パジャリコ自己解釈小説
いよわ様のアプリコットとパジャミィの自己解釈マシマシな小説です。
苦手な方は閲覧注意です。
パジャミィ
https://youtu.be/aBZqxfnvaVA?si=TFyJvmNXgVWBA-c0
アプリコット
https://youtu.be/_uMDEIPgmFI?si=aNHFeT9DIMl28k5j
いよわ様YouTubeチャンネルhttps://youtube.com/@igusuri_please?si=NCt7vyami94WrjUI
この小説は、いよわ様の二次創作ガイドラインに則り、作成されています。 https://note.com/igusuri_please/n/n03cf704465bf
あれは、私が小学生だった頃の話。初めて一人で寝た時、夜の暗闇やたった一人の部屋が、とても怖かったのを今でも鮮明に覚えている。そんな時、ある不思議な夢を見た。
私が泣きながら眠りに落ちると、目の前には紫色のドアだけがあり、周りには何も無い空間が広がっていた。すると、ドアの向こうから、
「大丈夫、怖くないよ。入ってきて。」
と囁くような声が聞こえてきた。とにかく私は誰かに会いたくて、ドアノブを回した。すると、中にいたのは青いパジャマを着たお人形さんのようにキレイな金髪とビー玉のような透き通った目を持つ女の子だった。彼女とは初めて会ったはずなのに、なぜか何度も遊んだ友達に会うような感覚だった。
「ねぇ、ここはどこなの?あなたは誰?」
そう私が尋ねると、彼女は優しい口調で答えた。
「ここは、あなたと私だけの秘密基地。私はパジャミィ。よろしくね、リコちゃん。」
何故パジャミィが私の名前を知っていたのか、今考えると不思議だったが、その時の私は特に気にしなかった。
その秘密基地には様々な形のクッションやヘンテコな形で色とりどりの照明、使い方のわからないブラウン管テレビや、床に散らばったたくさんのおもちゃがあった。
「中に入って!さぁ、遊ぼう!」
そうして私とパジャミィは毎晩秘密基地で遊び、私達はすぐに打ち解けた。夢の中だということは当時の私もわかっていたけれど、確かに私達は親友だった。
それから私はとんどん成長し、背丈が伸びて、顔つきも大人っぽくなっていった。それと同時に、周りに嘘をつかなければな、ないことも増えていった。前までは本音で話し合っていた友人とも、いつしか建前でしか話せなくなり、つまらない。それでも、パジャミィにだけは、いつも本音で話すことができた。それから私はだんだん朝が怖くなっていった。
「学校、行きたくないなぁ…ずっとパジャミィと一緒に遊んでたいよ…」
「大丈夫、夜になったらまた会えるよ。」
そんな会話をしている内に、また朝が来てしまう。
でも、私は薄々感じていた。パジャミィとは、いつかお別れをしなくちゃいけないことを。パジャミィはイマジナリーフレンドだということを。頭でそのことを理解していても、やっぱり心では違うと否定したかった。いつまでもパジャミィと遊んでたい。それから時間が進むことさえも怖くなって、眠るまでの間、昔感じていた深夜の孤独を、思い出してしまう。
この空間は息苦しい。赤仄暗い闇の中に醜い化け物がいる。体の中に入っていく。やめて、来ないで。まるで終わらない悪夢の中にいるみたい。早く、早くパジャミィに会いたいのに。どうやっても眠れない。助けて。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
深夜怖い。
この状態が何日間続いただろうか。数えることすら嫌だ。もう無理だ。限界だ。そう思って、ただひたすらに独りで泣いた。暗闇の中で、枕を濡らして泣き続けた。そうして泣きつかれた時、ようやく私は眠りに落ちた。
目を開けると、見慣れた紫色ドアがある。ドアノブを回すと、やっぱりそこにパジャミィはいた。そして何も言わずに、ただ私を抱きしめた。それからは何をしたかは覚えてない。ただ、2人でずっと泣いていたことだけを覚えている。きっとパジャミィは、何も言わずともわかってくれていたんだ。私の気持ちを、私の恐怖を、同じだけ味わって、同じだけ泣いてくれた。
しかし、私が最も恐れていたことは、ついに起きてしまう。
私はいつものように眠りに落ち、いつものようにドアノブを回した。でも、部屋の様子がどこかおかしい。クッションやテレビは片付けられて、床のおもちゃももうほとんど残っていない。私は激しく動揺したが、パジャミィはいつもの優しい口調で言った。
「ごめんね。もう、お別れしなくちゃいけないの。ごめんね。」
「何…言ってるの?ねぇ、パジャミィ…またいつもみたいに遊ぼうよ、昨日のおままごとがまだ途中だったでしょ?」
「もうわかってると思うけれど、私はリコちゃんのイマジナリーフレンドなの。だから、いつかはお別れしなくちゃいけない。あなたはこれから、大人になっていく。でも、最後に一つだけ、聞いてほしいの。私はリコちゃんに、素敵な大人になってほしい。これからいろんなことを経験して、いろんな苦労をすることになる。でも、私と遊んでた時の無邪気な心、子供みたいな純粋な心は、ずっと忘れないでほしい。捨てないでほしい。」
わかっていた。わかっていたんだ。イマジナリーフレンドは、いつかは忘れられてしまう存在。このままパジャミィのことも、大人になる頃には忘れてしまうのかもしれない。それでも、パジャミィは私が忘れていた気持ちを届けてくれた。私の心を整理する時間をくれた。その気持ちが、何よりも嬉しかった。床には、まだ散らかったおもちゃが少しだけ、残っている。私はおままごとの男の子役の口調で、
「さぁ、遊ぼうぜ!」
そうパジャミィに言った。
私は音楽をかけ、おままごとをして、トランプをして、パジャミィとの最後の時間を、子供の頃の気持ちのまま楽しんだ。
けれど、溢れる音楽が流れ終わったなら、淋しいけれど、お片付けをしなくちゃいけない。映画のエンドロールが流れるように、夕暮れが近づくにつれ、陽だまりがだんだんせまくなるように、卒業式の音楽がいつかは止まるように。何事にも終わりの時間はやってくる。
「私のことは忘れても、忘れないでね。」
「ふふっ、それ、何だかヘンだよ。」
「…ここではお別れでも、私はあなたの心に、ずっといるから。」
「…うん。」
「おやすみなさい。リコ」
「おやすみなさい。パジャミィ」
私は今、母親になり、娘を育てている。今、娘は小1で、最近は何でも
「今日、学校で新しいことを習ったよ!」
という風に私に報告してくる。その様子が実に可愛い。子供の気持ちに寄り添うというのは、難しいものだ。大人になるとやはり、嘘や建前を使わなければいけない場面はやはりどうしてもあり、それでも何かにを発見する、何かを全力で楽しむ純粋な心は今でも忘れないようにしている。誰かに同じようなことを言われた気がするが、どうにも思い出せない。ある日、娘がいつもの報告をしてきた。
「昨日ね、ママの知らないお友達が1人増えたんだよ!」
「へぇ、良かったじゃない。何ていうお名前なの?」
「パジャミィちゃん!」
私は一瞬だけ、あの日々を思い出した。パジャミィはいつまでも、私達の側にいてくれるのだろう。
寝る前に私はいつも同じことを呟く。こうすると、なぜかよく眠れるから。
「おやすみなさい。パジャミィ」