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北のまちに降る雪  作者: ことわりめぐむ
序章
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序章


この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体・事件とは一切関係ありません。


作中にメインで出てくる国名と人物は全く架空のものであり、実在はしていません。作品の世界観上、一部実在する国や文化を引用していますが、話の内容は完全なフィクションです。

 僕の楽しみは、空の上から、地上をみおろすことだけだった。  


 地上は、華やかで命にあふれている……こことは違う世界。  


 苦しい事や悲しい事に負けないように、一生懸命に生きている。  


 そんな姿に僕は、恋をした。



   序章   



 スノウが目を開けると、灰色に曇った空が見えた。  

 いや、正しくは空と言うよりも…雲。

 今まで自分が立っていた雲から、本当に降りて来られたのだろうか……と体を起こし彼は周りを見渡した。

 自分が座り込んでいる地面は空と同じ色で覆われて、触ると冷たい。見上げれば首をおかしくしそうな高い建物に囲まれた少し薄暗い路地。  

 金色の髪、白い首筋、そして背中。今まで倒れていた証拠みたいに体中に白い雪が積もっていた。

 雪は衣服の裾を少し湿らせ、長い時間ココで空を向いて眠っていたのが分かる。

 「雲じゃなくて……これが雪なんだなぁ」

 文献では知っていたが、はじめて手にする氷の結晶は、落ちてくるのを手のひらで受けるとあっという間に溶けて水にかわり、指の間から地面に落ちていった。  

 そんな普通の現象がとても新鮮で、雪の結晶が流れていった手を、楽しそうにスノウは眺めている。

「本当に地上におりられたんだなぁ」  

 幸せが彼を包んだ。  


 話は過去に戻る。  


 今日も同じとき、いつもと同じ時間、同じ場所で、スノウは過ごしていた。  

 毎日…毎日あきもせずに地上を写す水鏡をただ見つめているだけの一日。

 周りからは、呆れられていた。

 「スノウ、いいかげん飽きただろう」  

 自分の体に存在するもう一人の自分が、大きな声で退屈だとわめきだす。

 「飽きない」

 水鏡からは決して目を離さずにスノウは相手に言った。

 「スノウ・クアスまだ見てるの」

 薄暗い部屋に声が響く。

 スノウの姉のセレン・カルティナだ。

 「俺が見てるんじゃなくて、スノウが見てるんだよ」

 姉の言葉に怒ってクアスが答えた。しかし目線はスノウの意思が強く泉から決して離さない。  

 スノウ達は生まれたときから、ひとつの体で二つの人格を共有している。人格は各個に名前があってスノウはクアスという名の人格と体を共有していた。

 「ホントにスノウは地上がすきね」  

 「うん‥‥」

 瞳は泉から離さずに恥ずかしそうに頷く。

 「っていうかなにがそんなに興味を持つの」

 疑問に思った、スノウの姉は何が映っているか泉を覗き込む、スノウが慌てて泉の中をかき混ぜると波が見ている景色を消し去る。

 「なによ。意地悪ね」

 「カルティナ、いいじゃない帰りましょう」

 そういって姉は部屋から出て行った。  

 波立つ泉が落ち着くと、その泉には一人の少女が映っていた。

 「‥‥‥‥地上じゃなくな、この子を見てましたって言えばいいだろ」  

 邪魔者な姉がいなくなったことで、クアスが冷たく話し出す。

 「姉さんたちに好きな人が出来ましたって言えって?」

 そんなはずかしいことできるわけがない‥‥。

 ただ見てるだけで幸せなんだから。

 


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