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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
最終章 騒動と祭り

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273.収穫祭の準備(2)

 家に帰ってきた私たちは急いでモモたちの世話をして、外に放牧した。それが終わると、ようやく収穫祭の準備ができる。台所に立った私たちはキッチンカウンターに置いた材料を眺めていた。


「これだけあれば、大丈夫」

「すんごい量だな。いつもの倍以上はあるぞ」

「それだけ食べる人がいますからね。沢山作らないといけません」

「そういうこと。今回は村のみんなに私たちの料理を食べてもらうことになるからね、気合を入れて作るよ」

「ウチに任せておけ! うんと美味い麺を作ってやるぞ!」

「私も頑張って作ります」


 収穫祭に出す料理はラーメン。それに必要なスープは私が作り、麺はクレハとイリスに任せた。作業分担をして、昼過ぎに開催する収穫祭に間に合わせる算段だ。


「じゃあ、教えた通りに麺を作ってね。その間に私がスープを作るから」

「分かったぞ! なんか、いつもよりも楽しい気分なんだぞ!」

「収穫祭に出す料理ですからね、自然とワクワクしちゃいますね」

「だね。自分たちの作った料理を誰かに食べてもらうのがきっと楽しみなんだよ」

「みんな、食べてくれるかな?」

「美味しそうに食べて欲しいですね」


 お喋りしながら作業は始まった。まずは鶏ガラの下処理だ。鶏ガラを水で綺麗に洗うと、寸胴の中に鶏ガラと水を入れる。そして、少しの間茹でると余分なものが浮き出てくる。それが出てきたら、ザルに鶏ガラをあける。


 そして、余分な物が出てきた鶏ガラを綺麗に洗うと、再び寸胴に水と一緒に入れる。後はその中に皮を剥いて切っておいた野菜と昆布を入れた。その寸胴を火にかけて、沸騰するまでチャーシューの準備をする。


 まな板の上でオーク肉を紐でグルグル巻きにして、肉ずれが起きないようにしっかりと固定する。その肉を沸騰してきた寸胴の中に入れて、一緒に炊く。ここで昆布を取り出しておくのも忘れない。


 沸騰の手前まで行くと、火を弱めてあとはゆっくりと煮出していく。普通だったら時間がかかるけど、ここで時空間魔法の時間加速を使う。寸胴に向けて時間加速を使うと、急激に寸胴の中身が煮立っていく。


 透明だった水に素材の出汁が滲み出て色が変わっていく。すると、いい匂いが立ち込めてきた。途中、チャーシュー用の肉を取り出して更に煮立たせていく。すると、スープは黄金色に色づいた。


「こんな感じかな?」


 時間加速を止めて、スープを小皿に入れて味見する。


「ん、上出来!」


 肉と野菜と昆布の出汁が合わさった、深い味わいのするスープだ。今回も良いスープが作れたな。


「スープができたんですか?」

「ウチらにも味見させろー!」

「はいはい」


 すると、私の声を聞いた二人が近づいてきた。その二人にも小皿にスープをよそって味見をお願いする。二人は嬉しそうな顔をして小皿に口を付けてスープを飲む。


「ん、とっても美味しいです!」

「美味いな!」

「色んな出汁が出てて、旨味が強いですね。スープの中でラーメンのスープが一番好きです」

「ウチもラーメンのスープが好きなんだぞ!」

「二人の合格点も貰えたし、これは優勝を狙えるかな?」

「狙えますよ! ノアの料理が一番です!」

「だな! ノアの料理に勝てる料理なんてないぜ!」


 冗談で言ったつもりだったけど、二人は強く肯定をしてくれた。そっか……優勝狙えちゃうかな? そう考えると、とても嬉しい気分になった。


 またそれぞれの仕事に戻り、今度は寸胴の中に入っている具材を取る作業だ。もう一つの寸胴を用意して、そこにザルを乗せる。そのザルに向かって寸胴を魔動力で持ち上げてスープを流し入れる。


 ザルでこされたスープが新しい寸胴の中に入っていく。全部入れ終わると、出汁を取り終えた具材がザルの中に山盛りになっていた。そのザルと取ると、濁りもなく具材のカスも入っていない澄み切ったスープが現れた。


 このスープを見ると達成感がある。なんだか、嬉しくなってニヤニヤと笑ってしまう。よし、スープもできたことだし、次は具材を用意しないと。


 鍋に醤油、みりん、酒、水を入れて、先ほど取り出したチャーシューを入れる。時間加速を使って煮出していくと、チャーシューに味が染み込んできた。


 十分に時間をかけて煮出すと、火から下ろして今度は冷ましながら味をしみこませていく。チャーシューに味を染み込ませている間にメンマの準備だ。


 タケノコを一口大に切り、切ったタケノコをフライパンに入れる。そのフライパンにスープ、醤油、酒、みりんを入れると、かまどにかけた。そのまま水分が飛ぶまで煮ると、メンマの完成。


