)が挙手して、

「はい! はーい! 発言の許可をお願いします。断固反対! 絶対反対です!」

 と猛烈な反対を開始していた。アバノアだって黙っちゃいない。くそ、こいつら……。

 

「不適合。不適切。不適任! わたくしたちを差し置いて、義成ぃが戦略参謀ストラテジスト!? ありえませんの。ナンセンス。統合参謀本部にしてアヘッドセブンの名を冠する花ノ美(かのえ)お姉さまか、もしくはこのアバノア・S・ジャサクがふさわしいと考えますの!」

「ちょっとアバノア。素直に私だけを推薦しなさいよ!」

 

 アバノアの厚かましさは、ヌナニア星系軍士官学校で一二を争ったが、それをはるかに上回るんじゃないかと思えるのが花ノ美(かのえ)だ。


「アクセルあんたもなんかいいなさいよ!」

「ハ? シんねーよ。オレは戦力もらったから、あとはドーでもいいわ。ア、そうだ四十七番。オレの足引っ張るような真似しやがったらブッコロスから、そのつもりでいろよ!」


 花ノ美(かのえ)やアバノアが断固反対しても天儀総司令は、俺を戦略参謀ストラテジストを任命の考えを変えるつもりはないようだ。大会議室内の空気もそれを容認している。反対の声の音量こそデカかったが、この戦いでの俺の戦略参謀ストラテジスト就任に反対しているのは二人だけ――。


「お、俺は――」

「義成。俺の戦略参謀ストラテジストなんて名誉なことじゃないか。なお俺は、いままで一度しかこいつを任命したことがない。この天儀の戦略参謀ストラテジストとは、それほど特別な地位なんだぞぉ」

 

 だが、俺は――、

「こんな露骨な懐柔にのるわけにはいきません!」

 と大会議室内へ大宣言していた


 なお、大会議室内の面々の表情は、もう会議をいい加減終わらせてくれないのか? というウンザリしたものだった。どうせ天儀総司令は決めたことを変えないのだ。だったら早く戦いの準備に入りたい。なんでこの参月特命は、どーでもいいことにこだわっているんだ。戦略参謀ストラテジストに、任命されたんだしいいだろ。空気を読め。忙しいんだぞ。こんなところだ。だが、俺は譲れなかった。口をぐっと結んで断固拒否だ。


「おーっと、おっと。すまない義成。俺はきみを勘違いさせてしまったようだ」

「勘違いですって? 露骨な取引はない。自分と交渉したいなら、天儀総司令あなたはもう少しやり口を考えるべきです」

「違う違う義成。戦略参謀ストラテジストだぞ?」

「だからなんです。きわめて素晴らしい地位です。アヘッドセブンの花ノ美(かのえ)やアバノアが羨むほどのね!」

「やっぱりお前は勘違いしてるな。戦略参謀ストラテジストは、指揮官のあらゆる選択に助言できるんだぞ」

「そうです。なんて素晴らしい。絶対にやりたい。実質指揮官なんていわれることすらあるね。でも今回はだめです!」

「だったら実質指揮官の戦略参謀ストラテジスト義成は、アクセルに問題行動の兆しを見たら、総司令官天儀にアクセル解任なりの助言をすればいいだろ?」


「あ、え……。たしかにそうかも……?」


 不覚にも俺の心は、このとき完全に堕落坂を転がり始めていた。もともと戦略参謀ストラテジストと聞いて、揺れに揺れていた心だ。楽な選択肢に転げるのは簡単だった。

 

「ほらそうだろー? そして、なんとだ。戦略参謀ストラテジストには、総司令官が助言を無視した場合に解任の決を取る権限まであるぞ!」

「な、なるほど!」

「そうだ。わかったようだな義成。総司令官天儀が、戦略参謀ストラテジスト義成の助言に従わない場合、俺は解任されてしまう」

「つまり、天儀総司令は、俺のいうことを聞かざるを得ない!」

「そうだぞー」

 

