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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
最終章 騒動と祭り

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257.怪しい二人

 村のみんなで集まった会は大盛り上がりだった。楽器の演奏はとても良かったし、踊りを見るのも楽しかった。


 やっぱり、踊りを知らない人が多かった。もし、練習もないまま収穫祭になっていたら、踊れない人たちはつまらない時間になっていたかもしれない。


 大人は大人で盛り上がったけど、子供は子供で盛り上がっていた。踊れる子が率先してみんなに踊り方を教え、教わる子は楽しそうにでも真剣に踊りを学んでいた。


 歌も一緒に歌った。リズムに合わせて歌うのが大変だったみたいだけど、何度も何度も曲を聞いたり歌ったりしたら自然と口ずさめるようになったみたい。最後はみんなで楽しそうに歌っていたのが印象的だ。


 そんな中でクレハとイリスは二人でこそこそと何かを話している様子だった。いいや、二人だけじゃない。エルモさんも一緒になって、色々と話しているみたいだ。


 もし、エルモさんに関わる話だったら私も混ぜて欲しかったけど……話はそれじゃないみたいだ。エルモさんも入れて話をしているのに、エルモさんに関係ない話とは一体……。


 考えても答えは出なかった。まぁ、その内に分かるだろう。そう思っていると、翌日から二人は怪しい行動を取り始めた。


 それは、宿屋に行く前のことだった。


「なぁ、ノア。楽器を持っていってもいいか?」

「えっ、楽器を持っていくって……魔物討伐に?」

「はい。暇をみて、楽器の練習をしたいと思いまして。……ダメですか?」

「いや、だって……魔物討伐中に楽器の練習をするの? そんなの無理じゃない?」


 二人が魔物討伐に楽器を持ち出すと言い出したのだ。練習を沢山して上手くなりたい気持ちは分かる。だけど、魔物討伐中だよ? 危険に決まっている。


「練習は休憩中にやるつもりなんだ、だから心配ない」

「休憩中に魔物が襲ってくるかもしれないんだよ? 危険だよ」

「一応、周囲の魔物を倒してから練習をするつもりです。それなら、安全ですよね」

「まぁ、それなら演奏中に襲われる心配は低くなるけれど……心配だなぁ」


 正直言って、二人の楽器の練習は順調だ。基礎練習もしっかりしているし、曲の練習にも入ったところだ。無理に練習するほどヘタという訳ではない。そんなに演奏するのに自信がないのかな?


 もしかして、大人たちの演奏を聞いて危機感を持ったとか? 大人たちは長い時間楽器を触っていたから、私たちよりも上手なのは仕方がない。そんなに気にしなくてもいいのに。


「二人とも、楽器は上手に弾けていると思うよ。無理に練習しなくても、いつもと同じ練習をしていれば収穫祭には間に合うと思うけど」

「えっ、あぁ……そうなんだけど、楽器の練習を沢山しないと不安になっちゃうんだ」

「大人の演奏は上手かったですし、私たちの演奏はまだまだだと感じました。なので、ここはもっと練習をしないといけないと思ったんです」

「そんなに上手になりたいの?」

「うん、なりたいんだぞ!」

「はい、そうなんです!」


 凄い気合の入れようだ。そっか、二人は大人が演奏していたように自由に楽器を弾きたいんだね。そういうことなら、ちょっと不安だけど楽器を持ち出すことを許そう。


「うん、楽器を持っていってもいいよ」

「本当か!? やったぁ!」

「やりましたね!」


 楽器を持ち出すことを許すと、二人はハイタッチして喜んだ。すると、すぐにクレハは自分の楽器を持って、リュックの中に仕舞い込んだ。だけど、イリスはニコニコするだけで自分の楽器は入れていない。


「イリスは自分の楽器は入れないの?」

「えっ、あぁっ! ちょっと、ボーッとしちゃってて……い、今入れますね」


 話しかけると、物凄く戸惑っていた様子だった。慌てて自分の楽器を持つと、リュックの中に入れる。さっきまでその話をしていたのに、忘れるなんて……なんか怪しいな。


「さ、さぁ! 宿屋に行って、朝食を食べましょう!」

「おう! 今日も元気に行くぞ!」


 なんか、わざとらしい元気だけど……。何か隠している?


