表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
最終章 騒動と祭り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

247/286

247.植物魔法を使う場所

 みんながイリスに注目する中、静かに口を開く。


「村の中で植物魔法を使えなかったら、村の外で使えばいいんです。魔物がいて危険な森だったら、派遣された人の目はないですよね?」

「まぁ、確かに。森の中だったら、派遣された人の目はないが……」

「あんなに木が沢山あるところで、魔物もいるのに、作物が取れるのか?」


 男爵様とコルクさんが納得がいってないように首を捻った。だけど、イリスは気にせず続けた。


「森に畑を作りましょう。ノアの魔法で木を抜いて土地を広げれば場所は確保できます。魔物だって私たちがいるじゃないですか。私たちがノアが安心して畑仕事ができるように見張ります」


 畑は村の中で作るものだという先入観があったから、森の中で畑を作るのは盲点だった。確かにイリスのいう通りにすれば、森の中で畑を作ることができる。


 すると、今度はクレハが声を上げた。


「ノアだけが畑仕事をしなくちゃいけないから大変なんだぞ。魔物のことは冒険者のおっさんたちに任せられないか? そしたら、ウチらの手が空いて畑仕事を手伝う事ができるぞ」

「派遣された人に感づかれませんか? 一緒に行動しているところを見られると、怪しまれる可能性があります」

「村の中は一緒に行動しないで、森の中に入ったら一緒に行動すればいいんじゃないか? 森の中まであいつらは来ないだろう?」

「うーん……派遣された人の中には冒険者もいるので不安ですが。その辺りは色々と調整して、上手いことできれば野菜を沢山収穫できるようになりますね」


 冒険者の協力が入れば、野菜の収穫の時に魔物の心配はなくなる。そしたら、イリスとクレハの手が空いて野菜を多く収穫できるだろう。


 話を聞いていた男爵様がしばらく考えると、口を開く。


「派遣された人に気づかれずに野菜を収穫するには森の中がいいな。森の中は魔物の心配はあるが、それは他の冒険者に協力を仰ごう。とにかく、森の中だから安全に作業できる環境が必要だ」

「でも、そんなに大体的に動いたら気づかれるんじゃないですか?」

「こっそり動くしかないな。それこそ、村の中にいる時は普通に行動してもらって、森の中に入ってから具体的に動けば大丈夫だと思うが……」

「派遣された人の中にも冒険者がいるのが不安ですね。もし、森の方に行ったら……」


 男爵様とコルクさんが真剣な目で話し合う。こっちの行動を感づかれないようにこっそりと行動をすることが必要だ。幸い、みんなの目は村の中に注がれている。その隙をついて、森の中で野菜を作ることができれば、私が問題の人だとバレない。


「どうする? やってみるか?」

「……はい、やってみようと思います。バレないように行動して、野菜を作ってやりますよ」

「そうか、分かった。冒険者への説明は俺に任せろ。ノアたちは森の中で野菜を作ることだけを考えておけ」

「はい」


 話が決まると、男爵様はコルクさんを連れて家を出て行った。残された私は二人と向き合う。


「二人とも、解決策を考えてくれてありがとう。畑を森の中で作るなんて考えつかなかったよ」

「いつも森に行っているので、森の中に派遣された人が入ってこないな……と思ったんです」

「だな! 魔物のことは冒険者のおっさんたちがどうにかしてくれそうだし、ウチらは森で畑仕事をすればいいんだぞ!」


 二人に感謝をすると、照れ臭そうに笑った。この案が出なかったら、どうなっていたか分からない。二人には本当に助かったな。


 すると、二人が力を込めて言う。


「ノアは絶対に連れ出させません。その為なら、どんな協力でもするつもりです。だから、一緒に頑張りましょう」

「そうだぞ! ノアとはずっと一緒にいるって決めてるんだ。その為ならウチもどんなことでもするぞ!」

「二人とも……ありがとう。私も二人とずっと一緒にいたいよ」


 二人に近づいて、ギュッと抱きしめた。私も同じ気持ちだ、二人とは離れたくない。二人の温かい体温を感じると、気持ちが強くなっていくみたいだ。これが一緒にいる幸せ、この幸せを手放したくない。


「一緒に頑張ってくれる?」

「はい、もちろんです!」

「当たり前だぞ!」


 三人の気持ちを一つにした。こんなに心強くなるなんて、友達の力は偉大だ。二人の力を借りて、この困難を乗り越えよう!


