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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
最終章 騒動と祭り

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269.秋の嵐(8)

 村に向かっている最中、周囲は嵐の影響で色んな物が散乱しているのが見えた。石や枝はもちろん、どこかの家の壁の破片だったり、何かの木材だったりしている。


「周りに色んなものが落ちているな。みんなの家が壊れていないか心配だぞ」

「家の破片らしき物も落ちてます。あんまり良い予感はしませんね」

「家が潰されていないとは思うけれど、物が飛んできて一部が破損してるとかありそうだね」


 周りに落ちている物を見て心配が積もっていく。そのまま歩き続けると、村が見えてきた。まだ朝の早い時間だというのに、外には色んな人が出ていた。どうやら、家の外を確認するために出たらしい。


 私たちはそのまま宿屋へと向かっていった。もう朝食は食べたけど、いつもお世話になっているところが真っ先に気になったからだ。宿屋の近くまで行くと、宿屋の外には冒険者たちやミレお姉さんが出ていた。


「ミレお姉さん、おはよう!」

「三人とも無事!?」


 声をかけるとミレお姉さんが大慌てで駆け寄ってきた。そして、私たちの体を確認するとホッと胸を撫でおろす。


「どうやら、無事みたいね。安心したわ」

「まぁ、色々あったけど無事に過ごすことができたわよ」

「色々ってどんなこと?」

「窓が割れたり、屋根に木が刺さったり」

「屋根に木がっ!? えっ、それ……大変だったんじゃないの!?」

「凄く大変でした。でも、屋根はすぐに修理したので大丈夫です」

「ウチとノアで屋根は直っているから心配しなくてもいいぞ」

「木が突き刺さった屋根をすぐ直せるなんて……一体どんな魔法を使ったの?」


 驚きつつも不思議そうな顔をした。


「ほら、物を作る魔法があったでしょ? それで修理したの」

「物を作る魔法って修理もできちゃうの? 凄い魔法よねー」

「宿屋は大丈夫? もし、壊れているところがあれば直すよ?」

「ノアちゃんの魔法で直してくれるの?」

「うん。村のみんなの家を直して行こうって考えているんだ」


 家が壊れて困っている人がいると思う。だから、それを修理したらみんなに喜ばれるんじゃないかなって思った。この村は大事な村だから、困っていることがあれば手助けしたい。


 すると、ミレお姉さんは少し考え込んだ。


「それはノアちゃんの仕事じゃないし……。でも、困っているのは事実だし……。そうだわ! 男爵様に相談してみたらどう? みんなの家を修理する許可を得たほうがいいと思うのよ。勝手にやるよりは、ちゃんと話を通したほうがいいと思うわ」

「なるほど、それもそうだね。勝手にやったら、迷惑になる人も出るかもしれないし、そうしてみるよ」


 そうだ、勝手に動いたらダメだ。ちゃんと相談してから決めないと、迷惑になる人も出てくるかもしれない。ミレお姉さんに話しておいて良かった。


 私たちは修理を始めるよりも、先に男爵様に伺いを立てに行くことに決めた。


 ◇


 男爵様の邸宅に行くと、酷い有様だった。邸宅に太い枝が突き刺さっていたり、倒れた木が転がっていたり、窓が壊れていたりしている。


「うわー、これは悲惨なんだぞ。ウチらの時よりも酷くないか?」

「家が大きい分、被害が大きいように見えます」

「こんな状況になって忙しいと思うけど、話をしに行こう」


 男爵様の邸宅を見てドン引きしつつも、邸宅の扉を叩く。すると、執事の人が現われて中へと通された。連れてこられたのは男爵様の執務室。中に入ってみると、窓が全部割られていて部屋に石や枝が散乱している。


「凄い嵐だったな。三人の無事の姿を見れてホッとしている」

「男爵様も無事で良かったです」

「俺は大丈夫なんだが、邸宅が酷い有様になってしまってな。これからの事を考えると頭が痛い。それで、何の用だ?」

「実は……」


 私は嵐によって破壊された家の修理を申し出た。私の物を作る魔法があれば、壊れた部分を修理できると話すと男爵様は驚いた顔をする。


「そうか、物を作る魔法なら壊れた部分を修復することもできるのか。その魔法を使えば、壊れた家を修復できるな」

「はい。でも、私がこの魔法を作ることで困る人とかいませんか?」


 私の言葉に男爵様は腕を組んで考えた。


「うーん、そうだなぁ……。唯一いるとすれば、木工所とかか? 被害にあった家を修復するのも仕事に入るし、その仕事を奪うことになる。だけど、木工所には来年この村に移住してもらう人が住む家を作ってもらっているからな。正直言って、家造りが遅れることのほうが死活問題だ。だから、木工所には家造りに専念してもらうのが良い」

