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俺は人生に、この誰もが救われない社会に復讐する  作者: へいたれAI
第二章 飛躍
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第二十一話 2月の大暴落、そして巨万の富への飛躍

 

 年が明け、新年を祝う空気も束の間、市場は徐々に不穏な空気に包まれていった。

 大発会の日、日経平均は予想通り急落。

 誰もが一時的な調整だと高をくくったが、それはまだ序章に過ぎなかった。

 俺の記憶通り、株価は一時的に持ち直すかのように見えた。

 だが、それは嵐の前の、あまりにも不気味な静けさだった。


 1月中の相場は、大発会の急落から横ばいが続いた。

 市場は、まるで大きな息を吸い込むかのように、静かにエネルギーを溜め込んでいる。

 この「嵐の目」のような平穏は、一般の投資家には安心感を与えただろう。

 だが、俺は知っていた。この静けさの先に、真の地獄が待ち受けていることを。

 俺は、シンガポールでの最終仕込みを終え、この「嵐の目」の中で、静かに獲物を待ち構えていた。1月中の相場だけで、俺の資産は驚異的なスピードで膨れ上がっていた。

 シンガポールで運用していた資金は、年明けからたった1ヶ月で、当初の10倍以上、640億円という途方もない金額にまで達していたのだ。


 そして、2月。市場は完全にパニック状態に陥った。

 年が明けてから緩やかに下落していた株価は、まるで堰を切ったかのように、加速度的に暴落し始めた。


「日経平均、前日比-1200円! 戦後最大の下げ幅を記録!」


 テレビから響くアナウンサーの絶叫に近い声が、日本のリビングを恐怖に陥れた。

 証券会社のフロアでは、ディーラーたちの怒号と悲鳴が入り乱れ、電話回線はパンク状態に陥っていた。

 企業の倒産、個人の破産が連日のようにニュースを賑わせ始め、街からは活気が消え、人々の顔からは笑顔が失われていった。


「宝塔様、すごいことになっていますわ……!」


 法子さんからの電話の声が、興奮と、そして少しの恐怖で震えていた。

 シンガポールの口座からは、想像を絶するような利益が毎日、毎時間、秒単位で計上されていく。

 モニターに表示される数字が、まさに天文学的な速さで跳ね上がっていくのを、俺は冷静に、そして着実に利益を確定させていった。


「まだ道半ばだ、法子さん。これは、俺の復讐の第一歩に過ぎない。市場が混乱の極みに達するまで、俺は決して手を緩めない」


 俺の声は、自分でも驚くほど冷静だった。

 この暴落は、俺にとっての**『追い風』**だ。

 過去に俺からすべてを奪った社会への、冷徹な復讐の第一幕。

 市場が混乱の極みに達するまで、俺は決して手を緩めるつもりはなかった。


 この混乱の中で、皇道学館の生徒たちは、そして彼らの親たちは、どうなるのだろうか。

 俺の知る未来では、多くの名家が没落し、新たな富裕層が台頭する。

 それは、まさに激しい世代交代であり、富の再分配だ。

 俺は、その流れを肌で感じながら、自らの計画を実行に移していく。


 学校では、生徒たちの間に不安な空気が漂い始めていた。

 登校する生徒たちの顔には、それまでの自信や傲慢さは影を潜め、どこか怯えの色が浮かんでいる。親の会社が危ないという噂、友人の実家が破産したという話が、ささやき声のように校内を駆け巡る。

