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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第6章 魔王際会編
219/359

219

 天界から侵攻してくる際、聖気の杭を打ち込んで魔界の様子を探る。

 堕天した者が言っているのだから、それは真実だろう。


 天界の住人がそのまま魔界に来ると、力はおよそ半分に落ちてしまう。

 魔素が充満している中にいるのは、天界の住人にとって毒になるらしい。


 余談だが、魔界の住人が天界に行けば、聖気にやられて同じ現象がおきる。

 魔素と聖気は相容れないというのがよく分かる。


 天界の住人が侵攻してくるとき、拠点を作りやすい場所を選ぶ。

 魔界は広い。

 スカスカにしか住んでいないのだから、魔王の住む町をわざわざ最初の侵攻場所に選ぶはずがない……そう思っていた。


「ここに来やがったか!」

 確率的にはほとんどないと思っていたが、まさかここで会えるとは。


「これはまさか、聖気じゃと!?」

 隣でトラルザードが驚いている。

 長く生きているからこそ驚きも大きいはずだ。


 天界の住人は馬鹿ではない。勝算がなければやってこない。

 トラルザードはそのことを知っているからこそ驚いているのだろう。


 天界の住人が勝算ありと判断したことに。


「こっちは願ったり叶ったりだぜ」

 アイツらは、俺の部下を殺した。

 俺も殺されかけた。


 その落とし前をつけさせる。


 進化前と違うことを見せてやる。

 トラルザードと戦うことを想定して、準備してきたのがある。


「お、おい、ゴーラン。どこへ行くのじゃ」

 トラルザードの声が遠ざかっていく。いや、俺が全速力で走りだした。


 最近、暇な時間のほとんど使って、俺は魔素の扱いを習得してきた。

 勉強しつつの鍛錬は前世で慣れている。すべては戦いのため。


 結局、いくらやっても、魔法を使うことはできなかった。その萌芽もなかった。

 種族として魔法は使えないのだろう。それはいい。


「代わりに、肉体だけはガンガンに強化できるようになったぜ」


 両足に魔素をめ一杯溜め込めば、城の塀など簡単に飛び越えられる。

 城抜けだ。


 通常ならすぐに追っ手がかかるが、いまは非常時。というか、緊急時。

 なにしろ、町中ですでに、天界の住人が出現しているのである。


 混乱が大きそうな場所へ向かう。

 その間に、空に向かって町から幾条もの魔法が飛んでいくのを確認した。


「対応が早いな」

 本命はこれからやってくるだろうに、この町の住人たちはすでに迎撃を開始している。


 天界の住人め、いきなり町中に出現したのは下策だ。

 ここに出現したということは、拠点をつくる暇もなければ、聖結界を張る余裕もないはずだ。


 出現した先で、即戦闘を強いられる。

 これでは勝てる戦いも勝てないだろう。


「俺たちにとっては好都合だがな」


 走りながら俺は、深海竜の太刀を抜く。

「どけ、どけぇ!」


 町中で天界の住人と戦っているのは、恐らく上位種族。

 うまく立ち回りながら、非戦闘種族に被害がでないようにしている。


 俺は走る勢いのまま敵の一体を蹴り飛ばし、近くの一体に斬りつける。

 こいつらは敵だ。ただの一体とて、生かして帰すつもりはない。


 袈裟懸けに斬ったつもりだったが、僅かに浅かった。避けられたのだろう。

「相変わらず、表情のねえ顔しやがって!」


 マネキンを思わせる顔に、白いローブ姿。前に見たのとそう変わりない。

 こいつらは聖気が籠もった魔法を使ってくるから、攻撃を受けたら大変だ。


 もう一度斬りかかるが、これも浅い。

 どうやら戦闘経験が豊富な様子だ。切り込み隊だろうか。


 連撃を叩き込む。

 生前、道場で散々練習してきたフェイント交じりの斬撃をお見舞いする。


 狡い手と思われただろうか。

 虚実入り交ぜた攻撃には対応しきれなかったらしく、対応が遅れたところを後ろに回って首を薙ぐ。


 今度は綺麗に斬れた。首が飛ぶ。

「まずは一体」

 周囲に聖気をまき散らしながら、天界の住人は倒れていった。


「雑魚とはいかないが、真打ちとはほど遠いんだろうな」

 オーガ族で戦った場合、倒されていたのは俺の方だっただろう。


 そのくらいの強さは感じられた。後から来る連中は必ず、こいつらより強い。

「だが、俺だってこんなもんじゃねえぜ」


 町から上がる迎撃魔法の数が、数倍に増えていた。

 天に裂け目ができ、そこから何体もの天界の住人が現れた。


 本格的な侵攻が始まったのだ。


 ――ひゅぅぅううううう


 出現直後に大量の魔法を放ってきた。

 一発がデカい。


 町に着弾して大爆発がおきた。


 ――ドドーン、ドドーン


 続けざまに複数の箇所で爆発した。

 巻き込まれたら大怪我をしそうなほどだ。


「見境いねえな」

 空にいる連中が今回の主役か、後にまだ控えているのか分からない。


 だが確実に分かることがある。

「あいつらを倒さねえことには、この侵攻は終わらねえな」


 前は不覚をとったが、もう同じ轍は踏まない。

 死んだ仲間の敵を討つ。



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