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俺は人生に、この誰もが救われない社会に復讐する  作者: へいたれAI
第二章 飛躍
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第三十五話 四国入り

 

 爺さんに情報を依頼してからわずかに2日後に連絡が入り、新たな情報がもたらされる。


「あのバブルとかいうやつか、あれのせいであっちこっちの地方都市で、そろそろやばいのが出始めているという」


 爺さんの声には、どこか深刻な響きがあった。

 あとから合流してきた橘さんがリリーナさんに詳細な情報をもたらした。


 橘さんの伝手を通して、かつてリリーナさんの旦那様、梓の父親が作った企業グループの一つ丸亀造船が危機に陥っているという。

 爺さんからの情報では「丸亀造船」は海軍の仕事も受けた、比較的堅実な経営をしていた会社のはずだった。

 今回の危機は、丸亀造船が取引していた地元の銀行が、いきなり融資を断ってきたらしい。

 橘さんが調べてきたことには、その高松銀行が桜華院高松銀行というらしいが、ここ最近始まったいきなりの不景気で、本業が芳しくない所に、大蔵省からの数々の規制により、新たな融資ができない状態らしい。


 更には借金の返済を求められているらしい。


「婆さん、丸亀造船の財務は簡単に調べられますか」


 俺は、眉間に皺を寄せながら尋ねた。


「ああ、簡単だ。それこそ、そこの榊原にでも言えばすぐに公式な決算報告書は出せるだろう」


 婆さんの言葉に、俺は榊原さんに視線を向けた。


「宝塔様。証券会社に尋ねればすぐにでも有価証券報告書は手に入りますが……」


 榊原さんが言うには、この時期でなくともどこの企業も決算書にはお化粧をしているらしく、特にこの時期はひどいらしい。

 そんなこと言ってもいいのか大蔵省。

 だが、多かれ少なかれどこの企業もそのようなことがあるらしい。


「ああ、そうだね。なら、私が海軍さんにでも聞こうか。さすがに取引先のことくらいは把握しているだろう」


 婆さんはそう言うとホテルから東京の海軍省に電話をかける。

 その後複数の電話をかけて「一応呉のお偉いさんを紹介されたけど」婆さんの言葉に、俺は新たな戦いの予感を感じた。


 この国の経済は、まさに病に侵され始めている。

 その最初の患者という訳でもないだろうが、早めに罹患したのが高松造船だったという訳か。

 詳細で正確な情報が無い現状ではわからないが、それでも多分俺にはそれを治す力がある。

 丸亀造船の危機は、俺にとって新たな挑戦の機会となるだろう。


 *****

 四国入り


 今年に入ってから、地価の暴落が始まった。

 地方の都市は、そろそろバブルの猛威が始まりつつある。

 夏休みに入ったばかりなのを良いことに、俺は爺さん、婆さんを連れて、法子さんに、今回は基金から橘さんとリリーナさん、それにあずさまでもが付いてきた。


 俺たちは早速羽田から飛行機で海軍基地のある広島に向かった。

 現地の海軍基地には取引関係にある造船会社の詳細な情報があるらしい。

 婆さんに海軍の人を紹介してきた人から聞いたらしい。


 広島空港からは、空港に海軍さんが用意してくれた車に乗り、呉の海軍省呉出張所二建屋に入った。


「海軍さんが車まで用意しているなんて、婆さん、誰にここを紹介されたんだよ。」


 俺の驚きに、婆さんは涼しい顔をしている。

 婆さんは、当たり前の顔をしながらズンズン中に入り、応接室で、お偉いさんに会った。

 会議室では海軍省のお偉いさんを待っていた。


 彼はここ呉で海軍省呉分室の所長で、主に呉での艦船の造船修理を担当しているという。

 そこで早速婆さんは、仕事を出している丸亀造船について聞いてきた。


「丸亀造船ですか……悪い噂は聞いておりませんが。それに今も一隻、新型海防艦の建造をお願いしておりますが。」


 お偉いさんの言葉に、俺は首を傾げた。仕事がないわけではなさそうだ。

 色々と聞いても、発注先の海軍からは悪い話は聞かなかった。

 尤も、最近の不景気で、来年あたりの海軍予算が削られないかを心配していた。


 なら、直接丸亀造船に行って状況を確認しないわけにも行かない。

 ということで、今日のところは、海軍さんが用意してくれた呉のホテルで一泊して、明日四国に渡ることにした。


 流石に呉のホテルは、豪華ではあったが、ここのメインターゲットが海軍関係者ばかりのビジネスユースで、部屋も狭く、全員がばらばらになっての宿泊だ。


 今日は珍しく一人の夜かと思ったら、法子さんが夜に俺の部屋に来た。

 女性同志で何か話があったのか、とりあえず問題ないということで法子さんを部屋に入れて、夜を楽しんだ。


 本当に最近は法子さんと二人きりになることがなかったので、この夜はとても新鮮だった。法子さんの成熟した肉体が、俺の腕の中で甘く蕩けていく。


 その吐息が、俺の耳元で熱く囁かれ、俺の理性を麻痺させた。



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