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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
最終章 魔界はいつでも世紀末(ヒャッハー)編
355/359

355

「おまえは馬鹿か!」


 魔界の住人でもっとも理知的かつ温厚。

 そして頭脳明晰と巷で有名な俺が、ただいま絶賛叱られ中である。


 しかも馬鹿とか言われた。

 地味にヘコむ。


「いや、将軍……それはですね」

 言い訳をはじめたら、なぜ会議を聞いてなかったのだと怒鳴られた。


 まあ、三将軍を集めた会議に俺だけ特別参加。

 何かあると考えるのが普通だ。


 会議に集中しこそすれ、上の空で聞いてなかったなんてありえないと思ったらしい。

 そうだな。俺でもそう思う。


「しかもよりによって賛成するとは……」

 ファルネーゼ将軍が頭を抱えている。


 なぜこうも大事になっているかと言うと、メルヴィスの代役を決めるからである。


 魔界の住人らしく、戦いで。

 国内で一番強い者が代役をやればいいんじゃね? ということで選ばれたのが俺を含めた四人。


 これでトーナメント戦をするらしい。

 まあ、最強を決めるには至極真っ当な方法だと思う。


 高校野球で優勝校になるには、トーナメント戦を地方大会から勝ち上がらなければならない。

 予選から唯一負けナシのチームだけが優勝できる。それと同じだ。


「……ということは最低一回、最高で二回戦えばいいわけですよね」

 たしかに面倒事だが、それくらい我慢できる。


「まさか素直に代表になれると思っているのか?」

「へっ?」


 会議で代表を決めたんじゃなかったのだろうか。

 どういうこと?


 俺はファルネーゼ将軍の表情を窺い、何を懸念しているのか想像してみた。

 トーナメントの出場枠は四名分。


 最後まで勝ち上がった者が優勝で、それがメルヴィスの代理を務めることになる。

 そこまでは問題ない。将軍から説明のあった通りだ。


 その後で、将軍は何と言った?

「まさか素直に代表になれると思っているのか?」


 これはつまり、会議で俺が代表になることが決まったものの、すんなりと代表にはなれないことを意味している。


「……もしかして下克上ですか?」

 俺の座を奪おうと襲いかかってくると?


「今回は純粋な下克上でもないぞ。他将軍の配下が次々と挑戦してくるな」

「えっと……なるほど」


 自分の主を勝たすため……とは純粋に言えない。

 ようは、四強入りしたいのだ。


 なんたって魔界は、強さが正義みたいなところがある。

 こんな機会を逃す奴は頭が足りない。


 そして四強の中で唯一与しやすいのが俺。

 ファルネーゼ将軍の部下というだけで、将軍ではないのだから。


 だったら俺をぶっ殺して権利を奪い取ってやる。

 そう考える者が出ても不思議ではない。いや、出ない方がおかしい。


「もしかして俺、狙われますかね」

「もちろん」


 将軍の返答はあまりに短かった。




 月日は流れ、決戦当日。


 いろいろなことがあった。

 たとえば、魔界が静かになった。


 ちょっと煩い連中もいたが、メルヴィスが行って黙らせた。

 永久に口を閉じることになった者が多数出た。


 その後はどこもかしこも静かになった。

 いいことだ。


 本日、魔界の中で唯一騒がしいのが、メルヴィスの国だ。

 ここでメルヴィス麾下の四名による最強決定戦が行われるとあって、各国の猛者たちが観戦に集まっている。


「ついこの前までお前ら、戦争してただろ!」と突っ込みたいところだ。

 なに仲良く下馬評を論じてるんだよ。


 ちなみに敵対国の者どうしがこの地に集まっても争いは発生しない。


 メルヴィスのお膝元で馬鹿をやる奴は……少しいたが、全員静かになった。永遠に。

 そのため、みな礼儀正しいものである。


「マジかよ」


 続々と集まる他国の連中を見て、俺は嘆息した。

 魔界って、こんなに賑やかだっけか。


 もっとコミュ障の集まりじゃなかったか?

 顔を合わせれば、強さを競い合う連中ばかりじゃなかったのか?


 なに和気藹々と語り合っているんだよ。


「ついにこの日が来てしまったな」

 ファルネーゼ将軍がやってきた。


 なんか、クジャクの羽みたいなのを纏っている。

「今日は一段とキラキラしいですね」


「秘宝の防具だ。目立ってしょうがないが、万が一があるからな。最強のものを着てきた」

「やはりあるんですか、万が一」


「あるだろ。こっちだって殺す気で掛かるし、手加減する余裕はないし、するつもりもない」

 つまり、運が良ければ生きているんじゃね? というレベルで殺しにかかるようだ。


 まあ、そうでもしないと、こっちが殺される。


「もし当たっても、お手柔らかにお願いしますね」

 対戦相手はまだ発表されていない。


 というかその場でくじ(・・)を引いて、戦う順番を決める。

「先」と「後」しか入っていないくじ(・・)が用意されていると聞いた。


「しかし、よく生き残ったな」

 ファルネーゼ将軍がしみじみと俺に向かって言った。


「そうですね。九割五分、死んだと思いましたよ」

 将軍の予想通り、各陣営の猛者たちが次々俺に戦いを挑んできた。


 俺はそれを連日のように相手にしたのだ。


 一番人気は俺。

 ファルネーゼ将軍の部下ということで、与しやすしと思われたようだ。


 あと、自分の主のために少しでもダメージを与えようとか、戦って強さを丸裸にしようとか思った奴もいた。


 俺はそれらを次々と撃破していった。

 文字通り、半歩間違えれば死ぬような攻撃を何度も食らった。


 本気で危ない場面もかなりあったが、なんとか五体満足で下克上を切り抜けた。


 二番人気はツーラート将軍だ。

 先代のゴロゴダーン将軍が戦死し、その後を継いだため、経験不足と思われたらしかった。


 他に四強候補がいるのになぜか俺が選ばれたということで、「ゴーランって、実際は強いんじゃね?」と、ツーラート将軍の方へ向かった者も少数ながらいた。


 いい判断だ。俺が楽できる。

 ファルネーゼ将軍の部下などは、軒並みそっちに向かったので、もしかすると将軍経由で「ゴーランと戦うのは止めた方がいい」と言われていたのかも知れない。


 ファルネーゼ将軍とダイダロス将軍にも、少数ながら下克上を仕掛けた者が出たらしいが、難なく排除したらしい。


 それ以降は現れてないようなので、やはり強さが周知されている者たちは違うなと思い知らされた。


「ゴーラン!」

 俺を呼ぶ声がした。


「ん?」

 振り返ると、見知った顔があった。


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