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【書籍化、コミカライズ】転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~  作者: 鳥助
最終章 騒動と祭り

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238.楽器

 翌日、私は早速動き出した。まず、欲しい物を用意する。私たちが欲しい物は楽器だ。その楽器を創造魔法で出しちゃおうと思った。


 多分、楽器一つを出すのにかなりの魔力を消費するはずだ。それこそ、一日一回くらいしか使えなくなるほどの使用量。一日一回ずつ出せばいいんだけど、それだと時間がかかって練習が遅くなる。


 だから、ポーションを使って魔力を回復させながら創造魔法を使おうと思った。欲しい楽器が三つ、教本が三つ、楽曲が書かれた本が三つ。最低九回創造魔法を使わないといけない。


 ここで問題なのは、本の中身もちゃんと想像した通りに出てくるのか? ということだ。あやふやな記憶でもちゃんと内容が書かれたものになるのかが不安だ。


 もし、本がダメだった時は自力で楽器を弾けるようにならないといけないのが辛い。どうか、創造魔法が万能でありますように。そう心から願いながら、ポーションを求めてエルモさんのお店までやってきた。


「エルモさん、こんにちは!」

「あ、ノアちゃん。いらっしゃい」


 お店の中に入ると、丁度受付に座っていたエルモさんと出会った。


「今日はどうしたんですか?」

「一緒に昼食を食べようと思って。それに、ポーションも欲しくて」

「昼食のお誘いは嬉しいです。ポーションは魔力を回復させるものですね。何か大きな仕事でも入ってきたんですか?」

「ううん、自分用に欲しい物ができちゃって。それを作ろうと思うの」

「欲しい物を作るですか。そのために沢山の魔力を使うんですね」


 私の創造魔法はみんなには物を作ることができる魔法だということにしている。だから、エルモさんもそう思ってくれているはずだ。


「沢山欲しい物があって、それでポーションが必要なの」

「そういうことならポーションを売っても大丈夫です。ですが……」

「えっ、どうしたの?」

「もしかして、一日に何本を使う予定なんですか?」


 エルモさんがジト目で私を見た。えっと、それって悪いことなのかな?


「う、うん。十個くらい欲しい物があるから、一度に使おうと思って」

「そんなに一度に使ったらダメです! すぐに欲しい気持ちは分かりますが、身体の負担が大きすぎます」

「そ、そうなの?」

「ノアちゃんに魔力が沢山あるのは分かります。だからこそ、一度に使う魔力はとてつもなく多いです。それを一日に何回も枯渇させては回復させるのは、身体にとっても悪いんです」


 うっ、確かにそうかも。魔力を回復させるポーションは魔力を回復させるだけにしか効果がない。魔力を使った後の疲労感は魔力を回復しただけでは無くならないのだ。


「なので、使うのは一日二、三本にしてくださいね。それ以上は身体に負担が大きいのでダメです」

「えー、一日二、三本ー?」

「ノアちゃんのことですから、渡したらこっそり使いそうですからね。だから、今日使いたい分は毎日取りに来てくださいね」

「エルモさんのケチー」

「なんとでも言ってください。これもノアちゃんの身体を守るためですから」


 エルモさんにブーイングをすると、クスクスと笑って頭を撫でてくれた。心配してくれるのは嬉しいけれど、ポーションを制限されるのは辛いなぁ。


 創造魔法でポーションを作るっていう手もあるけど、手に入れられるものは創造魔法を使いたくない。なんでも、創造魔法に頼っていたら周囲との繋がりが途絶えてしまいそうだからな。


 食材や資材、備品や雑貨。日常で手に入れられるのであれば、創造魔法は使わない。幸い、お金はあるんだし、周りに還元したほうが創造魔法を使うよりは有意義だ。


 本当にお金がない時は創造魔法に頼るとして、色々と充実した今は買えるものは買う。それに、突然物を買わなくなったら怪しまれるからね。創造魔法は便利だからこそ、使い方を気を付けなければ。


「じゃあ、昼食を食べますか?」

「うん!」

「今、お茶を用意しますね」

「いつもありがとう!」


 エルモさんはお店の奥へと引っ込み、私はカウンターにお弁当箱を広げてお茶が来るのを待った。


 ◇


 エルモさんとの昼食会も終わり、家に帰った私は午前からやっていた畑仕事を終わらせる。無事に納品が終わり、夕方前に家に帰ってくると、夕食の準備をした。


 それが終わると、とうとう楽器を作る時が来た。消費した魔力を回復させるために、魔力回復ポーションを飲むと、準備完了だ。


「まず、クレハのギター」


 クレハは弦のついた楽器が欲しいと言っていた。あの宴の時で使われた弦の楽器はギターに似ていたため、ギターを創造することにする。目の前に材料の一部である木材を置いて、手をかざす。


