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「俺、死にますよね」
キョウカと一騎打ち。
負ければ死亡、勝てば……やっぱり死亡。
その頃にはボロボロだ。
取り巻きが黙っちゃいない。
「大丈夫だ」
「それ、根拠ないですよね」
気休めは止してほしい。
戦場で大将がいる場所なんて、敵陣の真ん中だ。
どうやっても、死ぬ運命しか見えない。
「話を最後まで聞いてくれ。これはフェリシアの考えた策なのだ」
「むっ……」
フェリシアは、ファルネーゼ将軍が抱える軍師。
それが考えた策ならば、最後まで聞いてみる価値はあるか。
「一騎打ちと言っても、決着が付くまで戦ってほしい訳じゃないんだ」
と言う事は、決闘はフリか。
だとすると、フェリシアの立てた策を予想すると……。
「キョウカ討伐が目的じゃない?」
俺がそう伝えると、将軍が目を大きく開いた。
「凄いな。たったこれだけの情報で読み解くか」
「俺じゃキョウカを倒せないですからね。わざわざ策を弄して、俺とキョウカの一騎打ちまで持っていくならば、狙いは足止めですよね。本当の狙いは別にあるでしょう」
「うむ。目的はキョウカ親衛隊の排除だ。……最初から話そう。これまでの調べで、キョウカが勢力を拡大してきた方法が判明した」
これは言われなくても、だいたい分かる。
魔界で勢力を『急速に』拡大させる方法はひとつしかない。
「自分と同等か少し格上を続けて撃破していったのでしょう。だとすると、屈服させることは不可能だったはずですね」
「そうだ。つまり、小魔王どうしの戦いでは、相手を殺すしかない」
よしんば、ギリギリ生かして屈服できたとしよう。強力な配下の誕生だ。
だが負けた本人は、どう思うか。
ギリギリならば、次に戦えば勝てたかもしれない。
そう思って、怪我が回復したら下克上を仕掛けてくる。
キョウカだって、ほぼ同等の強さを持つ部下の存在は、気が抜けないはずだ。
自分の座を虎視眈々と狙う存在。獅子身中の虫となってしまう。
戦争を続ければ、もしキョウカが大怪我をしたとき、配下にした小魔王から下克上を仕掛けられる可能性がある。
そうしたら終わりだ。
五分の者を配下にするならば、いつでも、どんな状態からでも、下克上を仕掛けられても退ける力が求められる。
ほとんどの場合、力の差を見せつければ事は足りる。
もう敵わない。そう思わせて屈服させればいい。
もっとも、サイファやベッカなどは、力の差を見せつけても挑んできた……それはおいといて。
次々と勢力を拡大させてきたキョウカに、そんな余裕があるはずがない。
つまり、他国の小魔王は、みな殺してきているはずだ。
「そうすると、領土が増えても戦力不足になりますね。とくに、戦争となれば死ぬ部下もいるでしょうし」
「そうだ。だからキョウカ軍はいつでも強力な部下が不足している」
「部下になりたいと言えば、断れない……ですか?」
「そういうこと。ゴーランのような起源種で膨大な魔素を持っていれば、誰かの部下にするなんて発想はないだろう」
「小魔王キョウカと謁見して、直接魂を繋げるというわけですか」
直属の部下。将軍クラスになれるんじゃないかということだ。
将軍の下は軍団長なので、部下の多寡によって微妙なところかもしれないが、それを判断するためにも、一度は謁見する。
なるほど、たしかに謁見できそうな気がしてきた。
「そこで下克上を申し込んでほしい。そうすれば……」
「キョウカが下克上を受ければ、他は手を出しませんね」
さすがに下克上を申し込んで、一対一を拒否するとは思えない。
フェリシア……すげーわ。一対一の決闘まですんなり行けそうだ。
「問題は、一対一でゴーランがキョウカに勝てるかだが、フェリシアはまず無理だと結論を出した」
「俺も同じ意見です」
魔王直前の小魔王と戦って、勝てるわけがない。
「というわけで、キョウカと真正面から戦うのではなく、引きつけて全力で逃げてくれ。この前聞いた、魔素を足に纏えば時間稼ぎくらいできるのではないか?」
「それはまあ……できますね」
倒せと言われれば「無理」と答えるが、「逃げろ」と言われればなんとかなる。
「その間にキョウカの親衛隊を全滅させる。これは不退転の決意でいくつもりだ」
「でも、キョウカ軍がいますよ。親衛隊だけと戦うなんて、無理では?」
「だからこそ、ゴーランを追いかけるわけだ。部下たちがゴーランをキョウカ軍に追い込む」
「俺がキョウカ軍に逃げ込むんですよね」
「そう。そしてキョウカ軍がゴーランを追ってきた軍と戦闘になる。遭遇戦だ。適度なところで撤退する」
「全滅させようと追ってきますよ」
「軍と本陣が離れたところを私たちが狙う」
「軍は先に進んだまま。本陣で俺はキョウカと一騎打ち。新たにやってきた部隊の目標は親衛隊……なるほど」
この作戦には。三つの不確定要素がある。
俺がキョウカと戦って逃げ切れるのかが一つ。
ファルネーゼ将軍たちが親衛隊と戦って勝てるのかが二つ。
三つ目は……。
「他の妨害が入らないですかね」
「ネヒョルか」
将軍も分かっているらしい。
神出鬼没のワイルドハント。
本当にどこでも出てきやがる。
会ったら殺すが、さすがにキョウカから逃げながらでは、殺せない。
「そうだな。そのことについて、ゴーランにも話しておこう」
「そのこと?」
「ネヒョルの目的だ」
「盗まれた手記には、エルダーヴァンパイアになるための秘技が書かれていた……んでしたよね」
「そう。出陣前に、メルヴィス様からそのことを伺った」
なるほど。手記を書いた本人が起きているのだから、聞けばいいわけか。
ヴァンパイア族がエルダー種になるための詳細が分かったのか。
「俺が聞いていいんですか?」
「別に構わないだろう。秘匿するものでもないし。知っても実現不可能だしな」
「なるほど。ではお願いします」
「私がメルヴィス様と謁見したときの話なのだが……」
そう言って、将軍は語りはじめた。




