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260.ラーメン(1)

「「ごちそうさまでした」」

「はい、おそまつさまでした」


 夕食を食べ終えた私たち。今日も残さず食べてくれて嬉しい。


「今日は久しぶりに魚を食べられて良かったです。魚はまだ残っているんですか?」

「うん、まだ残っているから大丈夫だよ。向こうの宿屋で食べていた懐かしい味だったでしょ?」

「食べている時に夏の事を思い出したぞ。あー、楽しかったなぁ」

「また夏になったら行こうね」

「ですね。約束もありますし」


 使い終わった食器に洗浄魔法をかけて、二人が食器を棚に戻す。お喋りしながら片づけをすると、それぞれの楽器を持ってダイニングテーブルに戻ってくる。


「まずは基礎練習からね」

「分かってるぞ。基礎練習は大事だぞ」

「その後、曲を弾くんですね」


 いつものように食後の楽器練習が始まった。まずは基礎練習、一音ずつ正確に音を出す練習からだ。しっかりと音を出すことを練習したら、曲を弾く時に役に立つらしいから欠かせない練習だ。


 私はバイオリンを構えると、一音ずつ音を出していく。一音ずつ音を出すと言っても、色んな構えで音を出すのですぐには終わらない。丹念に音を出す練習をして、一つずつ復習していく。


 家の中ではしばらく色んな音が鳴り響いた。どれも綺麗な音で、聞くだけで気持ちが良くなる。お互いの音を聞いて、お互いのやる気の源になっていた。


 時間をかけて基礎練習をすると、ようやく手を止める。


「ふー、基礎練習はこれくらいにしようか。ちょっと休んだ後に曲の練習をしよう」

「はい。みんな、綺麗な音が自由に出せるようになりましたね」

「音が重なった時があっただろう? その時、いいなーって思ったぞ」


 一休憩がてら雑談をしながら休む。だらけた雰囲気が流れていると、あっ! と、何かを思い出したかのようにクレハが口を開く。


「そういえば、収穫祭に出す料理は決まったのか? 何も話を聞いてないんだぞ」

「そういえば、そうですね。もう作るものは決まったんですか」

「あれから色々考えたんだけど、これだ! っていう料理をとうとう見つけたの」

「決まったんだな! どんな料理だ?」

「まだ、私たちが食べたことのない料理でしょうか?」

「うん、ラーメンっていう料理を出そうと思うよ」

「「ラーメン?」」


 二人は不思議そうな顔をして傾げた。


「それはどんな料理なんだ?」

「色んなものから取った出汁の中に細い麺や具材が入った料理だよ」

「夏に食べたうどんと似ている料理ですね」

「似ているけれど、味は全然違うよ。まぁ、明日作る予定だから、楽しみにしてて」

「早速作るのか! 楽しみなんだぞ!」

「うどんは美味しかったですから、ラーメンも期待しちゃいますね」


 二人とも明日が楽しみだと笑い合った。これは気合を入れて作らなきゃね。


「じゃあ、休憩はこれくらいにして、曲の演奏でも始めようか」

「そうですね。今日は完璧な演奏をします」

「ウチも間違わないで演奏をするぞ」

「なら、始めるね。三、二、一……」


 口で数字を唱えると、楽器が一斉になり出す。重なり合った気持ちのいい音に耳を傾けながら、失敗しないように演奏を始めた。


 ◇


「よし、始めようか」


 今日の仕事を早めに片づけたし、料理の時間はたっぷりとある。気合を入れて美味しいラーメンを作るぞ。まず先に何を作るべきか……。


 スープを作ろうかな。そのスープに合うように麺や具材を作ればいいよね。そうと決まればスープの仕込みからだ。


 食糧保管庫から用意しておいた材料をキッチンカウンターに置くと、初めの材料を手に取る。まず、手に取ったのは鶏ガラだ。ザルの中に鶏ガラを入れると、流し台に移動する。


 そこで水魔法で水を鶏ガラにかけながら、汚れや血を綺麗に流れ落とす。余分なものを綺麗に落としたら。かまどに火を点けて、鍋でお湯を沸かす。お湯が湧いたらそこに鶏ガラを入れて、少しだけ茹でる。


 表面の色が変わってきたら、鍋を手に持って流し台に行く。それから、ザルにお湯ごと鶏ガラを入れる。それからまた水魔法で水をかけながら、浮いてきた汚れを落とす。


「ふー、綺麗になった」


 鶏ガラの処理は大変だ。でも、この工程をするから美味しいスープができる。だから、手を抜けないね。


 しっかりと汚れを落とすと、鍋に鶏ガラを入れる。あとは野菜だ。用意しておいた野菜の皮をむいたり、鍋に入れれるくらいまで小さく切ったりした。それらを鍋の中に入れて、最後に昆布を漬け込んだ水を昆布と一緒に入れる。


 材料を入れたらかまどの火に鍋をかけて、かまどの火を強火にする。水が沸騰するまでの間にチャーシューの用意だ。オーク肉を形を整えながら紐でグルグル巻きにすると、棒状の形になった。


