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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
最終章 騒動と祭り

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249.強引な手段

 数日に一回、野菜が納品される。その野菜はどれも新鮮で採れたてで瑞々しかった。とても、在庫していた野菜を出荷したようには見えなかった。


 だから、野菜は確実にどこかで作られている。そんな話が派遣された人たちの間で交わされていた。でも、誰も野菜を育てている農家を見たことがない。


 派遣された人は躍起になって農家を回った。畑を隅々まで確認したり、離れた土地まで見に行く人もいる。だけど、誰も野菜を育てている畑を見つけることができなかった。


 大いに悩む派遣された人たちを見て、村の人たちや冒険者は勝利を確信した。あとは諦めて派遣された人たちが帰るのを待つだけだ。誰もがそう思っていた。


 だから、追い込まれた人が暴挙に出るなんて思ってもみなかった。


 ◇


「二人ともお疲れ様! 今日で注文された野菜を納品終わったよ」

「無事に終わって良かったな!」

「これで一安心です」


 今日も順調に野菜を収穫できた。毎日しっかりと野菜を収穫していたお陰で、沢山あった注文を全て終わらせることができた。これもみんなが協力してくれたお陰だ。


 リュックを背負って森を出ていくと村が見えてきた。夕日に染まった道を歩いていくと、冒険者ギルドに辿り着く。いつものように中に入っていって、受付のお姉さんにリュックを渡す。


 これで終わる。そう思って、嬉しい気持ちになっていた。その時、扉を乱暴に開ける音が響く。


「誰か、助けて!」


 その声に驚いて振り返ってみると、そこにいたのはティアナの兄のディルだった。その頬は赤く張れあがっていて、物々しい雰囲気だ。


 ディルの声に冒険者たちが集まり、私も話を聞くためにディルに近寄った。


「どうしたの、ディル。そんなに慌てて」

「ティアナがっ、ティアナが変なおっさんたちに攫われたんだ!」

「えっ!? ど、どうしてティアナが!?」


 その言葉にみんなが驚き、そして疑問に思った。どうしてティアナが攫われないといけないんだ。今の状況から考えると、攫われる可能性があるのは私のはずなのに……。


「どうしてそんなことになったの?」

「収穫祭でやる人形劇の練習を家でしていたんだ。そしたら、いきなり知らないおっさんたちが入ってきて、ティアナを連れ去った! 植物魔法を使えるのはこの子だって言って、ティアナを連れ去ったんだ!」

「そんなことっ……!」


 連れ去った人はこの村に派遣されてきた人たちだろう。その人たちはどうやら農家の家の中まで調べ始めたらしい。たまたま覗いた家がティアナの家で、魔動力を使っている場面に出くわしたみたいだ。


 その不思議な魔法を見てティアナを魔法使いだと思い、問題の植物魔法を使う人だと勘違いしたみたいだ。ようやく、見つけた植物魔法使いをその人たちは強引に誘拐した。


 本物は別にいるのに。


「おい坊主、そいつの顔とか髪の特徴とか分かるか?」

「うん、分かるよ」

「じゃあ! 今、紙をペンを出すからそこに描いて!」


 私は受付のお姉さんからリュックを再度渡してもらい、その中から紙とペンを取り出した。ディルに渡すと、素早く描き始めた。待つこと数分、攫った人たちの特徴が分かりやすい似顔絵が出来上がる。


「こいつらだよ!」

「こいつらの顔は見たことある。宿屋に泊まっていた冒険者たちだったはずだ」

「じゃあ! 宿屋に行ったら、そいつらいる!?」

「いや、もういないだろうな。とっくに近くの町に逃げていると思うぞ」

「だったら、街道を追えばそいつらに会えるね!」


 問題の人たちは冒険者みたいで、すでにこの村から出て行った可能性が高い。その冒険者が向かうとすれば、近くにある町だろう。人の足で町まで行くには二三日はかかる。まだ街道を歩いているはずだ。


「ディル、私に任せて。そいつらに追いついて、ティアナを取り戻すから」

「でも……ノアの足じゃあいつらに追いつけない! 馬とか乗り物がなかったらっ……」

「それなら大丈夫。二人とも、行くよ」

「おう!」

「はい!」


 ディルに言葉をかけると、私たち三人は冒険者ギルドを飛び出した。それから、村の外れまで走る。村の外れまで辿り着くと、リュックの中を漁り、中からタイヤのない車を取り出した。


