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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
第三章 便利な魔法と色々な仕事

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73.農家の事情

「今日もよろしくお願いします」


 小麦色に育った小麦を横目に今日も小麦の収穫が始まった。私が農家の人たちに挨拶をすると、農家の人たちは慣れた様子で自分の配置につく。


 私が風魔法で小麦を刈り取り、乾燥魔法をかけると、小麦の束を脱穀機の近くに置く。農家の人が穂から実を脱穀機で取り、シートの上に散らばった小麦を集めて袋に入れる。


 そんな一連の作業を慣れた手つきで続けていった。小麦を全て刈り取って乾燥させ、脱穀機の傍に置く。その時、農家の人が話しかけてきた。


「そうそう、ノアちゃん。今後の作業について相談があるんだが」

「相談ですか?」

「コルクさんのところで相談してもいいかい?」

「はい、もちろんです」


 一体なんの相談だろう? 気になりつつも、作業の続きをした。農家の人たちの表情は明るいものだし、そんなに深刻な相談ではないかもしれない。


 そのまま作業をしていき、全ての小麦を袋に詰めることができた。


「よし、作業完了だ。じゃあ、ノアちゃんよろしく頼むよ」

「任せてください」


 小麦の袋をいっぱい積んだ荷車に魔動力を発動させ、自動で車輪を動かすように仕向けた。すると、持ち手を掴んでいる農家の人は重い荷車を引かなくて済む、方向を決める時だけ動かせばよくなる。


「この魔法があるお陰で随分と楽に小麦が運べるようになったよ」

「私たちも使えるものなら使ってみたいねぇ」

「こんな便利な魔法があるなら、覚えてみたいな」


 魔動力の魔法は農民のみんなには大好評でいつも褒められている。魔動力は使い方を工夫すれば、とても便利な魔法であることは間違いない。これからも色んな使い方を試してみよう。


 魔動力で荷車が動き、作物所までの道を進む。夏とは違い涼しい季節になったから、汗もかかずに作物所まで辿り着いた。いつものようにお店の中に入り、カウンターのところに小麦を積み上げる。


「コルクさーん、来たよー!」


 声を上げると、奥から物音が聞こえてきた。しばらく待っていると、コルクさんが姿を現した。


「良く来たな。今、小麦の清算をしてやる」


 そういうと、コルクさんはカウンターの上に積み重なった小麦の量を測り始めた。順々に小麦の袋の重さを測り、今日の清算額を計算していく。


「よし、いつも通りの重さだ。支払いはこれくらいだ」


 お金を受け取る、今日もいっぱい稼いだな。稼いだ一割を農民の人たちに配った。本当ならここで終わる予定なんだけど、今日は農民の人から相談があるみたい。


「なぁ、コルク。相談があるんだが」

「おう、どうした?」

「もう少しでうちらの小麦が収穫されるだろう? その作業があるから、ノアちゃんのところで小麦の収穫を手伝うことが出来なくなるんだ」


 そうだ、そろそろ農家の人たちの小麦の収穫が始まる時期だ。ということは、私のところで小麦を収穫出来るのはあと数日ってことなのかな?


「それは参ったな。あんまり在庫がないから、農家の小麦が納品されるまで作って欲しかったんだが。さて、どうするか」


 コルクさんは困ったように腕組をして考えている。農家の人たちは自分たちの仕事があるから手伝えない、て言っている。確かに難しい問題だ、これを解決するためには他から人手を借りなくてはいけない。