 その肉を沸騰寸前まで熱くなったスープの中に入れて、一緒に炊く。この時、水に浸けておいた昆布を取り出しておく。そして、これからは火を弱火にして長時間煮込んでいく。その間にアクをお玉ですくうことも忘れない。


 スープ作りには時間がかかる。だけど、私には時間短縮の魔法がある。鍋に向かって時空間魔法の時間加速をかけると、スープの中身が高速で煮立っていく。


 どんどん、水のかさが減っていき、スープに色が付き始める。途中、チャーシューの肉を取り出しておいて、さらに煮立たせていく。すると、スープが透明な黄金色に変わった。


「……時間加速、やっぱり便利だ。数分で何時間も煮込んだスープができた」


 自分でやっておきながら、感動した。凄くいい匂いがするし、匂いを嗅いでいるだけでよだれがでてきちゃう。これが材料を入れて数分でできるんだもんな……凄い。


 ちょっと、味見でもしてみようかな? 小皿を取り出すと、その中にスープをすくって入れる。息をかけて少し冷ますと、スープを口の中に入れた。


「んー、美味しい!」


 これ、本当に自分が作ったの!? 鶏ガラの出汁がしっかり出ていてコクがあるし、昆布を入れたお陰で旨味が強くなっている気がする。ほのかに野菜の甘味も感じるし……うわー、美味しいなぁ。これがラーメンになるのか……すっごく楽しみ!


 鍋をかまどからおろし、そこに新たな鍋を置く。その鍋の中に醤油、みりん、酒、水を入れて、先ほど取り出したチャーシューを入れる。それからしばらく煮立たせるんだけど、ここでも時間加速をして時間短縮。


 あっという間に、醤油の味がついたチャーシューとラーメンに入れる醤油タレの完成だ。後はこのまま置いておいて、冷やしながらチャーシューに味を奥まで染み込ませないとね。


 残りはメンマ、味玉、麺か。よし、先に具材の調理を終わらせておこう。キッチンカウンターに近寄ると、今度はタケノコをメンマに変えよう。タケノコはもう茹でてあるから、あとはメンマの形に切って味を付けるだけだ。


 まな板でタケノコを切り、切ったタケノコを鍋に入れる。その鍋にスープ、醤油、酒、みりんを入れると、かまどにかける。そのまま水分が飛ぶまで煮る。水分が飛ぶとメンマの完成だ!


 よし、どんどん作っていくぞ。メンマを別の皿に盛り付けて、鍋に洗浄魔法をかける。その鍋に水を入れて、かまどにかけて沸騰させる。その中に卵を投入して、茹でる。半熟になるように時間をしっかり計って、火からおろして急いで卵を水魔法の流水で冷ます。


 冷めた卵の殻をむくと、白い卵が現れた。つるつるでプニプニで気持ちがいい。いけない、感触を楽しんでしまった。全ての卵の殻を剥き、皿に入れておく。その皿に醤油、酒、みりん、砂糖を入れる。


 これから時間加速を使って味を染み込ませると……味玉の完成! 味見したいけど、人数分しか作ってないからなー。これは夜の楽しみに取っておこう。


「最後は麺だね」


 美味しい麺を作るぞ。深皿に水、塩、創造魔法で出した重曹を入れて溶かしてかん水を作る。それからボールに小麦を入れて、小麦粉とかん水を混ぜてダマにしていく。さらにかき混ぜていくと、グルテンが出てきて生地が伸びてきた。


 その生地を創造魔法で出したポリ袋の中に入れて、少し休ませる。それが終わると、上から押さえつけて生地をまとめていく。生地が平べったくなったら寝かせるんだけど、ここでも時間加速をして生地を十分に熟成させる。


 あっという間に数日寝かせた熟成された生地の完成だ。次は麺を伸ばして切る。創造魔法で作ったとうもろこしで作ったコーンスターチを打ち粉にして、まな板の上で生地を伸ばす。


 伸ばした生地を折りたたんで、包丁で細長く切っていく。全てを切り終えると、切った麺をボールに戻してまた打ち粉をする。それから、手で麺を揉んでいく。すると真っすぐだった麺がうねった形になった。


 あとはさらに、麺を熟成させる。時間加速を使い、熟成を進ませた。熟成が終わり、魔法を解くと麺が完成した。いやー、結構時間加速を使ったなー。ラーメンって作るのがこんなに手間だったとは思わなかったよ。


 でも、手間をかけた分美味しくなったら嬉しい。二人が帰ってくる時が楽しみだ。

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― 新着の感想 ―
ああ、中毒性が無いはずなのに中毒性あるラーメン。 遂に現代食の罪の味がこちらにも降臨しちゃった
支那そばではなく、Lなラーメンでもなく、戦後日本を代表するRな国民食ですな。……化学調味料は使わない派ですか? とりあえず醤油ラーメンを作ったみたいですが……匂いとか漏れてませんよね?特にクレハ辺り…
ラーメンなら魚介出汁のもいいですよね。
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