 うんうん、これも上手にできている。本当は味玉も入れたかったけど、卵の数を用意するのが大変だったので味玉はなしにした。ちょっと寂しい感じになるけど、大切なのは味だよね。


 これで材料は全部揃った、後は下準備だ。味の染み込んだチャーシューを鍋から取り出すと、巻いてあった糸を全て解く。すると、肉の塊が現れるので、それを薄くスライスしていく。


 全ての肉をスライスすると、切ったチャーシューを器に盛り付けた。別の器にも出来上がったメンマを盛り付けておく。後は、ラーメンを提供する時にラーメンの上に乗せるだけだ。あ、長ネギを切るのを忘れてた!


 キッチンカウンターの上に乗っていた長ネギを取ると、長ネギを小口切りにしておく。綺麗に切り終わると、それも別の器に入れておいた。後は忘れ物ないよね……うん、大丈夫。


「二人とも、麺は作り終えた?」

「今、練っているのが終われば終わりだぞ」

「もうちょっと待っててくださいね」


 二人がせっせと麺を作っていた。その間に私は使った料理器具に洗浄魔法をかけて綺麗にして、片づけを進めた。黙々と片づけていると、二人から声がかかる。


「ノア、麺ができたぞ!」

「あとは、お願いします」

「うん、二人ともありがとう。じゃあ、麺を熟成させるね」


 できあがった生地に時間加速を使って、麺を熟成させる。見た目ではどれくらい熟成させたか分からないので、ここは感覚が頼りだ。数日置いたくらいの熟成にして……よし、ここだ。


「熟成が終わったよ。次に麺を細く切ろう」

「こんなに沢山の生地を切るのは大変そうだな」

「でも、三人で分けて切るのであっという間ですよ」

「そういうこと。じゃあ、麺を切るよー」


 三人分のまな板と包丁を用意して、今度は生地を切る。手を切らないように慎重に麺を切っていく。みんな真剣に作業をしていて無駄話はない。長い沈黙の中、麺を切る音だけが聞こえる。


「よし、できた」

「……私もできました」

「もうちょっと待ってくれ。……できた!」

「じゃあ、打ち粉をするから手で揉んでね」

「こんなに綺麗に切れたのにぐちゃぐちゃにするのか!?」

「でも、食べていた麺は曲がってましたよ」

「この行程も大切だから、ちゃんとやってね」


 それぞれのまな板に打ち粉をすると、綺麗に切れた麺を曲げて揉んでいく。時々、広げながらもギュッギュッと揉んでいくと、少し縮れた麺ができあがった。


「みんな、できたね。じゃあ、最後の熟成をさせるよ」


 それぞれのまな板に手をかざすと、時間加速を使う。熟成を進ませ、感覚でここだというところで止める。これで、美味しい麺ができあがったと思う。


「できたよ」

「ふーん。熟成って良く分からないな。本当にそれが必要なのか?」

「見た目では分からないけれど、麺の中身が変わっているから美味しくなっていると思うよ」

「パンでいう発酵みたいな時間ですよね。それなら美味しくなるのが分かります」

「そういうこと。じゃあ、現地で麺を茹でられないから、事前に麺を茹でていくよ」


 収穫祭の現場では麺を茹でるスペースがない。作ろうと思えば作れるけれど、みんなできあがったものを持ってくるから、そこで調理をするのはズルいような気がして止めた。


「時間停止をするんですよね。それで茹でたての状態を保って、食べる直前に魔法を切るんでしたっけ?」

「時空間魔法、便利だなー。ウチも使えればいいのに」

「クレハが?」

「お腹の空腹を抑えるために時間停止使いそうですね」

「そういう使い方もあるのかー! 時空間魔法、欲しくなったぞー!」


 あー! と、頭を抱えて本気で悩み始めた。空腹を感じないようにするんだったら、満腹を維持することもできるのかな? うーん、まだまだ魔法に可能性を感じる。


 そんなこんなで、二人とお喋りをしながら麺を茹でて、木枠に一人前ずつに分けて時間停止の魔法をかけた。あとは現地に行って、作っておいた器に盛るだけだ。収穫祭がすぐそこまで迫っている、楽しみだな。

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― 新着の感想 ―
ノア「空腹を感じたくないなら、何も感じないのが手っ取り早いよね?」ハイライトオフ となるに、豚骨ラーメン1杯
>空腹を感じないようにするんだったら、満腹を維持することもできるのかな? うーん、まだまだ魔法に可能性を感じる。  それは胃が止まるってことで、胃の中のものが次の消化器官に送られないから栄養を摂取で…
普通は消費期限を考えて当日が理想的なものの、この魔法があればそれが解消。全くもって羨ましい…
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