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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第1章 見晴らしの丘攻防戦編
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 俺が住む小魔王メルヴィスの国は小さい。


 まず国土が狭い。猫の額ほどだ。

 次に人材が乏しい。将軍は三人しかいないし、俺の上司であるネヒョル軍団長に至っては、部下のショボさが際立っている。


(部隊長にゴブリンがいるってのが凄いよな)


 ゴブゴブ兄妹に飛鷲ひじゅう族のビーヤン。

 彼ら三人はおよそ戦闘に向いている種族ではない。


 唯一、賢狼族のロボスはまともだが、賢狼族自体、魔獣種の中では中の下だ。

 決して強いわけではない。


 他の軍団長はどうなのか本気で気になるが、今までそれを知る機会はない。

 そのうち戦場で一緒になることもあるだろう。失望しないといいのだが。


 さて、こんな弱小とも言える小魔王メルヴィスの国だが、群雄割拠する世紀末ヒャッハーの世において、これまで唯一例外ともいえる静けさを保ってきた。


 理由は、この国の王にある。

 小魔王メルヴィスは、かつて小覇王ヤマトとともに世界に覇を唱えようとした大魔王だった。


 過去の栄光故か、どの国もメルヴィスがいるこの国へはちょっかいをかけてくることはなかった。


 俺のご先祖様たちは、ありがたいことにその恩恵を存分に受けて、何代にもわたって平穏に過ごしてきた。


 ご先祖様たちは退屈すぎる一生だったと思うかもしれないが、それはおいといて。

 問題は、最近の魔界の動向だ。


 直接見ていないので分からないが、どうやら天界から侵攻があったらしい。

 ここよりももっと南にある魔王バロドトの国に、天使が現れたのだ。


 魔王バロドトは嬉々として迎え撃った。

 何しろ、天界から魔界へ侵攻してくるには、世界に穴を開けなくてはならない。


 通常閉じている世界を無理矢理開かせるのだ。

 多大な力が必要になってくる。そして開けた穴――天穴てんけつは、世界の理に従って閉じようとする。


 そのわずかな時間で拠点を築き、侵攻するしか彼らに手はない。

 天穴は百年から三百年に一度くらい現れるが、魔界としてはオイシイ相手なのである。


 だが今回は違った。

 魔王バロドトは死亡し、国は崩壊。後継者が決まることなく、いくつもの小国に分裂した。


 いまも旧魔王国では血みどろの戦いが繰り広げられている。

 さて、ここで問題になるのは「天穴はどのくらい続くのか」である。


 過去の例からすると、一度天穴が魔界にできた場合、三つ、四つと続くことがほとんどであった。


 ――では次はどこか?


 魔界は戦々恐々としている。

 なにしろ、魔王を倒すほどの相手が開けた穴である。


 魔界で戦うという地の利はあるものの、負ける可能性は高い。

 しかも天使は魔界の住人を容赦なく狩る。


 そもそもそれが目的で来ているのだから、容赦するわけがない。


「……魔石ませきねえ」


 俺たちが体内に持っている支配のオーブは、彼らにしたら貴重な研究材料。

 エネルギー供給装置なのだそうな。


 つまりこんな感じだ。



「おう、狩りに行ってきたぜ。魔石の買い取りをたのむ」

「これは……ずいぶん大きな魔石ですね」


「なんたってそれは魔王のだからな。高値で買い取ってくれよ」

「それはもう……あっ、これで貢献値が溜まりましたので、ランクアップ可能です」



 というような会話が天界でなされている。

 ……と俺は想像したが、少し違うらしい。


 天界の住人はみな研究者であり、その研究に魔石が必要なのだそうな。

 天界の住人はみな魔力が馬鹿高いらしいが、彼らの世界では魔石を作り出すことができず、ときどきこうやって多大な費用をかけて魔界に魔石を調達しにくるらしい。


 と、以前会った堕天だてん種の男が言っていた。

 毎日研究ばかりで、欲のない人生を送っているのに耐えられなくなって堕天したのだそうな。


 その男はいま、魔界で幸せに生活している。


 つまり何がいいたいかと言うと、最近天界からの侵攻があったので、近いうちに必ずある。

 それに対抗するため、大魔王や魔王たちが強くなるため、国を広くするために、周辺諸国へ圧力をかけ始めたのだ。


 それに反発した小魔王たちは、同じ小魔王の国を支配し、勢力圏を広げるとともに、魔王や大魔王に対抗しようとしているのである。


 嗚呼、魔界はなんて世紀末ヒャッハーなんだ。



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