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魔界本紀 下剋上のゴーラン  作者: もぎ すず
第6章 魔王際会編
209/359

209

 魔王トラルザードの軍師は優秀らしい。

 俺とトラルザードの戦いをキッチリ利用しやがった。


「起きてしまったことはもういい。どうせ後から言っても、意味ないことだしな」

 だったら俺も、この事後承諾の機会を利用させてもらおう。


「すまぬな。代わりに我が答えられることであったら、何でも答えようぞ」

 出会い頭に攻撃仕掛けてきたババアとは思えないほど殊勝な言い分だ。


「まず聞きたいのはなぜ俺に攻撃を仕掛けたか。マジで死にかけたんだが」

 竜種が喧嘩っ早いにしても限度がある。


 しかも魔王がそれをやるか、普通。


「メラルダからの報告では、ゴーランの種族が小覇王ヤマト様とよく似ているのではないかとあった」

「ええ、それは俺も言われました」


 日本武尊やまとたけるのみこと素盞鳴尊すさのおのみこと

 日本書紀に代表されるこれらの知識がある俺としては、似たような神様という印象がある。

 魔界の種族とは思わなかったが。


「同一ではなくとも、関連性があるかもしれんとあったで、それを確かめることにしたのじゃ。と言っても、簡単な確かめ方はないのでな」


「……というと?」

「小覇王ヤマト様は、敵の魔素を吸収した。味方からは一切そのようなことを行わなかったゆえ、特殊技能の類いであると推測される」

 初耳だ。


「敵限定で魔素の吸収?」

「うむ。ヤマト様の戦いはそれが基本。戦う相手を弱体化させてから戦うのが常のやり方であったそうじゃ」


「…………」

 敵の魔素を吸収する特殊技能……聞いたことがない話だが、この生き字引のような年齢でヨタ話と切り捨てるのも早計。


 いや、そもそも敵の魔素を吸収して弱体化させる?

 そんなこと可能なのか?


「信じておらんな」

「そうですね。ちょっと信じがたいかな。果たしてそんなことが可能かどうなのか」


「我もそう思う。メラルダからは、お主がまだ特殊技能の使い方がよく理解できていないとあったしの。ならば敵対してみるのもよいじゃろうと思ったわけじゃ」


「だったら一言いってもらえれば」


「そうしたら、我を敵と認識しないであろう。しかも通常の攻撃では捌いてしまうかもしれん。一番いいのは何かと考えた末、思いついたのが『竜咆』じゃ。あれは問答無用で敵の魔素を削り取るからの」


「なるほど……死にたくなければあの状況から魔素を吸収仕返せというわけですね」

「そういうことじゃ。まさか天井に逃げられていたとは思わなんだ」


 進化してからというもの、時々俺はあり得ないほどの速度で移動できたりする。

 あのときも、足に魔素を乗せたら、できてしまった。


「まだ、そういった特殊技能に覚醒した感じはありませんね」

 同じ種族、たとえばオーガ族でも、使える特殊技能に差がある。


『岩投げ』が使えないオーガ族は全体の三割くらいいる。『赤肌』などは九割近くのオーガ族が使えるので、難易度によって率が違うのだろうと俺は思っている。


 経験を積むと、ときどき今まで使えなかった特殊技能が使えるようになったりする。

 いつ、どうやってというのは分からない。


 ある日突然「使えるかな?」と思ったり、いつもと違う感覚に違和感を覚えたりして、自覚する。


 俺はいまだ素盞鳴尊が使えるであろう特殊技能に開眼していない。

 一応「これかな」というのはあるが、完全ではないのだ。


 俺の感覚によると、敵の魔素を吸収するものは「持っていない」と思う。

 そもそも、魔素は強さの源だ。


 その者が持つ魔素量によって、強いか弱いか大まかに判断できる。

 それを吸い取って自分のものとする。小覇王ヤマトは、どれだけチートだったんだか。


「追い込んでみたものの、そのような気配もないし、こりゃ違うかなと思ったわけじゃ。まさか生きていたとは驚きだったぞ」


「生きていたよ! 殺そうとしやがって、このババア」

 これだから竜種は喧嘩っ早いと言われるのだ。


「お主の魔素についてはどうじゃ? もしかするとまだ魔素の使い方を上手く理解していないのかもしれんからの。以前の魔素量は知らんが、いまは普通のオーガ族と比べると二十倍どころか、三十倍くらいあるのではないか? 魔素量がそれだけあるということは、それを使う特殊技能の用意ができているということでもある」


 力の使い方さえ分かれば、さらに強くなれるのではないかとトラルザードが言う。

 本当だろうか。


 するとこれまで黙っていた軍師セイトリーが、魔素の減少と回復について少し話してくれた。


樹妖精じゅようせい種は、大地に張った根から魔素を吸収しますが、それだけでは足らない場合があります。枝葉からも魔素を吸収しています。それらの魔素は誰のものでもない、大気中を漂っている魔素になります」


「俺たちの食事と同じかな」

 誰の者でもない魔素を体内に取り入れて自分のものとする。


「そうですね。私たちは器に魔素が十分ないと嫌な気分になります。魔素は身体を強化したり、魔法を撃ったりすれば減ります」

「当然だな」


「はい、当然です。そのため私たちは食事や睡眠で多数の魔素を吸収させます」

「分かる。俺もここへ来るまでの間、やたらと腹が減って、通常の何倍ものメシを食う羽目になった」


「つまり、私たちはどのような種族であろうとも、魔素を吸収する過程は驚くほど似通っています。しかも溜める場所も同じです」


「支配のオーブだな」


「そうです。私たちは魔素を吸収するタイミングや方法が分かればそれを横取りすることは可能となりますし、支配のオーブに魔素が溜まる仕組みが分かれば、そこから引き抜く事も可能になるかもしれません」


「というと、俺に足らないのは知識……と考える可能性があるわけか」


「あくまで可能性の話ですが、そういうことです。駄目だったからと諦めずに、知識を得るところからはじめてみるのもいいかもしれません」


「いきなり致死性の攻撃を食らうよりかはマシだな」

 どんな特殊技能を持っているのか分からないが、魔素関連で何かあるかもしれない。


 魔素に関係した特殊技能か。いいことを聞いた。

 その辺の考えを中心に何か使えるものがないか、試してみるのもいいだろう。



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― 新着の感想 ―
>敵の魔素を吸収する特殊技能……聞いたことがない話だが、〜 窮鼠覚醒編174で登場の<吸魔>が丸っと忘れ去られている。 あの時の描写から秘匿特殊技能の可能性もあるけど、本人達からも説明済みでの、この展…
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