第三十二話 桜華院基金の設立と国際送金:シンガポールでの誓いと、深まる絆
今年のゴールデンウィークは、桜華院リリーナ基金の設立とその基盤固めに奔走していた。
4月中には、婆さんの絶大なコネクションのおかげで、法的な「箱」だけは整った。
婆さんは、この基金設立のため、普段は電話一本しか寄こさないような霞が関の高峰先生までもを文字通り「走らせた」という。
景気が落ち込み、多くの企業が資金難に喘ぐ中、新たに巨額の基金が設立されるという話は、どこもかしこも協力的だったというのも大きな理由だろう。
「まったく、あそこまで焦っていたのは、うちの宝塔様のお眼鏡にかなうためだったんでしょうねぇ」
婆さんは、得意げにそう笑っていた。
だが、一番の難関は、シンガポールの俺の口座から、この基金へと資金を合法的に、かつ迅速に動かすことだった。
「資金の国際送金は、セキュリティも厳しく、規制も複雑で、まさにウルトラCの連続だったわ」
後で法子さんがそう教えてくれた。
俺には皆が簡単にしているように見えたが、その裏では、爺さんと婆さんの持つ裏社会のコネ、そして法子さんの専門知識が、昼夜を問わず駆使されていたのだ。
この桜華院リリーナ基金の代表には、もちろんリリーナさん自身が就任した。
事務局長には、長年の忠誠心と実務能力を買われた橘さんが、そして事務員には、若くして有能な美咲さんが配された。
もちろん、顧問弁護士には婆さんと法子さんを付けてある。
これで、桜華院家からどんな文句が来ようとも、合法的に、そして力強く跳ね返す体制が整った。
そして、ゴールデンウィークの真っ只中、俺たちはシンガポールにいた。
爺さん、婆さん、法子さんはもちろん、リリーナさん、梓、そして橘さんと美咲さんまで、総勢7人での大所帯だ。
観光も兼ねてはいたが、主な目的は、シンガポールでの資金送金ルートの最終調整と、現地での人脈構築だった。
シンガポールでの数日間、リリーナさんの圧倒的な美しさは、街行く人々の目を惹きつけた。白い肌が、南国の灼熱の陽光の下で一層輝き、吸い込まれるような青い瞳が、異国の煌びやかな街並みを映し出す。
彼女が歩けば、誰もが振り返り、その絵画から抜け出してきたかのような佇まいに、息を呑む。梓もまた、母親譲りの美しさと、若々しい活気で、通り過ぎる人々の視線を集めていた。
高級ホテルのスイートルームで、リリーナさんは恐縮したように俺に尋ねた。
その声には、まだどこか戸惑いが感じられる。
「宝塔様、本当にこのような贅沢をさせていただいて、よろしいのでしょうか…これまで、私どもは……」
彼女は言葉を濁したが、その瞳は、俺への感謝と、そして微かな遠慮を宿していた。
長年の苦労と、常にひっそりと生きてきた彼女にとって、この煌びやかな世界は、まだ慣れないものなのだろう。
「もちろんです。リリーナさんたちには、これまでの苦労を償う以上の生活を送ってもらいます。そして、これはあなた方の新たな人生の始まりに過ぎない」
俺はそう言って、彼女の手に優しく触れた。
彼女の肌は、絹のように滑らかで、その温もりが俺の心に安らぎを与えた。
リリーナさんの指が、俺の指にそっと絡みつく。
その仕草だけで、俺の心は高鳴る。
それは、庇護者と被庇護者という関係を超えた、もっと深く、そして甘美な繋がりを予感させた。
シンガポールでの滞在は、単なる資金移動だけでなく、俺とリリーナさん、梓との関係を、より確固たるものに変える時間となった。
昼間は、爺さんや橘さんと共に、複雑な金融取引の最終調整を行う傍ら、リリーナさんと梓を連れて街を散策し、束の間の休息を楽しんだ。
そして夜。
シンガポールの煌びやかな夜景を眼下に望む、高級ホテルのスイートルーム。
法子さんや爺さん、婆さんがそれぞれの部屋に戻った後、俺は、リリーナさんと梓と共に、贅沢な時間を過ごした。
夜の闇が深まるにつれ、二人の美女の存在感は一層増し、俺の心を揺さぶる。
リリーナさんのプラチナブロンドの髪が、夜景の光を反射して輝く。
彼女の吐息が、俺の耳元で熱く、甘く響く。
梓の初々しい嬌声が、夜の闇に吸い込まれていく。
異国の地で、二人の美女を心ゆくまで堪能する、その背徳感にも似た快感が、俺の全身を駆け巡った。
それは、単なる肉体の交わりではない。
互いの存在を深く認め合い、魂の奥底で結びつくような、甘美な時間だった。
この夜のシンガポールは、俺にとって忘れられない思い出となるだろう。
そして、リリーナさんと梓との関係は、この夜を境に、さらに深く、甘美なものへと変貌を遂げていく。
彼女たちは、俺の復讐の道を照らす光となり、俺の人生に、計り知れない豊かさをもたらしてくれることを、俺は確信した。