 これで俺は、めでたく戦略参謀ストラテジストとなり、アクセルの先遣部隊トップユニット司令を承認した。


 いま思えば俺は、浅はかだった……。解任の議決には、戦略参謀ストラテジスト三人の同意か、ブリッジ内のクルー全員から決を取る必要がある。今回、戦略参謀ストラテジストは俺一人。つまり瑞鶴のブリッジ内の全員へ向けて決を採る必要がある。だが、戦闘に忙しいさなかに総司令官解任の決などに誰も参加なんてしてくれないのなんて、ちょっと考えればわかりそうなものだ。

 

 だいたい瑞鶴は国軍旗艦で、最大クラスの運用宇宙船だ。ブリッジは軽くビルのワンフロワーサイズ。その中にいる人間の数はゆうに二桁後半。よほどの事態にならないかぎり、天儀総司令が俺の意見を聞かないからといって解任など不可能なのだ……。俺が声を必死に張り上げて、天儀総司令の非道を訴えても無視されるだけだろう。天儀総司令は、それを完全にわかっていて俺に色々吹き込んだんだ……。くそ、やれた。


 俺が説得されたことで作戦会議は終了。リモート参加の司令や司令官達の姿は、早々にモニターから消え。大会議室からは慌ただしく幹部達が退去していった。

 

「アクセル。少しでも変なことを考えてみろ。俺はお前を容赦しないぞ」

 

 士官学校の同期生は、固い絆と特別な結束で結ばれている。いつの時代、どこの国でもそうだ。俺達二期生は、確かにお互い対立的で、仲が良かったなんて嘘でもいえないぐらだが、特別な関係なのは間違いない。俺だって、できるなら同期生のアクセルが降格処分をうけるような助言を、天儀総司令にしたくない。だが、譲れないものは譲れない。


「変なことってナニか? エロいことか。そいや、四十七番。テメエはいつも女といるよなァ。だがよ。四六時中脳みそピンクなのはお前だけなんだよ。一緒にすんなハゲ」

「違う! お前は常に正義に反逆的で、良心へ逆行する。今回の戦闘で、そんな真似は許さないということだ」

「アー。ウルセー。敵の待ち伏せをブッコロス前に、テメエを殺して景気づけしてもいいんだがなァ」

 

 アクセルが、ドンッと俺を突き飛ばしてきた。能力を使わなかったようだが、俺は警戒して、あえて反撃せずいなすだけで済ませた。こいつの伸びてきた腕を取って、関節を決めて――。なんて下手に反撃すると、殴り合いになりかねない。……まあ、俺が一方的にやられる構図になりそうだが、本格的な敵との戦闘を目の前にしているのに、それはまずい。俺のほうがこいつより分別があるんだ。

 

「あのな四十七番。戦いなんてのは、勝ちゃあイインだよ。勝ちゃあなァ」


 そんなわけはない。こいつのやりかたはきっと酷い。必要のない犠牲をだすことを好む。緩慢な動きを見せた麾下の艦艇を撃つなんてことは平気でやる。


「そうだ。勝てばなんでもいい」

 と俺達へむけいったのは天儀総司令だ。


「オ、さすが物分りのいい総司令官殿だ。ほらよ四十七番。お前の上司もそういってんだ。勝つ前からケチつけてんじゃネーぞ」

 

 戦場において勝利は万事を解決する。アクセルは強い。きっと勝つだろう。悔しいが認めざるを得ない。いまだって俺は、こいつが勝つこと前提で、

 ――勝っても悪いことをすれば容赦いないぞ。

 と釘を差しているわけだからな。

 

 だが、力を持ったものが倫理的に優れているとはかぎらない。これをしったときが、俺の哲学の始まりだった。ヌナニア星系軍士官学校で最下位だった俺は、ある時期を境に図書館で、戦史系の書物より哲学書ばかり読んでいた。そうしているうちに俺は、ある東洋系哲学に答えを見いだした。

 

 ――心学だ。

 

 人間は生まれながらにして正しいことを知っている。つまり疑問への答えはおのずと心の中に、そなわっているという考え方だ。もとから心の中にあり、知っているのだから、あとはそれを実践するだけ。即ち知行合一ちぎょうごういつ。知っている事と行いを一つとする。

 

 ――他人のことなんだらかどうでもいいだろ?

