表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第9章 異界の旅路編
300/359

300

 力が強ければどこへ行っても我を通せる。

 それが魔界のいいところだ。いいところか? まあいいや。


 それが異界でも変わらないのなら、魔界の常識を持ってきて大丈夫なことになる。

 それでちょっと、シミュレートしてみよう。


 俺たちが常夏の海岸を歩いているとする。

 その辺でたむろしている奴らが俺に気付く。もちろん反抗勢力に属している奴らだ。


「ようよう、てめえら。どこのもんだ?」

 まあ、こんな感じでからまれる。


「俺たちは常秋の山林から来て、常春の野原へ向かう途中だ」

 この辺が無難な答えだろう。


 他所から来たと言い、お前たちに興味が無いと思わせる。


「なんだ他所よそもんか。そんなとこへ行くのは止めて、オレの配下になれ。うまく使ってやるぜ」

「はっ? おととい来やがれ!」


 無礼な対応に、ヘーコラしていられない。

 そういう相手には、今のような対応で十分だ。


「んだとコラァ! やんのか?」

 ここで喧嘩が始まる。


 つか、始まっちゃったよ、喧嘩。

 魔界の住人相手なら、ありそうな展開だし、俺は悪くない。


 だが、これでは駄目だ。却下だ。

 もう少し下手に出てみよう。たとえば「部下になれ」と言われたとする。


「勘弁して下さい。俺は戦いができない種族なんです。ここはただ通過するだけですので、見逃して下さい」


 これでどうだろうか。非戦闘員であることを匂わせつつ、相手の慈悲にすがる。

 かなり行けそうな気がする。


「だったらオレの身の回りの世話をしろ。ちょうどパシリが足らなくて困ってたんだ。あんパンと牛乳買ってこい」

 うん。これもありそうな話だ。いや、異界にあんパンと牛乳はないが。


 なんというか、魔界の住人は結構人の話を聞かない。

 とくに下っ端になればなるほど、その傾向が強い。


 とすると、パシリは断った方が無難だろう。

 そもそも俺たちは常春の野原へいくのであって、ここに常駐するわけではない。


「あんパンと牛乳だぁ? てめえが買ってきやがれ。ついでに俺の分もだぞ、忘れるなよ!」

 断るならば、このくらい強気の方がいい。


 ただし、これだと喧嘩になる。

 ということは、これも駄目だ。


 もっと前からシミュレートし直そう。やり直しだ。

 相手が俺を見つけて絡んできた……始めるとしたらこんなところかな。


「てめえ、見かけねえ顔だ……へぷし!」

 とりあえず、出会い頭に殴ってみた。先手必勝だ。


「ア、アニキィー……て、てめえよくもアニキを……ぷべらっ!」


 こういう奴にはよく三下がついているから、そいつらからも絡まれる。

 それらも一緒に排除すべきだろう。やはり先手必勝だ。


「何だ、今の音は? お、おまえ、侵入者か? 出会えぇ! 侵入し……あべし!」

 だいたい部隊長クラスの奴が近くにいたりするからこれも排除だ。


 さもないと、際限なく敵を呼ばれてしまう。

 だが、時すでに遅く、わらわらと敵兵が集まってくる。さてどうするか。


 こうすると……こうくるか。

 だったら、こうして……いや、こうなりそうだな。


 ふむ、なかなかクリアが難しい。難易度ベリーハードになっていないか?


 とくに敵将が出てきた段階で、敵兵をどこまで減らせられるかが勝負なんだが、いかんせんこっちは俺ひとり。

 戦力がちょい心許ない。


「ゴーラン様、どうしました? さっきからずっと考え込んでいますけど」

「難しいな」


「えっ? 何が難しいんです?」

「敵を下っ端から倒していくと、どうしても全滅させなきゃいけなくなる……だがそうすると、手が足らない。これは難しい問題だ」


「…………」

「いい方法ないかな。どうやっても一掃させる流れになるんだよなぁ」

 うまい回避方法が見つからない。


「一掃って、反逆者たちですか?」

「そうだ。このままだと、あの竜たちまで出てきてしまいそうだ。さすがにそれはめんどい」


 おそらく雑魚を半分も倒さないうちに真打ち登場となるだろう。

 しかもジュガの話だと竜は二体いるようだし、さすがに愛用の武器と防具がない状態はつらい。


(でもなあ……どうしようもないんだよな)

 強行しても下手に出ても、どうしても戦いになってしまう。


「なあジュガ。何かいい案はないか?」


「……さ」

「さ?」


「さすがです、ゴーラン様!」

「な、なんだ?」


「やっぱり『反逆の殲滅者』の名は伊達じゃないですね! さすが殲滅者と言われるだけのことはあります。さすが過ぎますよ!」


「ジュガ、お前……なんて失礼な」

 何を言っているのだ。

 それはこっちの台詞だ。


 こんなに頑張って回避策を練っているのに、殲滅者呼ばわりは、さすがに失礼過ぎるだろ。


 そう言ったのだが、ジュガは俺の話を聞いてくれなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