 ◇


 二人を怪しみながらも宿屋に着くと、いつも通りに朝食を食べる。その時、普段はしない話題が出てきた。


「そういえば、ノアは時々エルモさんのお店に行って昼食を食べているんですよね」

「うん、そうだよ」

「今日は行くのか?」

「うーん、今日はやることあるし行かないかな?」


 そう答えると、二人は顔を見合わせて嬉しそうな顔をした。


「そうか、行かないのか!」

「そういう時もありますよね!」

「……なんで二人が嬉しそうなの?」

「い、いや……深い意味はないぞ!」

「そ、そうですよ。深い意味はないです」

「……そう?」


 二人からエルモさんとの昼食の話題が出るのは珍しい。どうしてそれを聞いたのかも分からない。


「エルモさんに用事があったとか?」

「いや、そんなつもりはないぞ!」

「そうそう。エルモさんが一人でお昼食べるの寂しくないかなーって思っていただけです」

「そうなんだよね。エルモさん、一人で昼食を食べているのが気がかりで……やっぱり今日行こうかな?」

「えっ、行くのか?」

「だ、大丈夫ですよ。別の日にしましょう」


 エルモさんは一人で大丈夫だっていうけれど、食べに行くとそれなりに嬉しそうな顔をして出迎えてくれる。だから、行こうかな? と思ったけど、二人が前のめりになってきた。


 そんなに私がエルモさんと昼食を食べるのが気になる?


「まぁ、エルモさんは一人の時間も好きみたいだから、そんなに頻繁に行くのもなーっとは思っているんだけどね」

「そうそう。エルモは一人の時間が好きだからな、その方がいい」

「一人の時間って大切ですから、そっとしておくのもいいと思いますよ」

「そうだね、今日は行かないことにするよ」


 そう言うと、明らかに二人はホッとしたような表情をした。急にエルモさんを気にするなんて、どういった心境の変化だろう?


 やっぱり、昨日の秘密の話が関係あるんだろうか? 何を話していたか教えてくれないし、二人とも隠そうとしている。一体何を企んでいるんだ?


 ◇


 二人と別れて家に戻ってきてからも、二人の事が気にかかった。今まで秘密にすることなんてなかったのに、急にどうしたんだろう? 私、何かしちゃったかな?


 考えても答えは出てこない。でも、強引に聞くのは避けたいし、こっそり探ることなんてできないかな?


 今日やけにエルモさんの話題が出てきたから、もしかして二人はエルモさんのところに行こうとしている? それが本当だとしたら、今日二人はエルモさんの家に行くかもしれない。


 ……こっそり、エルモさんの家を探ってみよう。二人の姿があったら当たりだ。でも、こっそりするのは引け目を感じるからバレないようにしなくっちゃ。


 いつ頃行こうかな? 二人はやけに昼食の事を気にしていた。だから、昼食時を狙って行ってみよう。そしたら、二人がエルモさんの家にいるかもしれない。


 そうと決まれば、畑仕事を早く進めなくっちゃ。二人の秘密、分かればいいな。


 ◇


 そして、昼食時が来た。私はこっそりとエルモさんのお店に近づき、扉に耳を当てた。すると、中から人の声が聞こえてくる。こんな時間にエルモさん以外の人がいるなんて珍しい。


 さらに聞き耳を立ててみると、その声色からその人物が誰なのか分かった。やっぱり、クレハとイリスがエルモさんのお店に来ていたのだ。


 三人で何かお喋りをしているようだが、何を言っているか聞き取れない。一体何を話しているんだ? こういう時、魔法でどうにかできたらいいんだけど、そんな魔法はないしなぁ。


 こういう時のために新しい魔法の開発をしていたほうが良かったかも。既存の魔法に頼り切っていたから、新しい魔法を思いつく暇が無かったともいうけれど。


 しばらく、扉に耳を当てていると、今度はクレハのギターの音が聞こえ始めた。……楽器の練習を見て貰うのが目的? エルモさんなら良い演奏を聞き分けることができそうだけど……。


 それにしても、クレハのギターの音は聞こえるけれどイリスのフルートの音が聞こえないな。イリスは楽器の練習をしないんだろうか?


 あの時は自分の楽器を持っていかなくてもいい、みたいな雰囲気だったけれど……。クレハの練習を見るためだった? でも、そんな感じには見えなかったし。……ちょっと窓から覗いてみよう。


 窓にこっそりと顔を覗かせると、中が良く見える。三人でカウンターの前にいて、クレハはギターを弾いている。その隣で、エルモさんがイリスと向き合って何かをしていた。


 二人の間には一枚の紙があり、その紙に向かってイリスがペンを持って悩んでいるみたいだ。クレハがギターを弾いて、イリスが紙とペンで何かを書いている?


 ……分からない。一体何をしようとしているの?

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― 新着の感想 ―
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