 ――なんで一々絡んでくるんだ。お前には関係ない。

 ――お前が損するわけじゃない。黙ってろ。

 ――バレなきゃいいのよ。誰も損してないじゃない。

 

 俺はヌナニア星系軍士官学校に入る前から、世間のこういった不真面目さに憤りを感じていた。俺が間違っているのか、周囲が間違っているのか。世の中が多数決だとしたら、俺が間違っている。正しいことをやろう、というのは俺一人だ……。


 だが、俺は間違っていない。不正意義や不誠実に疑問を感じた時点で、

 ――不正を正そう。

 という思った俺は正しいのだ。疑問の余地などない。これ即ち心即理しんそくり

 

 ……だが、俺のこの胸の内のどす黒い感情なんなんだ。アクセルの顔面を、いまにも殴りつけて、こいつを床に這いつくばらせてやりたいという激しい衝動。これは正義とは程遠い感情に思う。正しいことをしているのに、現実が変わらないことへの強烈なフラストレーション――!

 

 そうだ。俺には、アクセルを裁ける力がない。殴り合いの白兵戦でも軍事的能力でも及ばない。こいつを見返せない。せめて指揮官としてアクセルより優秀なら……。いや、立場だ。能力なんて関係ない。こいつより上位のポジションンにつければ、階級が上になれば……。


 立場といえば、天儀総司令ならアクセルに罰を与えることができる。だが、その天儀総司令が、勝てばいい、といってしまっている。正しい裁決をくだすべき人間が、アクセルという不正を見過ごしている。俺は、いま、腹のうちに猛烈な怒りを燃やしていた。

 

「オイオイ。四十七番。ナニ深刻な顔で黙り込んでんだ? ぷるぷる震えてみっともねぇ。いまからモロの最前線に出んのはオレだぞ。てめえは旗艦で総司令官の横でヌクヌクしてるだけだろ。なにビビってんだァ」


 アクセルが、俺の肩をポンポンと叩いてきたが、俺はそれを力いっぱい振り払った。

 ――パーン!

 という音が鳴った。めずらしく俺のアクションが、アクセルに当たった瞬間だった。


「オイ。四十七番。なにもはたくことネーだろ!」

 

 アクセルが、多少驚いたようすでいってきた。こいつは、俺が戦闘前に緊張していると思って肩を叩いてくれたのかもしれない……。だが、俺は自身の短気さを少し呪っても罪悪感まで覚えたくなかった。

 

 俺は、アクセルを睨みつけた。このときの俺は真っ黒い感情に支配されていたと思う……。


「オウ、イイゼ。やろうってんだな。コロス――……」


 アクセルが身構えた。身構えたといってもこいつの構えは、いつも我流だ。形がない。

 いまにも一触即発。

 俺は、今回ばかりは我を忘れていた。噛み付いて、目潰しを食らわしてもこいつを倒す。ナカノで仕込まれたありとあらゆる汚い知恵を動員し、普段は絶対つかわないと決めている汚い手段。それを連続技で叩き込んでやる。いかにアヘッドセブンといっても、こいつに意味不明な特殊能力があるとしても、未知の攻撃に連続して襲われれば絶対に防御は間に合わない。だが、連続技を叩き込むきっかけを掴むには、代償を払う必要がある。俺は致命傷を負ってもアクセルを――。

 

 俺は肩を怒らせ、爪を立て野獣のように身構えた。自分でもこんな構えをするとは驚きだ。だが、自然とでた構えだった。俺は、感情に身を委ねるようにして、目を爛々とさせ犬歯をむきだしてアクセルを鋭く睨んだ。

 

 アクセルはニヤついている。……この笑いが、昔から嫌いだった。すべてを見透かしたようなニヤケ顔。だが、こいつが俺のなにをしっているっていうんだ。今日こそ俺は、こいつを肉片一片残さず殄滅てんめつする。俺が、再起不能なっても断行する。


