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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
最終章 騒動と祭り

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258.子供たちの進歩

 今日は子供たちと遊ぶ日。遊具のところへ集まった子供たちはそれぞれ仲のいい子と一緒になって遊び始めた。だけど、そのほとんどが収穫祭に向けて練習を始めたのだ。


 遊具で遊ぶ子は少なく、ほとんどの子が踊りの練習をしていた。中には歌を練習している子もいて、遊び場はいつも以上に騒がしい。


 そんな中、私は魔法使いグループのみんなで集まっていた。


「見て見て! お人形さんができたの!」

「あら、本当! みんな可愛いわね」

「これで人形劇の練習ができるね」


 ティアナが持ってきたお人形たち。どうやら既存の人形をリメイクして、劇に使うことにするようだ。みんな上手にリメイクされていて、これだったら動いているところを見るのが楽しみになる。


「あとはこれを動かすだけね」

「ナレーションはどうする?」

「そうね……。私たちは動かすことで手一杯になりそうだし、ノアにやってもらうっていうのはどう?」

「えっ、私?」


 タリアが私をナレーションにしたいと言い出した。私が物語を話す役かー。


「でも、ノアは他の芸をするつもりだったんでしょ? 僕たちの人形劇に出ても大丈夫? 大変じゃない?」

「楽器の練習は順調だから、物語を読むくらいだったら平気だよ」

「物語だけじゃなくて、魔法も使うんだよね」

「そうだね。物語を話して、お人形が使う魔法を私が発動するよ」


 ちょっと怒り気味にティアナが言ってきた。ティアナのこの劇にかける情熱は凄いな。これは下手なところは見せられないね。


「物語の話は後で教えてもらうとして……。三人とも魔動力の練習は順調?」

「うん! 私、頑張ったよ!」

「じゃあ、成果を見せ合おうよ!」

「そうね、それがいいわ」

「順番に見せてもらおうかな」

「はい、はい! 私から!」


 すると、元気よくティアナが手を上げた。


「じゃあ、ティアナからね」

「見ててね。ちゃんと動かすから」

「ティアナ、頑張れー!」

「見せてもらおうか!」


 気合の入ったティアナは両手を握りしめて、強そうな顔になった。みんなで応援すると、ティアナは鼻息を荒くして人形に向けて手をかざした。


 さて、成果は? 黙って見守っていると、人形がゆっくりと起き上がった。うん、魔動力を使えている。


「人形が起き上がったわ! ティアナ、凄いじゃない!」

「だけど、本番はこれからだよ! どんな動きを見せてくれるのかな?」

「だね。ティアナ、頑張って!」


 ティアナが人形を動かして、私たちは盛り上がった。魔動力を使うのは難しいと思う。それを懸命に練習してきて、使えるようになったんだから、凄い!


 期待に満ちた目で見ていると、ティアナは真剣な表情で人形を動かし始めた。人形はまず腰を曲げて深々とお辞儀をする。それから元に戻ると右に跳ねたり、左に跳ねたりしてみせた。


 手を振ったり、頭を左右に振ったり、多彩な動きを見せてくれる。くるくるとその場で回り出して、ピタッと止まって見せた。そこで、人形はお辞儀をする。その瞬間、私たちは拍手をした。


「凄い、凄いわティアナ! 良くここまで動かせるようになったわね!」

「自然に人形が動いていたよ。ティアナがここまでできるようになっていたなんて、僕は驚いた!」

「ここまで動かすのに、沢山練習をしたんだね。凄いよ、ティアナ!」

「えへへ。私、とっても頑張ったの」

「うんうん、凄く頑張った感じがしたわ!」

「人形の動きが凄かったから、ティアナはとても頑張った!」

「本当にそうだね。ティアナは頑張った!」

「え、えへへ……」


 みんなで褒めちぎると、ティアナは恥ずかしそうに両手で顔を隠した。沢山褒められて照れてしまったようだ。


「あれだけ動かせるようになると、楽しいでしょうね」

「うん、とっても楽しい!」

「だよねー。先に練習をしていたティアナは収穫祭にまで間に合ったね。あとは僕たちか……」

「ちょっと、ルイ。どこまでできるようになったの?」

「そういう、タリアこそ……」


 ティアナの上達ぶりをみて、二人はちょっと怖気づいてしまったみたいだ。二人の魔動力はどれくらいまでできるようになったのかな?


