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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
最終章 魔界はいつでも世紀末(ヒャッハー)編
358/359

358

 俺とダルダロス将軍との試合。

 負けた。


 遠距離からの魔法でも『魔素吸収』さえあれば対処できると思ったが、先のファルネーゼ将軍と戦ったとき以上に、狡猾に攻めてきた。


『魔素吸収』できない角度から強襲してくるのだ。

 本人も高速で動くし、魔法も動く。


 結局、頼みの綱の『魔素吸収』は失敗ばかり。

 被弾を浴びていくうちに動けなくなったので、降参した次第だ。


 ああいう戦い方もあるのだと勉強になった。


 一応行動を予測して、武器を斬り落としたりしたんだが、反撃はそこまでだった。

 まあ、国の代表になりたいわけではなかったので、それは良しとする。


 そのうち戦略を練り直して再戦するかもしれない。

 魔法を自由に曲げてくるのに対策してからだが。


 こうして頂上決戦は、ダルダロス将軍の優勝で終わった。

 他国の連中は満足したのだろうか。


 世間的には、メルヴィスが大魔王に復帰した記念の大会だと発表してある。

 大魔王の国の戦力が見られるのだから、満足したのだと思う。


 さてその肝心のメルヴィスだが、最後まで顔を出さなかった。

 人界行きの準備に余念がないのは分かるが、少しは魔界のこと、自分の国のことを気に掛けてもいいのではなかろうか。


 メルヴィスにとって、魔界はヤマトの帰る場としての意味しかないのかもしれない。

 残念なことだ。




「ということで、ゴーラン、頼んだぞ」

「はい」


 そして俺は将軍になった。


 ダルダロスが将軍職を抜けて、この国の代表となった。


 対外的にはメルヴィスの国のままなので、変わったのは俺が昇進したくらいだ。

 負けたのに昇進とは、なんだか解せない。


 そして、誰にも見送られることなく、メルヴィスは旅だった……と思う。

「と思う」としたのは、メルヴィスは寝室となっている石室に篭もってしまったからだ。


 人界に行くには、肉体から魂を切り離さなければならない。

 石室の入り口には強固な結界が張られていて、俺レベルでは破壊することは不可能である。


 大魔王が二人くらいいれば、破壊できるかもしれない。

 なんにせよ、そのせいで石室の中が伺い知れないのだ。


「ジッケとマニーの姿が見えませんね」

 見えないのは最初からだ。


 メルヴィスが石室に入ってから、二人の気配が消えた。

 おそらくついていったのだろう。


 あれはあれで、メルヴィスに心酔しているのではないかと、俺は思っている。

 メルヴィスが戻ってくるまで、石室の中で仮死状態にでもなっているのかもしれない。


「私たちのやるべきことは多いぞ。メルヴィス様が戻ってきたときのために、しっかりとこの国を守っていかねばならないからな」


 ファルネーゼ将軍はそう言うが、俺はもうメルヴィスは戻ってこないと思っている。

 これまでメルヴィスは、ずっとヤマトを探していた。


 人界へ行ってしまえば、こっちに未練はないのではなかろうか。

 そしてヤマトの死を回避するために、あらゆる手を尽くすような気がする。


 人界のことは、ヤマトとメルヴィスに任せる。

 俺は知らん。


「部下たちを守らないといけませんし、手は抜きませんよ」

 俺が将軍になったことで、部下が増えた。


 そのため半端なく忙しい。

 部下をこれから鍛えなくっちゃならないし、俺の意志とは関係なく国のことを考えて、意見を出さなくっちゃならない。


 ファルネーゼ将軍に「向いてないので、辞めていいですか」と聞いたら、「そういえばツーラート将軍がまだリハビリ中だったな」とか返された。


「大変ですね」とすっとぼけて帰ってきた。


 しばらくは将軍職に専念するしかなさそうだ。

「まあ、いま魔界が静かだし、いいか」


 メルヴィスが人界へ行ったのは極秘情報だ。

 俺たち将軍しか知らない。


 支配の石版には大魔王メルヴィスの名が残ったままだし、周辺諸国は嫌と言うほど恐ろしさを理解している。

 当分は安心できるだろう。


 これが今後も続くことを祈ろう。


「ゴーラン様、新兵がやってきました」


「御苦労、リグ。とりあえず隣の奴と戦わせて、勝った奴だけ残してくれ。負けたのは、城の周りを暗くなるまで走らせる感じで」


「分かりました。さっそく取りかかります」

 リグが俺の副官をやってくれている。


 リグのおかげで、いまも随分と助かっている。

 このまま俺は、この国で将軍として馴染んでいくのだろうか。


「それも悪くないか」

 空を見上げると、真っ白な雲がたなびいていた。


「世はこともなし……か」

 遠くから「うおおおお」なんて声が聞こえてきた。


 早速新兵訓練が始まったようだ。



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