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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第7章 いにしえの大魔王編
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「いい方法を思いついたぜ」

 俺はニヤリとキョウカに近づいた。


 キョウカは、俺が配下になると思っている。

 俺が近づいても「?」と思うだけで戦闘態勢をとることはしない。


「ネヒョルとは、早い内に決着を付けなきゃと思っていたんですよ」

 俺はへらへらと笑いながら、ゆっくりと歩を進め、キョウカの脇に回り込む。


「ネヒョルとここで戦うというのか?」


 いま山の向こうでは、戦争が起こっている。

 面倒事は御免だという顔をしている。


「まあ……そうですかね」


 後ろに回り、しゃがんでキョウカの尾を掴んだ。

 両手で握りしめる。


「キサマ、何をする!?」

「よいしょっと」


 俺は、両手両足になけなしの魔素を巡らし、尻尾を引っ張る。

 大きくバランスを崩したキョウカの身体は、そのままつんのめった。


 俺は尻尾を振り回す。


「これ、ジャイアントスイングの亜種ですかね。それともハンマー投げ?」


 尻尾を持ってぶんぶんと回転させると、キョウカの身体は凄い勢いで回っていく。


 目が回るだろうが、ダメージになるわけではない。

 もちろんバターにもならない。


 ただし、俺には目的があった。

「秘技、キョウカ打ち!」


 キョウカの身体を武器として、ネヒョルを攻撃した。

 そう、いつもの技だ。もうこれ、特技にしてもいいかもしれない。


 ――ガツン、ガツン


 さすがに三回目は当たらなかったが、奇襲が効いたようで、驚くネヒョルに二度も打ち据えることができた。


「よっと!」

 キョウカを放り投げて、俺は笑う。


「へえ~~、ゴーラン。どういうつもりかな?」

「ここでキッチリ引導を渡してやろうと思ってな。生きてここを出られるとは思うなよ!」


「それは僕が言うべきことじゃないかな? ここは敵地だよ?」


「貴様ッ!」


 ムクリと起き上がったキョウカには、ダメージが見られない。

 あのくらいで怪我をする小魔王はいないだろうし、それは予想どおり。


 ようは、ネヒョルとキョウカの両方をやる気にさせるのが目的なのだ。


「ねえ、ゴーラン。僕らを敵に回して勝てると思っているの?」


 ネヒョルが挑発してくる。というか、面白がっているフシがある。

 何をしてくるのか、期待しているのだろう。


 一方のキョウカは怒り心頭だ。

 今にも襲いかかってきそうな威圧を感じる。


 なるほどさすがは魔王直前の小魔王だ。

 キョウカが怒ると、ここまでプレッシャーを感じるわけか。ひとつ利口になった。


 俺はと言うと、実は内心立っているのがやっとだったりする。

 バルザスとの戦闘で、魔素を使い果たしたからである。


 これ以上戦闘継続はできない。俺は(・・)


「さて、少々反則だとは思うが、やることをやってしまうかね」

 俺はニヤリと笑って、俺の中にいる『オレ』に問いかけた。


 ――準備はいいか、と


 進化するとき、俺はオレと対話した。

 そのとき「魂」と「その入れ物」の事について少し分かった。


 オーガ族だった頃、支配のオーブには、「俺」と「オレ」の魂が入っていた。

 小さな支配のオーブはそれでもうパンパンだ。


 その上さらに、俺が毎日少しずつ魔素を増やしていったのだから堪らない。

 オレが表に出てくるだけで、身体が悲鳴を上げていた。


「俺」よりも「オレ」の方が、魔素量が多い。

 進化したことで、身体や魂、魔素量……何もかも強化された。


 外見が変わり、種族も変わった。


 進化後の『オレ』の魔素量は凄まじく、この肉体を持ってしても、すぐに限界がきそうなくらいだった。


 まったく、どれだけ増えたのかと嘆きたくなる。

 だが、ここでふと考えた。


 ――あれ? じゃあ、他の強者たちはどうしているんだ?


 二人分の魔素量を合わせても、魔王や大魔王には届かない。

 彼らはそれほど特別なのか。


 疑問に思ったので、トラルザードに聞いてみた。そうしたら……。

「自分でコントロールするに決まっておるじゃろ」とのこと。


 魔素でもって魔素を制す。

 そんな感じだ。


 早速俺もやってみた。

 魔素で強化してから、魔素を流すのだ。


 するとあら不思議。

 いままでの苦労がなんだったのかと思うほど、ラクになった。


 制御さえ覚えれば、オレが出てきても問題なくなったのだ。

 これは塔の中で練習した。あのヒマしていたときだ。


 砂鎧さがい族のヨルバも協力してくれた。

 魔素が溢れ、危なくなったときもある。


 吸魔鉄の盾がいい仕事をしてくれたのも、付け加えておこう。

 ありがとうドブロイ。お前から貰った盾は有効利用している。


 魔素で魔素を制御するやり方を覚えた俺は、オレに変わるときの負担を軽減できて……。


「んじゃ、いっちょやるか」


 オレはゆっくりと目を開けた。


 こっちを凝視している二人がいる。

 ひとりは目を見開いているな。


「な、なぜ、魔素がこれほど急激に増えるのだ?」

 驚いてやがる。


「ゴーランの特殊技能みたいなんだけど、魔素を増やす技ってあるのかな」

 ネヒョルには見せてあるから、驚きはないらしい。


「何を呑気な……こやつの魔素はどう考えても(うわっ!)」


 オレは足に魔素を纏わせ、キョウカの後ろに回り込んだ。


 尻尾を掴むと、片手・・で振り回した。


 ――ブーン、ブン、ブン


「キョウカ乱れ打ち!」

 主のピンチとばかり、止めに入ったモウガを「それ」で打つ。


 俺だけじゃなく、オレだって使えるのだ。


 モウガが大きくのけぞったところで、ネヒョルに狙いを定める。


 これは武器を取り上げられたとき、本当に便利だな。

 いつでも使えるようにしよう。


「キョウカ烈風!」


「キョウカ爆撃!」


「キョウカ爆裂殲滅斬!」


 適当に付けた技名で、次々とやってくる部下を蹴散らしていく。


 奴らも主人直々に蹴散らされたら、さぞ満足だろう。


「あいかわらず豪快に馬鹿なことをするよね、ゴーラン」

「おっと、お前を残していたんだったな」


 忘れていた。

 もとはといえば、ネヒョルをぶち殺すための戦いだった。


「受けてみろ、キョウカ最終奥……」


 ――プチ



 あっ、ちぎれた。



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― 新着の感想 ―
[一言] おかしい…最初の方はキョウカ強敵に感じてたのにこれ w
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