「二人の魔動力もどれくらいになったのか見せてよ」

「うん、見せて見せてー」

「じゃ、じゃあ! 私から先にやるわ!」

「ま、任せた!」


 タリアが率先した。ぎこちない動きでみんなの前に出ると、深呼吸をする。


「スーハースーハースーハー」

「いつまでしているんだよ」

「う、うるさいわね。心の準備っていうのが必要なのよ」

「大丈夫! タリアお姉ちゃんならできるよ!」

「そうよね、できるわよね」

「さぁ、本当にそうかな?」

「もう、ノアったら! ふざけないでよ!」


 あらら、緊張をほぐそうとしたけれど逆効果だったみたい。タリアはもう一度深呼吸をすると、人形に向けて手を向けた。手を力ませると、人形がプルプルと震え出す。


 しばらく震えていると、人形がゆっくりと起き上がった。それでも、まだプルプルと震えている。


「震えてて、可愛い!」

「これ、わざと震わせてる?」

「ねぇ、どうなの?」

「わ、わざとじゃないわ! 魔力操作が上手くいっていないだけ! こ、これから動かすわね! 見てなさい!」


 どうやら、この震えは自然とそうなるみたいだ。どうやったら、あんなに震えるんだろう?


 そう思っていると、人形が動き出す。足を一本ずつ動かして歩いているみたいだ。うん、結構いい感じじゃない? このまま上手に動かせていけば……そう思った時だ。人形が凄い勢いで回り出した。


「わっ、凄い! 速い、速い!」

「ち、違うわよ! ちょっと、操作をミスったの!」

「そうなの? ノア、これはどういう状況?」

「うーん……力みすぎて魔動力が暴走しているのかも」

「魔力をちょろちょろ出して、動かすのが難しすぎるのよー!」


 どうやら、魔力操作が上手くいっていないようだ。タリアの場合、魔力を出すのが難しいらしい。物の動きよりも、魔力を上手に出すことに神経を使っているみたいだ。


 グルグルと回っていた人形はゆっくりと止まり、そのままゆっくりと歩き出す。動きはぎこちないけれど、ちゃんと動いている。それからぎこちないお辞儀をして、人形はパッタリと倒れた。


「タリアお姉ちゃん、凄かったよ!」

「中々いいと思うよ。この調子でもっと練習すれば、もっと上手くなるよ」

「そ、そう? まぁ、私にかかればこんなものよね。さぁ、次はルイの番よ」

「うっ……僕も負けていられない。見てて、僕の魔動力!」


 一瞬気まずそうな顔をしたけれど、すぐに真剣な顔になった。ルイは倒れた人形の傍に寄ると、手をかざした。しばらくは何も動きはなかったけれど、急に人形が起き上がる。


 大げさに手を振ると、また大げさに左に行ったり右に行ったりしている。もしかして、これは大げさじゃなくて操作が上手くいっていないんじゃ?


「なんか、動きが大きいわね」

「面白い、面白い!」

「人形の操作が難しいんだよ。どうしても、力んじゃって動きが大きくなるんだ」

「あー、なるほどね。ルイは操作が覚束ないんだ」


 魔力操作は難しいよね。でも、私の時はあっさりとできた気が……。やっぱり称号持ちとそうじゃないとじゃ、魔法の扱い方に差が出るのかな?


 人形は大げさに手足を動かして歩き、その場で大きくジャンプして見せた。だけど、着地が上手くいかなくて体を地面に叩きつける。それで人形は大人しくなった。


「ふー、僕はこんな感じだね」

「ルイお兄ちゃんも凄い!」

「ま、まぁ……やるじゃない」

「ルイももっと練習したら上手くなると思うよ」

「あー! 収穫祭まで間に合うかなー?」

「間に合わせるに決まってるじゃない。ティアナがあそこまでできたんだから、私たちだってできるはずよ!」


 タリアの気合を入れた声にティアナもルイもやる気になった。うんうん、その調子。これなら収穫祭で人形劇が見れるようになるね。


「じゃあ、早速人形を使って練習をしようか」

「うん! 私、頑張る」

「もっと上達して、みんなを驚かせるんだから」

「僕も上手くなりたい。ノアに練習を見て貰ったら上手くなるかも」


 一通りみんなの進歩を確認すると、魔動力の練習が始まった。子供たちがはしゃぐ声が響く中、私たちは集中して魔動力の練習を積んでいった。

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― 新着の感想 ―
なるほど。まさに「小学生は最高だな」(子どもは教えれば教える程どんどん吸収して自分のものにしていく様から)というわけですね ……しかし、彼女達は知らなかった。やがてこの技術がカミカゼドローンと呼ばれ…
習い事を子供の頃からってのはこういうことなんかなぁ…学習が早い早い
・・・あれ?誘拐された時、ボールをギュッとしてあげたら逝ってたような? ティンタクル「ほら、怖かったか汚いから触りたくなかったんだろ」 ゴリ「ギュッとではなく優しくコリコリしてあげれば・・・」 「「腐…
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