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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第7章 いにしえの大魔王編
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「お久しぶりです」

 リグが俺のところにやってきた。


「久し振りだな、来てくれて助かったよ。また副官をよろしく頼む」

 リグには、俺が率いてきたオーガ族の管理をそっくりそのまま任せたい。


 今回、オーガ族の村から兵を集めたあとすぐに、「野郎ども、ついてこい」で強引に連れてきた。

 細かい準備はしなかったので、現地に着けばなんとかなるとばかりに、強行軍で来たのだ。


 だが、リグがいればもう安心だ。


「それで、ゴーラン様。ご報告がいくつかございます」

「俺が別れてからかなり時間が経っているからな。聞くぞ、全部話してくれ」


 俺の方は話さなくていいよな。

 魔王トラルザードに会うまでの道中で、いろいろあった。

 主に喧嘩を売られたり、喧嘩を買ったり。


 トラルザードと会ってからも、いろいろあった。

 これも喧嘩を売られたり、喧嘩を買ったりだな。


 そしてこの国に戻ってきてからも。

 やっぱり喧嘩を売られたり、喧嘩を買ったり。


 なんか、こうしてリグの顔を見ていると、長い間会っていなかったんだな。

 俺は喧嘩ばかりしていたが、さてそっちはどうだったんだろうか。


「まず、ゴーラン様が旅立たれてからですが、魔王ジャニウス軍との戦いが何度か行われました」

「えっ、そうなの?」


 メラルダが暴れて治まったんじゃなかったのか?

 結構大規模な戦いだったはずだが。


「小魔王国群が混乱しまして、メラルダ将軍がそちらに軍を派遣することになったせいだと思います」


 小魔王国群といえば、トラルザード領の西か。

 ネヒョルが何かしでかしたかな。


 西に軍を派遣した隙を狙われた感じか。

 トラルザードはもともと魔王ジャニウスとは争ってなかったはずだが、これで恒常的な戦争状態に突入だな。


 これでトラルザードは南北の魔王と戦うことになる。

 結構困るのではなかろうか。

 まあ、軍師のセイトリーがいれば、どうとでもするか。


「魔王ジャニウスの軍と戦ったのか。よく無事だったな」


 サイファやベッカだけでなく、死神族のペイニーたちもいることだし、そうそう後れを取るとは思えないが、大丈夫だっただろうか。


「将軍クラスの出撃はなく、軍団長レベルの部隊が複数出張ってきたようでしたので、メラルダ将軍の軍と共同で、国境線で押しとどめていました」


「なるほど。前のような大規模な戦いではなかったのか」

「トラルザード国の対応力を探りに来たのではないかと思います。深入りしてきませんでしたので、撃退も容易でした」


 そういうことか。本格的な戦いは望んでいなかったのかもしれない。

 ジャニウスとて、トラルザードとの戦いは片手間にはできない。


 そもそもジャニウスは魔王ギドマンと戦争中らしいので、二面作戦になるはずだ。

 小競り合い程度がせいぜいだろう。


「そうか。こちらに犠牲は出たのか?」

「多少は出ましたが、軽微です」


「それはよかった」


 敵も力押しだけで来たのだろう。

 大きな被害を受けるときは、相手の策に嵌まったときだからな。


「その後、帰還命令が出ました。国に戻るために移動したのですが、その時に、ジャニウス軍から追撃を受けました」


「なんでまた……いや、行軍の位置か」

 あそこからこの国に戻る場合、北東へ進む必要がある。


 進路によっては、かなりジャニウス領に近くなる。

 別働隊が回り込むと思われたわけか。


「それは大変だったな」

「逃げるだけでしたので問題も……一部逃げない方もいましたが」


「あー……」

 敵がいたらとりあえず戦っとけと考える奴はいる。

 とくにオーガ族。


 リグが言うには、ジャニウス軍を刺激しないように大回りするか、追撃が間に合わない速度で移動するか悩んだ末、ほぼ休みなく駆け抜けることにしたらしい。


 それもひとつの正解だろう。

 体力馬鹿のオーガ族に比べて、リグは相当キツかっただろうが。


「その追撃戦ですが……」

「迎え撃った連中は全滅しただろう。それはしょうがない」


 撤退戦の殿しんがりのようなものだ。

 しかも自分から嬉々として戦いに赴いた。

 結果がどうなったかなど、自明だ。


 だれのせいでもない。魔界では自己責任。

 俺がその場にいたら助けに戻っただろうが、知らないところで起きた戦争にまで、介入できるはずもない。


「いえ……それが」

「無事に逃げおおせたのか?」


 よほど運が良かったのか。

 敵がミスをおかしたのか。


「蹴散らしたようです」

「へっ!?」


 いや、蹴散らせないだろ。

 リグは何を言っているんだ? 長旅でボケてしまったとか。


「おう、ゴーラン。ここにいたか」

「やっと会えた~、おっひさ~」


 駄兄妹がやってきた……やってきた?


「駄兄妹……なのか?」

 サイファとベッカだと思って振り返ったら、全然別の奴がいた。


 だが、なぜだろう。

 支配のオーブのパスが俺に繋がっている。

 ということは、俺の部下だ。


 だがこんなのいただろうか。


「さて、ゴーラン。手合わせしようぜ」

「わたしはその次ね~」


 やっぱり駄兄妹だ。

 この外見ということは……。


「おまえたち、特殊進化したのか?」

 俺が尋ねると、リグがゆっくりと頷いた。


「はい……そのせいで少しだけ困った問題が持ち上がりまして」

「何だ? 困った問題って」


「魔王ジャニウスの軍にお二人が立ち向かったのですが、私どもがメルヴィス様の部隊であることがバレました」


「Oh!」

 なんてこったい!


 というか何をやったんだ、こいつらは。



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