 華やかだった学園生活にも、少しずつ暗い影が差し込み始めていた。


「村井様、経済状況がこんなにも悪化するなんて……信じられませんわ」


 梓は、フォーラムの集まりで、青ざめた顔で呟いた。

 その瞳には、混乱と絶望の色が宿っていた。

 彼女もまた、この国の未来を担う者として、目の前の現実に打ちのめされているようだった。

 萬斎先輩もまた、憔悴した表情で市場の動向を分析している。

 彼の顔からは、余裕が完全に消え失せていた。

 彼らがようやく、俺の言っていたことの真実を、肌で感じ始めたようだ。


「まだ、これは始まりに過ぎない。これからが本当の勝負だ」


 俺はそう言うが、彼らの不安を煽るようなことはしなかった。

 しかし、彼らがこの状況から何かを学び、将来に活かしてくれることを願った。

 俺の復讐は、ただ社会を破壊するだけではない。この混乱の中で、俺が新たな社会の秩序を築き上げるための、礎でもあるのだから。


 1月の相場だけで俺の資産は640億円にまで増えた。

 そして、2月に入り、更なる暴落が始まった時、俺は、その莫大な資産を、まるで大博打を打つかのように、下げ相場に全額を突っ込んだ。

 さすがに今度は100倍のレバレッジは掛けられない。

 しかし、シンガポールのシステムが許すギリギリの、30倍のレバレッジを掛けて、俺は『売り』のポジションを積み上げていった。


 それは、まさに心臓が凍りつくような瞬間だった。

 一歩間違えれば、640億円が瞬時に消え去る。

 だが、俺の脳裏には、平田嶺としての未来の記憶が鮮明に焼き付いている。

 この2月、市場は底なし沼のように深く沈むことを、俺は知っている。


 一秒ごとに、俺の資産は爆発的に膨れ上がっていく。

 モニターの数字が、まるで生き物のように跳ね上がる。

 640億円、700億、800億……。

 呼吸をするのも忘れるほどの緊張感の中で、俺は静かに、しかし確実な勝利を確信していた。


 *****

 激動の相場と学年末試験:嵐の中の静かなる成長


 2月から3月にかけては、中学生の俺としては学年末試験などがあり、学校を休むことが許されない。

 だが、シンガポールでの相場については、あらかじめ完璧な指示を出して準備が終わっていたため、直接的な問題はなかった。

 それでも、相場が気になり、俺の意識は常に、教室と金融市場の間をさまよっていた。


 授業中も、相場が気になりほとんど身に入らなかったが、そこは平田嶺としての記憶があり助かった。

 数学の複雑な問題も、英語の長文読解も、俺の脳裏に焼き付いた過去の知識が、それを解く鍵となる。

 まだ中学生程度ならば、この程度の二重生活はどうにかなったというのが正直なところだ。

 これが高校生ともなると、もっと専門的な知識が求められるため、正直言って自信がない。


 しかし、俺は知っている。

 この学年末試験が終われば、春休みに入る。

 そして、その間に、市場はさらなる底へと向かうことを。

 俺は、その時を待ち、次の手を打つための準備を整えていた。


 無事に学年末試験を終えて、学校は春休みに入る。

 学内は相変わらず、株価の暴落の話題で落ち着かない。

 生徒たちは、親の会社がどうなるか、友人の家庭がどうなったかと、不安げな表情で互いに情報交換をしていた。

 しかし、そのまま春休みに入り、学生たちとのつながりは一旦少なくなる。

 彼らもまた、それぞれの家庭の事情や、将来の不安と向き合うために、散り散りになっていくのだろう。


 それでも、連絡先を交換している少数の学生からは、ちょこちょこと連絡が入る。

 しかし、ほとんど電話だけで済むため、俺は法子さんと一緒に、ひたすら相場に注視していた。

 連日のように、市場の暴落を告げるニュースが流れ続ける。


 日経平均は、平田嶺の記憶通り、2月から4月にかけてほぼ一本調子で下落を続けた。

 市場関係者は、ようやくパニックに陥り始め、連日のようにニュースでは企業倒産や個人の破産の報が流れる。

 そして、それと連動するように、シンガポールの口座では、俺の仕込んだ先物売りが、とんでもない利益を叩き出していた。


 俺の資産は、日を追うごとに膨れ上がり、それはもはや、俺の当初の想像をはるかに超える金額になっていた。

 この暴落相場は、俺にとって、まさに富の泉だった。

 しかし、俺は知っている。この狂乱の裏には、多くの人々の絶望と、失われた未来が横たわっていることを。

 俺の復讐は、まだ終わらない。

 この混乱の中で、俺が新たな秩序を築き上げるための、戦いは、これからが本番なのだ。

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