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俺は人生に、この誰もが救われない社会に復讐する  作者: へいたれAI
第一章 雌伏
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第十一話 白麗幸との再会と学園内の権力構造

 

 茶道のお茶会に参加して以来、俺と白麗幸の関係は少しずつ変化していた。

 学園内ですれ違うと、彼女は必ず俺に会釈をしたり、時には短い会話を交わしたりするようになった。

 彼女は、俺が「新しい力」になりうると見抜いたと言っていた。

 その言葉の真意は、まだ測りかねているが、彼女が俺に協力的な姿勢を見せていることは確かだ。


 ある日の放課後、俺が図書室で資料を調べていると、幸がふらりと現れた。


「村井様、また熱心でいらっしゃいますね」


 彼女は俺の隣の席に座ると、静かに本を開いた。


「白麗様もですか?」


「ええ。わたくしは、学園の歴史について調べておりましたの」


 幸はそう言って、古びた書物を俺に見せた。

 そこには、皇道学館が創立された経緯や、歴代の生徒たちの功績が記されていた。


「この学園は、日本の未来を担う人材を育成するために設立されました。貴族も平民も関係なく、優秀な者が集い、切磋琢磨する……それは、桜華院様と同じ考えのようですわね」


 幸は意味深な笑みを浮かべた。

 彼女は、梓と俺との会話の内容を、どこかで知っているのだろう。

 学園内には、様々な情報網が張り巡らされている。


「ええ。桜華院様とは、意見が合う部分が多いですね」


「村井様は、この学園の、そしてこの国の未来を、どのようにご覧になっていらっしゃるのかしら?」


 幸は再び、あの鋭い質問を投げかけてきた。俺は少し考えてから、答えた。


「俺は、この国がもっと公平で、誰もが努力すれば報われる社会になってほしいと願っています。貴族も平民も関係なく、真に優秀な者が評価されるべきだと」


 俺の言葉に、幸は静かに頷いた。


「わたくしも、同感ですわ。しかし、この国の現状は、あまりにも……」


 彼女は言葉を濁したが、その表情には深い憂いが浮かんでいた。

 白麗家は仙台の地方財閥に繋がる子爵家ではあるものの、本家筋からは澪を政略の駒程度にしか考えておらず、そのために幸と澪に数人の使いを付けて東京に出しているような状況だ。

 学園内での幸の振る舞いからは想像もつかないほど、子爵家内での彼女たちの扱いは雑なものだと推測できた。

 しかし、だからこそ、彼女は現状を変えたいと願っているのかもしれない。


「白麗様、この学園の権力構造について、もう少し詳しく教えていただけますか?」


 俺が尋ねると、幸は少し躊躇いながらも、口を開いた。


「ええ。この学園の生徒会は、四大財閥の子弟によって固められています。特に、生徒会長を務める日向院彰様は、高畠財閥系の御曹司で、かなりの実力者です。彼は、学園の運営にも深く関わっており、各サークルの予算配分や行事の企画など、学園の様々な事柄に影響力を持っていますの」


 幸は、具体的な人物の名前を挙げながら、学園内の権力構造について詳細に説明してくれた。

 日向院彰、四大財閥の一つである高畠財閥系の御曹司であり、生徒会長。彼を動かすことができれば、学園全体に大きな影響を与えることができるだろう。


「なるほど……。では、三条院雅は、その日向院様とはどのような関係なのですか?」


「雅様は、日向院様とは幼馴染で、非常に親しい間柄ですわ。生徒会副会長を務める黒崎麗華様も、石峰財閥系の黒崎財閥の令嬢で、日向院様の側近として知られています」


 幸の言葉は、俺の頭の中に学園内の相関図を鮮明に描き出した。

 四大財閥が学園の権力を掌握し、その中心に日向院彰がいる。

 そして、雅は彼の友人で、黒崎麗華は側近。

 この構造を理解することは、俺の学園内での動きをより効果的にする上で不可欠だ。


「白麗様、貴重な情報をありがとうございます。もし、また何か困ったことがあれば、いつでも相談してください」


 俺は幸に礼を言い、彼女の協力を得るための布石を打った。

 幸は、俺の言葉に少し驚いたようだったが、すぐに微笑んだ。


「ええ、喜んで。村井様のお力になれることがあれば、いつでもお申し付けください」


 彼女の言葉は、俺の学園内での立場をさらに強化してくれるだろう。

 俺は、この学園を舞台に、静かに、しかし確実に、その影響力を広げていく。


 *****

 法子さんとの「戦略会議」


 その日の夜、法子さんと俺は、シンガポールでの投資状況と、学園での人間関係について話し合った。


「宝塔様、学園生活は順調のようですわね。桜華院のご令嬢と萬斎様、そして白麗様……皆様、あなたに興味を持っていらっしゃるようですわ」


 法子さんは、俺の報告を聞きながら、冷静に分析していた。


「ああ。特に萬斎先輩との個人的な繋がりは、この先の計画に大きな意味を持つだろう。全国規模の財閥である萬斎財閥は、四大財閥とは異なる情報網を持っているはずだ。それに、夏の合宿というのも好都合だ。向こうのホームグラウンドで、さらに深く探れる」


「その通りですわ。学園は、未来の財界や政界の縮図ですもの。そこで影響力を持つことは、非常に重要です」


 法子さんは、俺の戦略を深く理解してくれている。彼女は、俺の復讐計画における、最も信頼できるパートナーだ。


「シンガポールでの『宝塔ファンド』の運用状況はどうだ? 資金は足りているか?」


「ええ、ご心配なく。日経平均の上昇に伴い、資金は順調に増えております。それに、爺様が買い取った怪しげな会社の件も、順調に進んでおりますわ。裏社会の情報を得るためのパイプとしても機能しています」


 法子さんは、俺の言葉に力強く頷いた。

 爺さんが手に入れた会社は、表向きは小さな貿易会社だが、その実態は情報収集と資金洗浄の拠点として機能している。


「婆さんからは何か連絡はあったか?」


「典子様も、資産家の方々からの相談が増えていると報告がありました。株や土地の売却を検討している者も少なくないようです。中には、すでに現金化を済ませた者もいるとか」


 法子さんの言葉に、俺は確信を深めた。

 狂騒の終焉は、もうすぐそこまで来ている。

 賢明な者たちは、すでに身構え始めているのだ。


「法子さん、そろそろ次の段階に進む時が来たかもしれない。学園内での影響力を拡大し、経済的な準備も加速させる。そして、その過程で、この国の真の権力構造を暴き出す」


 俺の言葉に、法子さんの瞳が強く輝いた。


「承知いたしました、宝塔様。わたくしは、いつでもあなたの剣となり、盾となりますわ」


 その夜、俺たちは互いの決意を確かめ合うように、深く抱きしめ合った。

 学園を舞台にした、俺の復讐劇は、今、本格的に幕を開けたのだ。

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