7. ◇侍女の独り言◇『脱・コルセット』
こちらに滞在が決まったので、侍女長様にお願いして人手を増やして貰う事にしました。
侍女としての能力は言うに及びませんが、何よりも私と同じ気持ちで姫様にお仕え下さるかどうかが重要です。
姫様を愛でる事。
その為にあらゆる努力を惜しまない方を望みます。
という事で、面接をしました。
難しい事は致しません。
同じ趣味の方は感じるものがありますのですぐに決定しました。
翌朝から嬉々として働いて下さっています。
姫様のお支度は何気に争奪戦ですね。勿論、私は不戦勝ですが。
今日は、この国の王女殿下とのお茶会です。
お側に控えながら、会話の内容など知らぬ振りをするのが侍女の務めなのですが、ねえ。
周りの方々の表情をうかがってみると、見事な無表情の中で、時折目元や口元が引きつっているのが確認出来ました。
ですよね。
姫様も苦笑しそうになる表情を何とか押し止めておいでです。
側妃様からのお手紙には笑みを浮かべてらっしゃいましたが。
その後は、和やかな歓談になりました。
そこで話題になったのが、姫様がお召しのドレスです。
私は、こちらこそが王女殿下の本題ではないかと思っていますが。
こちらの国のデザインとは大分違いますからね。侍女の方々も興味深々です。
我が国では数年前に『脱・コルセット』を致しました。
今は胸の下で切り替えて、ふんわりさせたり、大胆に身体のラインを出したりと、色々楽しめるデザインが主流になっています。勿論、姫様はふんわり派。
実はこのデザイン、私の考案です。
社交界デビューの時に、どうしてもコルセットは厭だと仰る姫様の為にデザイン致しました。
お気持ちは分かります。あれは一種の拷問具ですからね。
二人の姉姫様にもご協力頂き、王家発のファッションとして流行させる事に致しました。
年配の方々からは眉を顰められましたが、若いお嬢様方には大変好評で、そのまま定番になりました。
締め付ける事がなくなったので、健康的になりましたしね。お医者様からもお墨付きを頂いたんですよ。後付けですけれどね。
そんなドレスに王女殿下が興味を示されました。
出来れば今度の舞踏会に着て行きたいとの事。
姫様がこちらをうかがっています。お応えしたいのですね。
姫様のお願いとあらば、私に否やはありません。
サポートが必要ですが、皆様力強く頷いて下さいました。心強いですね。
今日を入れて五日ですか。
王室のお針子隊の方々にも出動願いましょう。
こちらの国でも『脱・コルセット』しちゃいましょうか。
ありがとうございました。