 心を落ち着かせて、ギターを想像する。木製で鉄の弦が張ってあって、鳴らしたら音が出る。そこまで想像すると、創造魔法を発動させた。


 目の前が光って、物が創造されていく。しばらくすると光は収まり、目の前のテーブルには一本のアコースティックギターが現れていた。


「おお、できた。……おっと、少しフラつく。素材が足りなかったのか、創造魔法は魔力の使用量が多すぎる」


 まぁ、ギターに必要な材料はまだあったから、それを補うために使う魔力量が跳ね上がったのだろう。魔力を大量に使ったことで体の疲労が出ている。こんなに疲労が溜まるなら、創造魔法は連発しないほうがいいね。


 本当に音が出るのかな? 気になった私はギターを手に持つと、弦を弾いてみる。すると、気持ちのいい音がギターから出てきた。久しぶりに聞く楽器の音色に夏の楽しさが蘇ってくるようだ。


「うん。これなら、他の楽器も出しても平気そう」


 ちゃんと音が出たし、創造魔法は成功だ。この調子で次の楽器を創造しよう。魔法を使う前に魔力回復ポーションを飲んで……うん、魔力が回復した。


「次はイリスのフルート」


 頭の中でフルートをイメージする。金属製で細長い形をしている。複雑なキーがあって、吹き口があった。しっかりとフルートの形をイメージすると、創造魔法を発動させる。


 目の前が光った。その光はすぐに静まっていき、光がなくなった後には一本の銀色のフルートが残されていた。やった、成功だ! そう思うと、体に重い疲労感と一気に魔力がなくなった喪失感で頭がクラリとふらついた。


「うぅ、素材がないと魔力消費がさっきよりも大きすぎる。やっぱり、素材なしで複雑なものを出そうとすると辛いなぁ」


 立っているのが辛くて、イスに座ってしまった。魔力の枯渇が辛いので、先に魔力回復ポーションを飲んで一息をつく。連続でポーションを飲むと、お腹がタプタプになっちゃうなー。


 魔力が回復して落ち着いてくると、フルートを手に取って見た。キラキラと輝いていて、とても綺麗だ。音が出るかは試しようがないので、キーがちゃんと動くか確認する。うん、大丈夫そうだ。


「よし。最後は私の楽器、バイオリンだね」


 どんな楽器をやろうか考えたら、二人の楽器に合わせていい音が奏でられるものにしたいと思った。ギターにフルートに合わせていい音が出るものを……そう考えたらバイオリンを思い浮かんだ。


 とても難しそうだけど、やりがいはある。きっと、三人で音を合わせるといい音色を奏でられると思うんだよね。それを想像するだけで楽しい気分になる。


 よし、バイオリンを創造しよう! テーブルの上に素材となる木材を置き、それに向かって手をかざす。心を無にしてバイオリンの形状を思い浮かべる。ギターに近い形で少し小さくて、弦を引くための弓があって。


 頭の中でしっかりとバイオリンの形を想像すると、創造魔法を発動させた。目の前が光って、目を細める。その光が収まると、そこには想像した通りのバイオリンが置かれていた。


「ふー……三連続の創造魔法は疲れたぁ」


 エルモさんの注意した通りだ。注意を聞いて良かったなぁ、そうじゃなきゃ体が可笑しくなっていたところだ。でも、だからといって一日一つじゃ全てを用意するのに時間がかかりすぎるんだよね。


 できあがったバイオリンを手にして、弦を弓で弾いてみる。耳障りな音しか出ないが、音はしっかりと出る。うん、バイオリンの創造も成功だ。後は上手に弾けるように練習するだけだ。みんなと一緒に練習を頑張ろう!

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― 新着の感想 ―
>>ポーション つまり飲み過ぎて寝込むイベントが待っているわけですね。もしくはポーションが枯渇して、各種ポーションを生み出すことになるとか >>楽器 クラシックでも奏でるのでしょうか?曲のチェイ…
男爵「ギギギ、ガガガガガ」 ティンタクル「oh......壊れちまった。コレでは素人のバイオリン」 やっぱりオッサンよりもそこの若くて可愛い女の子に ティンタクル「コンプラパンチ!」 (っ・д・)=⊃…
まあ回復すればホイホイ使えると無意識的に定まってからでは遅いからこの忠告は守るべきですね〜
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