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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第7章 いにしえの大魔王編
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 現れた駄兄妹を俺はよく見た。

 サイファは俺の背丈に並ぶほどだ。かなり身長が伸びたな。


 身体の厚みは俺の方がある。

 サイファの全身が赤銅色に焼けた色をしている。そういう種族なのか。


「それ、特殊進化だよな。何になったんだ?」

 自分の進化先は、支配のオーブに刻まれるらしく、自分だけは理解できる。


 進化した種族名が頭に浮かぶのだ。

 魔界の摩訶不思議現象だと俺は思っている。


「オレか? オレは『益荒男ますらお』らしい」

起源オリジン種かよ」


 どうりで見たことない外見だと思った。

 俺に続いてサイファまで起源種に進化するなんて、一体どうなっているんだ?


 しかも、益荒男って……荒ぶる男の名称だろ。種族名じゃねえよ。

 魔界だからいいのか。


「ねね、ゴーラン。わたしのことも聞いてよ」

「ベッカか。おまえはどうでもいい」


「え~~!?」

「冗談だ。おまえは何になったんだ?」


 こいつも見たことない種族だ。

 ヤシャ族に似ているが少し違う。


「わたしはね、『ダキニ』だって」

「ふうん」


「あっ、なによ、その反応」

「いや……よく生き残ったな。偉いぞ、ベッカ」


「へへ~ん」


 阿呆のくせに、生き残ることができたか。

 しかし、ダキニとは。

 こっちも起源種か。『駄キニ』と呼んでやろう。


 インドかどっかに、そんなのいなかったか?

 独鈷杵とっこしょとか持った鬼神かなにか。


 ベッカの場合、赤というか、ピンクっぽい肌だ。

 筋肉モリモリというわけではない。


 だが背も伸びて、爪もずいぶんと太く鋭くなっている。

 あとツノが伸びて、いかにも鬼っぽい。


 なんにせよ、格上と戦うことで進化するオーガ族が、起源種になるまで戦い抜いたって……生き残れるものなんだな。


「ああ、そうか」

「ん? どうした、ゴーラン」

「何なの?」


 普段から俺と戦っていることで、コイツら格上と戦っても死なないコツを掴んだな。

 年間百回くらい叩きのめしてやったことが、功を奏したのかもしれない。


「よかったな、特殊進化するほど戦えたわけだ」


「おう。楽しかったぜ。バンバン潰したしな」

「ボッキボキに骨を折っちゃったもんね~」


 サイファは金棒のぶっといのを持っている。

 文字通り、それで敵を潰したのだろう。


 そしてベッカ。こいつまだ関節技にこだわっているのか。

 以前俺がやったのを根に持っているってことはないよな。


 面倒なときは、よく腕か足の骨を折って放置していたし……っと、そういえば、これを聞いておかなきゃ。


「で、駄兄妹はどうしてジャニウス軍にバラしたんだ?」


「バラしたって?」

「何を~?」


「魔王トラルザードの国との同盟だよ。あれは極秘だ。よって俺たちが軍を交換したのも極秘」


「えっ、そうなのか?」

「知らなかった~」


「…………」

 話を聞いていないのは、いつものことか。


「それにオレはバラしていないぜ」

「そうそう。文句があるならいつでも相手になるって言っただけだし」


 そうなのか。だったら問題なさそうだな。

 リグの勘違いか?


「すぐにメルヴィスの国に帰らなきゃいけないから、文句があれば、こっちへ来いって言ったな」

「うん。言った、言った」


「言ったじゃねえか! この駄兄妹!!」


 なんでメルヴィスの国に帰るって言うんだよ!

 それじゃ、バラしたのと同じじゃん。


 こいつらは駄兄妹じゃない。馬鹿兄妹だ。

 魔王ジャニウスの国と戦争になったら、どうするんだよ。


「よしリグ」

「なんでしょうか」


「今の話、聞かなかったことにしよう」

「はっ?」


「いいな」

「えっと………………はい」


「よし。あとはコイツら馬鹿兄妹をシメて終わりにしよう」


「おっ、ゴーラン。やってくれるか」

「次、わたしね~」


「おう、いいぞ。今日はたっぷり相手をしてやる」


「すげー、気前がいいじゃん」

「珍しいねえ~」


「ここじゃ狭いから、もっと広いところへ行こう。どこがいいかな」

「あの、ゴーラン様」


「どうした、リグ」

「できれば天幕から離れたところでやっていただけたらと……思います」


 そうだな。サイファあたりが吹っ飛んで破れたりしたら、修復するのはリグたちの仕事だもんな。

 ただでさえ忙しいのに、リグの手間を増やしたら申し訳ない。


「よし、そういうことなら陣の外に行こう。そこなら迷惑がかからない」

 かなり強固な陣が敷かれているし、壊れる心配もない。


 そして陣の外ならば、だれもいない。

 思う存分馬鹿兄妹をシメることができる。名案だ。


「お前ら、俺に付いてこい」

「よっし、やるぜ!」

「楽しみだね~」


 俺は馬鹿兄妹をともなって、出て行った。



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