「じゃあ、私が家の修復を手伝っても良いってことですか?」

「もちろんだ、存分にやってくれ。ただ、見返りが無いのはダメだぞ。ちゃんと、対価を払ってもらいなさい。この修復を仕事として請け負う形にしないと、ノアが大変な目に合ってしまうからな」


 村人と対等な立場を維持するのであれば、正当な対価を得たほうがいい。そうじゃないと、私が施しをしたみたいで、今までと同じような関係性を保つことが困難になる。


「じゃあ、早速男爵様の邸宅を直しますか?」

「俺の邸宅よりも、村人を優先してくれ。きっと、困っている人がいると思う。先にそっちに手を貸してやってくれ。それが終わったら、良ければ俺の邸宅も直して欲しい」

「分かりました。先に村人のところへ行ってきます!」


 話はまとまった。後は、私が村人を訪ねて家の修復を請け負うだけだ。私たちは邸宅を飛び出していった。すると邸宅を出たところで、イリスが立ち止まる。


「あの嵐で怪我をしてしまった人がいると思うんです。だから、私は怪我をしている人のところに早く行ってあげたいです」

「分かった。じゃあ、イリスは村人の怪我を治しに行ってきて」

「ウチはノアの手伝いをするぞ。ノアが家を修復している間に他の家を回って修理するところがないか聞いて回るぞ」

「それは助かるよ。それぞれ分かれてやっていこう」


 私たちは大きく頷くと、それぞれで動き出した。よし、嵐の被害で困っている人たちを助けるぞ!


 ◇


 私はまず、家に帰った。マジックバッグを手にして、そのマジックバッグの中に沢山の材木を入れてから宿屋へと向かう。宿屋の外では冒険者たちも一緒になって散乱した物を拾って、掃除が始められていた。その中にミレお姉さんもいる。


「ミレお姉さん、男爵様から了承を得たよ! 家の修復をしてくれって」

「そうなの! それは助かるわ」

「それでね、無償の修理はしたらダメだって言われたの。だから、お金をもらうことになるんだけどいい?」

「もちろんよ、そうじゃないと対等じゃないわ。じゃあ、早速修理してもらおうかしら。こっちよ」


 ミレお姉さんに連れていかれると、宿屋の壁にヒビが入っているところがあった。


「沢山の物がぶつかって、壁がへこんでしまったの。ヒビも入ってしまって、凄く困っていたのよね」

「これくらいならすぐ直せるよ。任せて」


 マジックバッグの中から材木を取り出すと、適当な長さに切り出す。切り出した材木をその壁に当てると、創造魔法を発動させた。イメージするのは、ヒビの入っていない壁。しっかりとイメージすると、創造魔法を発動させた。


 すると、宿屋の壁が光り出す。光も一瞬で止み、その後にはヒビが綺麗に直った宿屋の壁が現れた。


「まぁ、すごい! あんなに太いヒビが入っていたのに、こんなに簡単に直るなんて! ノアちゃんの魔法は物を直すだけじゃなくて、修理もできて凄いわ!」

「ここは完璧に直ったよ。他のところは?」

「一部だけど窓も割れちゃって。それも直せる?」

「うん。割れた破片を集めて、元に戻すことができると思うよ」

「そうなの! それは助かるわ。こっちにある窓よ」


 またミレお姉さんに連れられて、修理する現場へと向かっていく。修理のお仕事はまだ始まったばかりだ。これから、どんどん直していくよ。

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― 新着の感想 ―
規模がここ(開拓地)ぐらいまでなら、大概は顔見知りだし代価ありの方が後腐れ無いでしょうね〜
まあそこはそうだよねー親しき中にも礼儀ありというか、きっちりするところはしとくべき
一応材料はあることになるが、魔力は大丈夫かな? あと見せびらかすことにもなるし、絶対に無償でやりそう……心配が増える
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