 他の人手ねぇ……考えつくのはクレハとイリスかな。


「少しの期間だったらクレハとイリスの三人で小麦の収穫が出来ると思うけど」

「いいのか? あの二人は魔物討伐をしているが」

「そんなに長くない期間だし、大丈夫だと思う。二人にお願いしたらきっと受けてくれると思うよ」

「そうか、なら二人にお願いしてみてくれ」


 この方法しかないよね。長い期間じゃないし、それだったら二人も快く受けてくれると思う。


「ノアちゃんには迷惑かけるね。その二人にもよろしく伝えておいてくれないか」

「はい、分かりました。ちゃんと言っておきますね」

「これなら安心して、小麦の収穫をすることが出来るな」

「じゃあ、あと数日間だけだけどよろしくな」


 農家の人たちは言い終わると家に帰っていった。


「ノアにはいつも助けられている、ありがとよ」

「ううん、気にしないで」

「もしかしたら、またノアにも別のことをお願いするかもしれない。その時はよろしく頼むな」

「私に出来ることがあるなら、任せてよ」


 きっと私に出来ることは他にもあるはずだ、その時は快く協力してあげたい。少しは村のためになったかな、そうだったらいいな。


 ◇


 夕食を食べ終わた私は昼間にお願いされたことを二人に話し始める。


「二人にお願いしたいことがあるんだけど、いいかな?」

「どうしたんだ?」

「今、小麦の収穫を手伝ってくれている農家の人たちは自分たちの小麦を収穫しないといけないんだって。だから、お手伝いが出来なくなるらしいの。でも、小麦の在庫はなくて、まだ小麦を作らないといけないの」

「それは、大変ですね。小麦が作られないと、パンが食べられません」

「パンは主食だから、毎日でも食べたいよね。でも、このままだとイリスが言ったように食べられなくなるの」

「それは大変なんだぞ!」


 小麦が作れなくなると、パンが作れなくなる。そのことを伝えられた二人は焦ったような表情になった。


「そこでね、二人にお願いがあるんだ。農家の人たちの小麦が納品されるまで、また一緒に小麦を作って欲しいの。魔物討伐のこともあるとは思うけれど、こっちを手伝ってほしいんだけど……いいかな?」

「もちろんですよ。魔物討伐は急ぎの仕事じゃありませんし、小麦の収穫を手伝いましょう」

「ウチも手伝うのに賛成なんだぞ! もう主食のパンがないと、物足りなくなるからな!」

「そっか、二人ともありがとう」


 二人の協力を引き出せたみたい、これで小麦の問題は片付いた。


「久しぶりの小麦の収穫なんだぞ。魔物討伐で鍛えた体を使って、どれだけ早く仕事が出来るようになっているのかな」

「そうですね、私も魔物討伐でかなり鍛えられましたし、以前よりも早く終わりそうです」

「農家の人がやってくれていたみたいに早く終わりそうだね」


 以前の二人とは違う、魔物討伐で鍛えられた体だから作業はとても捗りそうだ。二人は本当に頼もしくなったなぁ。


「早く終わったら何する? 何もしない時って何をすればいいのか分からないぞ」

「孤児院の時は暇な時間があったら手伝いをやらされていましたし、そういう時って何をすればいいんでしょう?」


 うーん、と二人は考える。


「そういう時って遊んだりしていなかったの?」

「遊んではいたけど、そんなに楽しくなかったんだよな。動けばお腹が減るし、食べ物はそんなになかったから、あんまり動かないようにしていたんだぞ」

「あと、自分たちで食べるものを探していたりしてましたね。だから、遊び方が分からないっていうのもあります」

「そうなんだね。私はずっと召使いをしていたから、遊びなんてなかったなぁ」


 みんな遊んでいなかったせいか、遊びに楽しさを覚えていないみたいだ。まぁ、私も転生した身だし今更遊びに夢中になることはないけどね。


「ノアは暇な時間は家で何をしているんだ?」

「暇な時間ねぇ……ほとんど家のことをしているかな。掃除したり、薪を作ったり、何か便利なものは作れないか考えたり」

「ノアも遊んでいないんですね。時間が出来たら何しましょう?」


 結局私も遊びらしい遊びをしていない。みんなで時間を潰せることってあるかな?


「そうだ、みんなでパンを作ってみない? それにジャムも」

「パンとジャムですか?」

「ウチらにも作れるのか?」

「やり方は教えるよ。やってみない?」


 二人は顔を見合わせると、笑顔になった。


「はい、やってみたいです!」

「なんだか、楽しそうなんだぞ!」


 よし、決まり! 小麦の収穫後に時間が余ったらみんなでパンとジャム作りだ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 思考がワーカーホリックな気がする・・・
[一言] 農家の皆は本当にノアの魔法を褒めているのでしょうか……使えるものなら使ってみたい、覚えてみたいという言葉の裏に妬み嫉みが無いと良いのですけれど…… 農作業はいくら鍛えていても腰に来ますからね…
[一言] 身体のキレも開拓地に来た時点よりも応じて高まってそうだしイケそう
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