 だが――。


「それまでだ二人共。なぜ味方同士で戦おうとしてる!」


 そういった天儀総司令が、俺の頬をパーンと叩いた。俺は、頬にチクチクとした痛みを感じたが、その痛さよりむしろ夢見心地となって体がふわふわと揺れたような感覚を覚えた。

 

 俺を引っ叩いた天儀総司令は、続いてアクセルを睨みつけ、

「どんな勝ち方でもいい。だが、勝利の価値をさげるような戦い方をしないものだ。勝って意味がないならなんのために戦うのか。全身全霊で戦って命まで代償にして勝ったのに、後ろ指を差されるのではまったく話にならない。アクセルそこを心得ろ。友軍を背後から撃てるのを自分だけだと思うなよ」

 と強烈に恫喝した。いや、これは威伏だ。アクセルの先遣部隊トップユニットのは以後には、天儀総司令の総司令部機動部隊サクシオン本隊が控えているんだ。


 ――これがグランダの人食い鬼!


 俺もアクセルも強烈に圧倒されていた。この人は、俺達なんかよりはるかにむちゃくちゃかもしれない。そういえば、自分の勝利をぶち壊す人間を天儀は許さない。こんな話を聞いたことがある。

 

 天儀総司令は、アクセルが自身の戦いに邪魔だと考えたら麾下の戦艦に砲撃を命じるだろう。それが通るかは別だし、実際そんな指示ができるとも思えないが、それぐらいの怒りを感じて、その怒りを確実に具現化してぶつけてくる。俺は、そんな恐怖を覚えた。


 アクセルも俺と同じような恐怖を覚えたらしく、こいつにはめずらしく、

「オ、オウ。わかってるぜ。そんな怒んなよ。メンドクセー」

 なんていって大会議室を、そそくさとでていってしまった。


「……すみません。未熟でした。俺は激しい怒りに支配されていた。これは間違いだ」

「暗黒面に落ちたか」

 

 天儀総司令が少しおどけていった。なるほど、暗黒面。うまいことをいう。


「ええ、でも天儀総司令が引き戻してくれましたよ。暗黒の力でね」


 天儀総司令が笑った。

 

「アクセルは寂しがり屋だな。だが、周囲に当たり散らすのは看過できない」

「あいつが寂しがり屋ですか? まさかありえない。孤立を好むような男ですよ」

「……自身の個性さいのうが、他を圧倒していると思っているから孤立するんだよ。いや、あいつはそういう力を持っているということで、孤立しなければならないと何故か決めつけているようだ」

「そうなのですか?」

 

 俺には天儀総司令の言葉がまったくの意外で、だが、なぜかアクセルの心理を突いているような気もした。


「理由はわからんが、なにかあるのだろう」

「……悩みない人間なんていませんからね」


 誰だって辛い。俺だってそうだ。正しいことをしているときにかぎって、邪魔者が立ちふさがる。それが悪だ。あんなアクセルにとっても例外じゃないのかもしれない。

 

「お、おわかってんじゃないか義成。苦悩のない人生はない。多分、アクセルもお前と同じぐらい苦しんでるかもしれんぞ?」

「まさかありえません。あいつは不満に対して終始傲慢です。我慢をしらない」

 

 そうはいったものの俺は、

「だから少しは優しくしてやれ」

 という天儀総司令の言葉には、素直に頷いたのだった。厳しいばかりが正義じゃない。……まあ、アクセルは、その才能からさんざん甘やかされてあの惨状なんだがな。

 

 いまから始まるのはセオリーに則った戦い。待ち伏せに対する進撃だ。先遣部隊トップユニット対して、待ち伏せ部隊のアドバンテージは圧倒的に高い。エンジンを吹かし、電子機器を全開にして進んでくる先遣部隊トップユニットを発見するのは簡単だ。対して、対して待ち伏せ側は静謐をたもって、宇宙の闇に溶け込み、星の瞬きの間に隠れている。

 

 ――撃たせて見つける。

 これが先遣部隊トップユニットの役割だ。先制攻撃の有利はいうまもない。

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