 ◇


 翌日、早速行動に移した。朝になると、冒険者はいつも通り森に向かう。その姿はいつも見ている姿と同じだ。その姿を見た派遣された人たちは何も疑うことがなかった。そして、いつものように村の中で徘徊を始める。


 だけど、事前に話を聞いていた冒険者は森の中に入るとすぐに集まった。


「じゃあ、今日は合同で動くぞ。俺たちはこっち側の魔物討伐に向かう」

「俺たちはそっちに行く。魔物を見逃すんじゃねぇぞ」

「誰に言ってやがる。そんなヘマはしねぇ。俺たちはあっちだな」


 森の中に入ると、冒険者たちは進む方向を決める。みんな、その方向にいる魔物を駆逐するためだ。


「行動開始だ」

「今日は魔物を逃がすなよ」

「分かってる。じゃあ、健闘を祈る」


 そう言って、冒険者たちは散っていった。その場に残された私たちは顔を見合わせて頷く。


「なら、始めようか。まずは木を抜くところからだね」

「その間は私たちは周りを警戒しておきます」

「ノアには指一本触れさせないんだぞ。安心して作業してくれ」

「分かった、ありがとう。二人とも頼んだよ」


 まだ、魔物の討伐を開始していないので、この辺に魔物が潜んでいるかもしれない。それを危惧して、二人は魔物を捜索するためにその場を離れた。


 見える範囲に二人はいてくれるが、やっぱり心細い。そんな弱気な心に鞭を入れて、沢山生えている木に向き合った。


 一本の木に狙いを定めると、魔動力を発動させる。魔動力の力によって木が段々と上に上がっていき、木の根がきしむ音が周りに響いた。地面が盛り上がり、木の根がすっぽりと抜ける。


 これで一本目の木が抜けた。今は処理をしている暇がないので、マジックバッグに木を入れておく。家に帰ったら、木材に加工して色んなことに使おう。


 それから私は周囲にある木をどんどん抜いていく。狭かった空間も少しずつ広がっていき、畑が作れそうになるくらいには土地が広がった。


 これだと大体十メートル四方の畑が作れるだろう。普段使っている畑よりは狭いけれど、そんなに広げている暇はない。この十メートルの畑を繰り返し使って、野菜を量産していこう。


 木が抜き終わると、今度は畑作りだ。手を地面に触れる。久しぶりの畑づくりだ、ちゃんとできるかな? しっかりと魔法のイメージを頭の中に思い浮かべると、地魔法を発動させた。


 すると、地面がもりもりと盛り上がり、それはどんどん広がっていく。固い地面がフカフカの畑に変わっていく様はいつもても気持ちがいい。そのまま地魔法を発動させていくと、十メートル四方の畑ができあがった。


「よし、これで種を撒ける」


 魔物が来なかったから、中断する必要もなく順調に仕事が進んだ。きっと冒険者たちやあの二人が頑張ってくれていたお陰だろう。みんなに感謝をしないとね。


 畑作りが終わると、今度は種植えだ。まず、植える野菜は……トマト。今の時期に採れない野菜だ。コルクさんのところに注文が殺到している野菜の一つ。


 あとは地魔法を発動させて、種を植える穴を作る。うん、できた。これで後は穴に種を入れて、土を被せるだけで良い。


 種を入れようとマジックバックから種袋を取り出した時、視界の端で二人が帰ってきた姿を見つけた。


「あ、おかえり!」

「ただいま戻りました。もう、畑ができたんですね」

「流石、ノアなんだぞ。仕事が早い!」

「冒険者のみんなや二人が魔物の警戒をしてくれたお陰だよ。邪魔されずにすぐに終わったんだ」

「少しでも力に慣れて良かったです。じゃあ、種植えですね。私も手伝いますね」

「ウチも手伝うぞ! 周囲の警戒はウチの耳でやるから安心してくれ!」

「それなら、安心だね。じゃあ、始めようか」


 久しぶりに三人で種植えだ、ちょっとワクワクする。それぞれに種を渡すと、種植えが始まった。じゃんじゃん植えて、どんどん収穫するぞ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
野菜の流通が動けば、どちらにしろ粗探しされることになり、バレる気ががが……(その辺はこの先のお楽しみですかね) 異次元空間を時空間魔法で作りだし(次元力の応用)、その中で育てるぐらいしか当方もアイデ…
更新お疲れ様です。 ここ暫く溜めていたので、怒涛の展開に吃驚したのと、やっぱり自重は大事だな~と思ったのとでハラハラしていますw 前世知識と今世のスキルの合体技を便利に使い倒したツケと言えばそうなん…
野菜の流通が変わらないことに気が回ったら勘づかれたりしないかなー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