「二人とも乗って!」


 私が声をかけると、二人は後部座席に乗り込む。私も運転席に乗り込むと、魔動力を発動させる。すると、車は宙に浮き前に進みだした。


「スピード上げていくよ!」

「もちろんだ!」

「大丈夫です!」


 私は魔動力を強くして、車の速度を上げた。馬よりも速い速度で車は宙を飛び、ひとまず街道を目指した。ティアナ、待っていて。かならず助けてあげるから!


 ◇


 夕日が落ち、辺りは暗闇に包まれた。魔法で作った光源の球を車のヘッドライトのところに付けて、街道を走り続ける。


「まだ街道に人の姿はないな」

「暗くなったから道の端によって、一夜を明かそうとしているのでしょうか?」

「脇はちゃんと確認したけど、人影はなかったぞ」

「そうなんですよね……。街道から離れたところに居なければいいのですが」


 街道を結構進んだと思ったが、まだ人影は見えない。もしかして、本当に脇にそれちゃったとか? でも、もしかしたらこの先にいるかもしれない。


「とにかく、町に着くまでこの道を進んでいこう。もし、見つけられなかったら、町の入り口で待つ。他の町に行くには、この先の町に入る必要もあるしね」

「この先にある町に行かないと、他の町に行けないんですね。それだったら、絶対にこの先の町を目指していることになります」

「とにかく、ここの街道を真っすぐ進んでいけばいいんだな」


 この街道に続く先にある町、そこにいかないと他の町には行けない。あの村に行くには必ずこの町に立ち寄らなければいけない。だから、絶対にあの町に立ち寄るはずだ。


 ティアナの無事を祈りながら車を飛ばしていると、クレハが声を上げた。


「あっ! 人影が見えるぞ!」

「えっ、どこですか? み、見えません……」

「光が差した先だ! とにかく、このまま真っすぐ進んでくれ」


 狼獣人のクレハは視力がいい。だから、私たちよりも遠くを見通せる。だから、クレハのいうことを信じして進んでいく。すると、私たちもその人影を確認できた。


「見えました! 大柄な人が三人います!」

「あの人たちを止めよう!」


 私たちの目に見えた、街道を進む三人の姿。車を少し上向きにして高度を取ると、前を進んでいる三人を飛び越えて前に出る。車のライトをその人たちに向けるように車を地面の上に着地させた。


 勢いよく車から飛び出した私たちはその人たちの前に立ちはだかる。


「な、なんだお前たちは!?」

「ちょっと、おじさんたちに聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」

「話すことなんてねぇ! さっさとそこをどきやがれ!」


 その人たちは驚いた口調でそんなことを言ってきた。その間に私たちは三人をよくよく観察をする。すると、一人の大人が子供を抱きかかえているように見えた。


「ティアナ! 私だよ、ノアだよ!」

「お、お姉ちゃん!」


 思わず名を呼ぶと、聞きなれた声が聞こえてきた。この声は確かにティアナの声だ。ということは、こいつらがティアナを攫ってきた張本人。


「ティアナがいたぞ! こいつらが犯人だ!」

「その子を離してください! そうしないと、痛い目に合いますよ!」


 クレハは剣を構え、イリスは魔法を放つように手を構えた。ようやく見つけた、絶対にティアナを取り戻す!

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― 新着の感想 ―
 勢いで出ちゃったか。  ギルド職員と、地元に根付いた冒険者数人を連れてくるべきだったわなぁ。  気持ちは分かるけど、色々と面倒が増えちゃう。
ノア達も賊達(もう賊でいいでしょ)もいきあたりばったりですな ノア達は何で追い付いたかを調べられたり、今回の捕物で一人でも逃げられたりすれば……なリスクは免れないです 賊は……まぁ、眠らせて木箱に…
ここで連れ去るにしても乗り物を予め用意してない辺り、場当たり的に実行していたってことなんかなー 最低限、馬を用意して距離を離すはずだろうし
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