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俺は人生に、この誰もが救われない社会に復讐する  作者: へいたれAI
第一章 雌伏
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第十五話 投資の進捗と深まる法子さんとの絆:嵐の前の静けさ

 

 燃えるような太陽が降り注ぐ、まばゆい日本の夏。

 皇道学館の生徒たちがそれぞれの夏休みを満喫する中、俺の心は常に、シンガポールと日本の金融市場の動向に張り詰めていた。


 夏休みに入ってからも、俺は自身の**『宝塔ファンド』**の状況を毎日欠かさずチェックしている。

 モニターの向こうで、日経平均は狂気じみた上昇を続け、それに比例するように、俺の資産は着実に、そして驚異的なスピードで増えていった。

 数字が跳ね上がるたびに、胸の奥底で、冷たい炎が燃え盛るのを感じる。

 これは、復讐の炎であり、未来を掴むための熱だ。


 *****

 法子からの報告と新たなフェーズへの移行


 ある日の夕刻、法子さんがマンションに戻ってきた。

 その手には、分厚い運用報告書が握られている。

 マンションのリビングに差し込む夕陽が、彼女の顔を照らし、その瞳は、報告書の数字が示す**「成功」**に、歓喜と驚きを滲ませていた。


「宝塔様、今月の運用報告書です。素晴らしい利益が出ていますわ。まさか、ここまでとは……」


 法子さんは満面の笑みで報告書を差し出した。

 彼女の言葉は、率直な驚きと、俺の投資手腕への確かな信頼を含んでいた。

 彼女は、弁護士としての冷静さと、プロの視点を持っているからこそ、この短期間での資産の膨張が、いかに異常で、いかに戦略的なものであるかを理解しているのだろう。


 俺は報告書を受け取り、ちらりと内容を確認した。

 想定通りの、いや、想定を上回る結果だ。


「これでまた、新しいフェーズに進めるな」


 俺はそう呟き、法子さんの手を握った。

 彼女の指先から伝わる温もりが、俺の心を落ち着かせる。

 この温もりこそが、俺がこの戦いを続ける理由の一つだ。


「新しいフェーズ、ですか?」


 法子さんの声が、甘く、そして僅かな期待を込めて俺の耳に響く。

 彼女は、俺が次に何を考えているのか、言葉がなくとも察しているようだった。


「ああ。そろそろ、現物空売りの比率を変えていく時期かもしれない。本格的な下落に備える必要がある」


 俺の言葉に、法子さんは少し考え込んだ後、真剣な眼差しで俺を見つめた。

 その眼差しには、俺への深い信頼と、そして、これから起こるであろう嵐への微かな不安が入り混じっていた。


「現物空売り、ですか。それは、いよいよ本格的に市場の崩壊に賭けるということ……」


 彼女は言葉を選びながら、俺の意図を再確認するように言った。


「その通りだ。今の市場は、まさに『熱狂』の坩堝だ。誰もが上がり続けると信じ込んでいる。だが、その熱狂は必ず冷める。そして、その冷めた時こそが、俺たちが真価を発揮する時だ。現物空売りは、その冷めきった市場で、最大の利益を掴むための手段だ」


 俺の言葉に、法子さんは深々と頷いた。

 彼女の表情には、不安を乗り越えた、確固たる決意が宿っていた。


「分かりましたわ。宝塔様のご指示通りに、手続きを進めさせていただきます。私も、典子様や近藤様(爺さん)と連携し、市場の動きをさらに厳しく監視しますわ。そして、何か異変があれば、すぐに報告します」


 彼女の信頼が、俺の背中を力強く押してくれる。

 俺は、法子さんの存在が、この孤独な戦いにおいて、どれほど大きな意味を持つかを改めて実感した。

 彼女がいなければ、俺はこれほど冷静に、そして大胆に、事を進めることはできなかっただろう。


 *****

 深まる夜と甘美な絆:戦いの前の安らぎ


 リビングの窓の外は、すでに漆黒の闇に包まれている。

 夜の帳が降りるにつれて、法子さんの甘い香りが、俺の心を包み込んだ。


「宝塔様……私、本当に幸せですわ」


 法子さんの甘い声が、俺の耳元で蕩ける。

 その吐息が、俺の首筋を優しく撫でる。

 彼女の言葉は、飾り気のない、純粋な喜びを伝えてくる。


「俺もだよ、法子さん」


 俺は彼女の柔らかい髪を撫で、深く口付けた。

 唇が触れ合うたびに、法子さんの甘い香りが全身を包み込む。

 彼女の肌の温もり、そして俺の腕の中で小さく震える彼女の身体。

 そのすべてが、俺の心を安らぎで満たしてくれる。


 復讐という名の孤独な戦いを続ける俺にとって、彼女の存在はかけがえのないものだった。

 彼女は、俺の過去を知り、俺の決意を理解し、そして何よりも、俺を愛してくれている。

 彼女の愛こそが、俺がこの荒波を乗り越えるための、最大の原動力だった。


「ねえ、宝塔様……、この夏休みは、少しだけ、私だけの宝塔様でいてくださるかしら?」


 法子さんの声は、まるで懇願するように、俺の耳に響く。

 その言葉には、俺を独占したいという、ささやかな願望が込められていた。


「もちろんだ、法子さん。この夏は、君と過ごす時間を大切にする」


 俺は彼女を抱きしめ、額にキスをした。彼女の甘い吐息が、俺の首筋をくすぐる。

 復讐の炎が燃え盛る一方で、俺の心には、彼女という温かい光が灯っている。

 この光がある限り、俺はどんな困難も乗り越えられるだろう。


 *****

 静かに進行する水面下の情報戦


 夏休みはまだ始まったばかりだ。しかし、俺の頭の中では、すでに次なる段階への準備が着々と進んでいた。


 *****

 まずは、箱根での合宿。


 萬斎先輩との距離を縮め、彼が持つ萬斎財閥の情報網に食い込む絶好の機会だ。彼は実質的にサークルを牛耳っているため、その裏にはきっと、この国の経済を動かす「見えない手」が隠されているはずだ。

 そして、同期である白麗澪先輩との関係も、さらに深める必要がある。

 彼女の置かれている境遇は、俺の復讐の炎をさらに燃え上がらせるだろう。


 そして、爺さんが調べてくれるアメリカとイギリスの闇の情報。

 榊原由美との接触で、海外からの「日本潰し」が単なる噂ではないことが明らかになった。

 その背後には、どのような巨大な金融機関や、どのような闇の組織が関わっているのか。

 爺さんの情報網が、そのベールを剥がしてくれるだろう。


 婆さん(典子)もまた、表の社会でその辣腕を振るい続けている。

 大蔵省の榊原由美との繋がりは、今後も重要な情報源となるだろう。


 俺の知らないこの世界の『裏』が、少しずつ明らかになっていく。

 そして、その情報が、俺の復讐計画をさらに加速させるはずだ。

 狂騒の終焉は、刻一刻と近づいている。

 その時、俺は、この国の真の姿を暴き出し、新たな時代を築き上げるための、大きな一歩を踏み出すだろう。

 そのために、俺は、今、この法子さんとの温かい安らぎの時間を、心の糧としている。


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